第十二話「天の啓示」.2
倒れた丸太の上で寝そべるそいつは、魔法使いみたいなローブを身にまとい、群青色の長髪を無造作に垂らしている。
体中のセンサーが、目の前の相手が危険な存在だと伝えてくる。
おそらくこいつとしては自分の魔力を隠しているつもりなのだろうが、こちらのセンサーは内部に秘められた力を見抜いている。
表面的な戦闘力だけで、相手の強弱を判断するような浅い考えは持ち合わせていない。
「誰だと問いかけられるとな、少々説明が難しい。どこから説明したものか……」
「このような感じで、先ほどからマベッツ様は説明を渋っておられて」
マベッツが言葉を濁したということは、故郷関連か、人魔統一国家についてか。
「あー、そこはボクが説明するよ」
こちらのことを伺っていたそいつは、のっそりと体を起こす。
軽く背中を払い、スタッと立ち上がったその姿は、顔立ちも相まって紳士的だ。
「初めまして、ボクはミシュ・モーガン。肩書上は、人魔統一国家バージュリタの、首席顧問だよ」
「……は?」
奴の名前はミシュ・モーガン、性別は……女だった。男装の麗人という奴だろう。
彼女はローブを翻し、恭しく礼をとる姿は実に様になっている。各種センサーの機能を拡張、さらにじっくり見ると背中の方に何か質量を感知した。
「あまり初対面のヒトをじろじろ見るのは感心しないな。エンシェント・ゴーレムくん」
「突然やってきた上になれなれしい奴を、じろじろ見ないで警戒する方法があるのなら教えてほしいぞ」
「はは、そりゃそうだね。わかった、好きなだけ眺めているといい」
両手を広げたミシュは、その場でくるりと体を回す。その体の大きさでは考えられない範囲の空気が払われた。見えないが、背中に何か担いでいるのか?
「それで、その首席顧問さんとやらが、俺のところに何の用だ」
「何の用だと言われても、もちろん、首席顧問として新興勢力を築き上げそうな存在には目を光らせておくのが大事だろ?」
「新興勢力どころか、やったのなんてリスボンとサイクロプスの喧嘩の仲裁だけだぞ」
「知っているさ。けど、それが重要なんだ。リッチの反逆者マベッツに与するエンシェント・ゴーレム……テフノ=ルギアくん」
「どこまで情報を把握してやがる……」
リスボンとサイクロプスの喧嘩の仲裁なんて、ほんの一日二日程度前の話だ。そこからサイクロプスの里に移動し、ルツを連れて戻ってきた。その時点で、この女は俺たちに接触することを決めたのか。
「あまりにも行動が速すぎないか? 俺たちはまだ、何もなしてはいないんだぞ」
「ははっ。君、この樹海の一角を吹き飛ばしておきながら、未だに誰にも注目されていないと思っているのかい? ただでさえ、虚空を揺らがせておきながら」
その言葉に、俺は警戒心を高める。人魔統一国家の顧問だというミシュ・モーガン。一体何を考えているのか。
「長い話はよせ。我とこやつに話があるのじゃろう。さっさと本題に入れ。聖天使」
少し苛立ったような、マベッツの声が響いた。
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