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第十一話「豪砲一発」.2


「雷神の裁きを受けよ!」


 トバルの落下とともに振りぬかれた腕が、ヴォロードガヴィルに激突するのと同時に刃が食い込む。しかし――。


「ぬぅ、硬い……」


 拳を叩きつけたが、思ったほど手ごたえがない。否、衝撃が響かなかった。ヴォロードガヴィルの固い背中は、衝撃を吸収したうえで刃をその鱗で止めた。

 俺の造った複合装甲も衝撃に強いが、それは科学的な構造として成立したものだ。対してこの大魔獣はあくまで生物。その生体機能として、地球やこの世界の技術を上回っているのだ。


「末恐ろしい奴らだな、上位獣(ビースト)ってのは!」


 これでもし本当にドラゴンだのペガサスだのと言った、地球でもよく知られた幻獣に出会ったらどうなるか。


「しっぽが来るぞ。腕を組め!」


 ヴォロードガヴィルの尻尾は自由自在、本物のワニより大きく動くそれは、自分の背中に乗っている者にも攻撃可能だ。

 勢いよく、鞭のように振るわれた尻尾が、その骨塊を叩きつけてきた。とっさに腕を組んで防御態勢をとったトバルは、俺の装甲を盾にして受け止める。

 すると、五メートルの巨体が吹っ飛んだ。

 ヴォロードガヴィルの背中では踏ん張りが効かないのも一つの要因だが、それ以上にまず、威力が高い。


「俺のチョバム・アーマーが、七割破損した……!?」


 腕部に限った話ではあるのだが、それでも損耗率が高い。それだけ高威力のハンマーであり、トバルの両腕には大きな負荷がかかったことだろう。


「大丈夫か? 思った以上に威力が高い。衝撃を相殺しきれないかもしれない」

「いいえ。こちらの腕は問題ありませぬ。テフノ殿の鎧がなければ、腕を砕かれ、心臓にも衝撃が届いたことでしょう」


 丸太のように太いサイクロプスの腕をへし折ったうえで、その分厚い胸部を超えてダメージを与えてくる――そんな脅威が、大魔獣だ。

 マベッツの冥闇魔術は、怪獣と大枠で分類される者には効果が薄い。リスボンたちの身体能力では、あの装甲は突破できない。

 さらに装甲のような鱗の下には筋肉と脂肪の天然防壁。トバルの雷の熱と電流を防いだのは、おそらくこちらだろう。通常の生物の枠を超えた怪獣の特性が、自然界の力を乗り越えた。


「こんなやばい奴とランダムエンカウントなんて、ありえない。誰かがここに誘導したのか。それとも誰かの命令でやってきたのか?」


 もし後者なら、この先もこんな脅威がたびたびリスボンの村を襲うことになる。いや、問題はリスボンだけではない。このヤーム樹海全体の脅威になる。


「マベッツ、リスボンたちを村の奥に避難させておいてくれ。結構こちらはかかりそうだ」


 ゴーレムトレインは俺の体も同然。だからそこに誰が居るのかもわかるし、話しかけることもできる。ゴーレムトレインを村の中へ移動させ、そこにリスボンたちを乗せている。彼らのことはマベッツに任せては、俺はトバルとヴォロードガヴィルの対処に集中しよう。


「そのことだがな。少し厄介なことになりそうかもしれん。我にかまわずこのデカブツは発進させよ」


 そう言って、ゴーレムトレインからマベッツが降りる。同時にルツの存在も降車した。二人が降りたのは気になるが、マベッツの言う通りゴーレムトレインは村の奥へ移す。

 扉を閉じ、防御機能をオンにすれば、俺の《ダイヤモンド・オーダー》に守れたシェルターとなる。


「早いとここいつ片付けて、マベッツとルツのもとに行くぞ!」


 破損した部分を高速修復しつつ突撃してくるヴォロードガヴィルに備えた。



少しでも気に入っていただけたら幸いです。




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