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第十話「守る力」.4


 ヴォロードガヴィルは、モササウルスの顔と尻尾を持ったアンキロサウルス、と言った見た目だ。体表に出っ張っている装甲状の鱗が何枚も連なり、単なる巨大なワニではなく、装甲車のような頑強さを実現している。

 そして太い尻尾の先端のハンマー。ただでさえ威力の高い尻尾の威力を底上げし、ネメアの牙を砕いた元凶。

 双方ともに、硬度は鋼を凌駕する。


「トバル、顎を上から叩き潰せ!」

「御意」


 低重心の巨体に弱点はないように見えるが、やはりワニ。下腹部の鱗の薄い部分は、手足の動きを阻害しないためにも装甲がない。

 そしてワニである以上、その顎は閉じるのに適していても、開くのには適していない。

 トバルは手ごろな木を一本掴むと、根っこから引き千切る。枝を落とすこともせず、そのまま鈍器代わりに両手で握ると、大顎を開けて突撃してくるヴォロードガヴィルを上から殴る。


「むっ! ぬぅ……」


 それを、巨大ワニは白羽取りでもするように、噛んで止めた。ヴォロードガヴィルの首は普通のワニより格段に柔軟で、多少伸縮が効くらしい。挟んだ木の幹をねじって砕くと、手足を使って俊敏に着地、加速。尻尾を豪快に振るってきた。


金剛界曼荼羅ダイヤモンド・オーダー!」


 残っていた木を盾にしようとしたトバルだが、それでは絶対に防げない。俺は以前も使った六角形の盾を作り出し、彼を守る。

 だが、その威力を侮っていた。音速に近しい速度で放たれたハンマーは、トバルの巨体をも吹き飛ばす。彼らが作った木柵に激突すると、その一部を崩しながら停止した。この柵がなければヴぉロードガヴィルはもっと簡単にリスボンの村を蹂躙していただろう。

 崩れた柵の向こうを見れば、武器を持ったリスボンたちの姿があった。


「テフノ様! そ、外に巨大な魔獣の姿が……ネメア殿が!」

「ああ。今対処中だ! 待たせて悪かったな。でも大丈夫、サイクロプスたちがいれば、すぐにぶっ飛ばしてやるさ!」


 リスボンたちを守るためにネメアががんばってくれたのだ。あいつに主と認められた俺が来た以上被害を出させるわけにはいかない。

 起き上がったトバルは砕けた木を捨てて右腕に雷を貯め始める。奴の顎の力を考えると、噛まれたらサイクロプスの腕でも引き千切られそうだ。できれば接近戦はしたくない。


「雷神の断片を!」


 初めて彼と出会った時に放ってきた、雷電魔術。ほとばしる雷は待機をプラズマ化させながら突き進む。普通の生物ならこれで黒焦げなのだが、上位大魔獣(アドバンスドビースト)は……。


「効いてねぇな」

「あの皮膚、おそらく火炎魔術や氷雪魔術ですら突破は厳しいでしょう」


 頭部から背中にかけて広がる装甲が、トバルの魔術を弾いて見せた。

 強力な顎、強靭な尻尾、そして強固な鱗。攻防一体の生物の厄介さに、俺はふと思う。


「こんな奴がリスボンの集落までやってきた。偶然だと思うか?」

「いいえ。奴がクルツアスランを北から追い出した魔獣だというのなら、ここまで来る理由はなおさらありませぬ。ただでさえ住み慣れぬ場所に侵略をした上、さらに追い立てるなど、奴らの生態に即しておりませぬ」


 食糧難、災害、理由はいくつかある。住処を変えたり移動したりすることは動物界にはままあることだ。地質や環境が変化すれば、動物たちはそれに対応するために行動する。

 だからと言って住めない場所に住みつこうとするのはありえない。

 ヴォロードガヴィルはいくら魔獣とは言え、ワニ。ここは奴が住むには適していない。


「トバル、俺がお前の盾になる。あいつを思いっきりぶっ飛ばして、リスボンたちを守るぞ!」

「お任せあれ!」


 俺は掴んでいた角を中心に、自分の魔子をトバルへ流す。大地から集まった様々な物質が装甲を象り、彼の体を包み込む。


鎧袖逸飾コンポジット・アーマー!」


 トバルの体を包む俺の鎧。絶対防御のサイクロプスが、大魔獣へ挑む。




少しでも気に入っていただけたら幸いです。




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