第十一話「豪砲一発」.3
ワニは、結構足が速いらしい。それに漏れず、ヴォロードガヴィルもバタバタと足を動かして、尻尾をブンブン振り回して、そして乱杭歯をギラつかせながら迫りくる。
トバルは体全体に雷を纏い、俺は拳周りに盾を形成する。鋭利な先端を持つカイトシールド、横幅もそれなりにあり防御性能も高い。
突っ込んでくるヴォロードガヴィルに対して飛び上がったトバルの左腕が鼻の横を殴りつけた。
「よし、攻撃が通った! 上側は装甲が厚いが、側面から下側は柔らかいぞ!」
「はい。ですが、あの程度では効果はないようです……」
見れば、ヴォロードガヴィルの上あごに付いた傷は、まるで逆再生するかのように治っていった。生物学者の友人から聞いたことがある。ワニは非常に高い免疫機能を持ち、あらゆる病気やケガに対して抵抗力を持つという。
「だからって再生能力まで持つ必要があるのかよ……」
これはもう、免疫がどうだと言う問題ではない。
何事もなかったかのように、前足を地面に固定。体を大きくひねり、後ろ足で飛んだ大魔獣は、尻尾を最大距離で旋回させ、トバルを狙う。
しかし今度は、こちらはきちんと地面に足を付いて、盾まで装備している。右腕を立て、両足を踏ん張り、時計回りに回転するヴォロードガヴィルの尻尾を受け止めた。盾にヒビが入るも、砕けてはいない。
受け止めた尻尾を左手で掴めば、腕力に分があるのはサイクロプスの方だった。
「ぬぅおぉぉぉっ!」
わずかに浮いていた大魔獣を引っ張り、そのまま両手で掴み直す。移動するたびに木々をなぎ倒していた大魔獣。その巨体を振り回せば、さらに多くの木々が倒れていく。
しかし、そんな程度ではダメージにならない。木々の向こう側、地面から突き出た岩を目にしたトバルは、そちらに向けて投げつける。激突し、砕けたのは岩だった。
「あの装甲を砕くにはどうする? 拳じゃダメだった。こっちもハンマーを造るか?」
「テフノ殿、心苦しいながら拳でどうにもならなかった奴の装甲を、たとえ武器を手にしたとして、止められるとは思いませぬ」
トバルの言葉には一理ある。両手持ちハンマーで威力を底上げして殴ったとして、その程度の威力と速度では奴の装甲は貫けない。
だからと言って、装甲のない腹側を攻撃するのは簡単な話ではない。
トバルに投げ飛ばされたヴォロードガヴィルは、背中側から落ちたにも関わらず、すでに姿勢を直している。カメのように起き上がれないわけではない。そんな弱点のある生物が、上位大魔獣などと呼ばれるわけがない。
「雷鳴魔術のエネルギーがあれば、可能か?」
『理論上、可能です』
俺の頭の中の疑問に、ゴーレム・コアが答える。
普通なら――いや、地球だったら不可能だったことだけれど、今の俺の体とこの世界の力なら可能なのだ。
「堅弩超雷土砲我改、生成開始」
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