第十話「守る力」.1
リスボンの村に戻っていく途中、俺たちは周囲の探索を行った。
まずはリスボンたちと友好的なクルラホンの村に立ち寄る。マベッツに飲ませた黄金溶液を造る際に使った酒の製造元だ。
「クルラホンとの交渉は完了だな。こんな森の中で、彼らはよく酒造に専念していられるな」
「彼らが作る酒は森の仲間たちの間では高級品のような扱いを受けています。彼らは森全体から守られているので、酒造に集中できるんです」
説明してくれたのは、リスボンのハダンだ。彼はリスボンたちの交渉役として先頭に立ってもらっていた。小さな種族だが、その行動範囲は広い。
もともとサイクロプスとも交流のあったリスボンたちだ。ハダン自身は初めて会うということだが、物おじせず対応していた。
ゴーレムトレインの先頭車両で道案内をしてくれるている彼には、いつか車掌帽を渡してやらないと。
「クルラホン以外の種族というと、物づくりの得意なレプラコンでしょうか? 彼らは服飾にかけてはサイクロプスにも負けない技術を持ち合わせています」
「服飾か。街として発展させるのなら、そこらへんも必要だな」
「テフノ様、ところで街を造るにしても、地上ではマベッツ様には生きづらいのでは?」
「やはりそう思うか?」
そもそも死者の王たるリッチが、太陽光にギラギラ当たる地上で活動するのは無理がある。下手をしたら、彼女が浄化されかねない。
ここで参考になりそうな場所が、一つだけある。
「やっぱり行くべきだな。リッチの故郷」
「マベッツ様の故郷ですか」
「ああ。彼女が追放されたという、人間たちと共存していくことを選んだ、リッチの里だ」
人魔統一国家とやらができた結果、徹底抗戦を望んでいた彼女は追放された。
マベッツと出会った当初、その街への報復をもくろんでいた。逆に考えると、彼女はそれだけあの街に執着していたわけだ。
「地下にあるのか、それとも山の中にでもある街なのか。知らないのか?」
「リッチの里は、サイクロプスの里よりも離れているので、さすがに交流がないですね」
リスボンも交流がないとなると、サイクロプスはどうだろうか。そちらに視線を送る。地下を進んでいた時とは違い、今彼らの乗る車両は天井がなく、オープンカーのような状態だ。視線を向けられたトバルは、少々時間をかけて思い出す。
「サイクロプスはリッチに武器の提供を行っていなかったのか?」
「ええ。リッチたちはそのほとんどが魔術に長け、我らの武器を必要とはしませんでした。そのため、我らがリッチの里を訪れることはありませんでした」
人魔統一国家成立後は、特に多種族との関りが少なくなったこともあって、余計にリッチとの交流はなかった。
「なら、まずは直接行ってみるしかないか。あいつが嫌がったとしても」
ゴーレムトレイン後方の客車に乗っているマベッツは、クルラホンから譲り受けた酒を煽っている。
速いうちに、リッチの里について聞き出そう。
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