第十二話「天の啓示」.1
樹海の一角が、消し飛んだ。
射角が浅かったせいだろう。わずかに地面に向いていた砲身から放たれた砲弾は、放物線を描くこともなく、マッハ十以上の速度で地面に直進した。その結果、ごく小さな弾丸のはずが着弾地点を大きくえぐり、俺のバリアで衝撃の発生方向を限定した結果、目の前で放射状に広がった。
二倍の衝撃が鎚君主鰐とその周りの木々に襲い掛かり、消し飛ばした。
「うーん、チャージしすぎたか?」
「恐ろしい威力ですな。これが、テフノ様の雷電魔術の威力なのですか?」
「あー、うん。そう。お前の助けが必要だけど、そんな感じ」
堅土超雷土砲我改は、地球最強の実弾兵器レールガンを再現した魔術だ。
俺たち地底調査チームは、いうなればSFオタクの集まりだ。地の底、海の底、天の向こう側、前人未到の空間に夢を馳せ、それを題材にした物語に浸ってきた者たちだ。
「レールガンとレーザー、どっちが強いか論争よくやったなぁ」
旧世界の思い出に少しだけ浸りながら、トバルに近づくように指示を出す。土台として支えていたパーツを分離し、俺はトバルの右腕に装着されたままの状態を維持した。
トバルは俺をヴォロードガヴィルのいた場所へ向けながらゆっくり近づく。生前大好きだったゲームの主人公(の武器)になった気分を抱きながら、周囲を調べた。
「センサーに反応なし、完全に消し飛んだみたいだな」
「そのようです。これを」
トバルが地面から拾い上げたのは、重厚な楕円形の鈍器――否、骨だ。
着弾地に発生した熱と衝撃は、命中したヴォロードガヴィルの肉を吹き飛ばし、強固な骨だけを残すことになった。
尤も、直撃した部分は消し飛んでいるようだが。
「戦利品として取っておけよ。ネメアに見せたら、喜ぶかも」
「骨を与えられて喜ぶのは、猫ではなく犬ですぞ」
細かいことは気にしない。
それよりも気にすることはいっぱいある。
「トバル、移動時間が惜しい。俺をあの方向に全力で投げろ。あとから追いかけてきてくれ。マベッツとルツのいる方だ」
「ルツ……テフノ殿、どうかお頼み申す」
「ああ、任せろ」
レールガンを解除した俺は、トバルの手に乗った。彼は豪快に腕を振るうと、俺を指定した方向へぶん投げた。ほぼ円形の形状だ。大きな空気抵抗を起こす構造はしていない。
高速回転しながらもレーダーは正常だ。三半規管を失った今のおれは、眼を回すこともない。レーダーに動かないマベッツとルツを見つけ、さらにもう一人誰かいることを確認した。
「マベッツ! ルツ!」
トバルの投擲は完璧だ。二人の少し後ろへ着弾した体はゴロゴロと転がって停止。二人と見知らぬ誰かとの間で停止し、細い手足を伸ばして起き上がる。
戦闘音がしていないため、その点は安心していた。
だが、何者かがいると言う点は、安心できなかった。
「テフノ様!」
「遅かったじゃないか。テフノ。あのデカいワニに、案外苦戦したみたいじゃの」
「君の冥闇魔術で貫けないであろう硬い鎧をまとった大魔獣だぞ。少しは労わるつもりがないのか」
「勝つと信じておったからな」
リッチの乾いた笑みに、俺はない肩をすくめた。
「まあいいや。で、こいつは誰?」
その疑問を、視線とともにぶつけた。
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