第九話「新たな始まりへ」.4
リスボンの村へは、トバルとルツの親子。そしてヤバルとユバルの兄弟が付いてくることになった。
行きの時の着の身着のままとは違い、今度は十分な荷物と道具を持っての移動だ。ゴーレムトレインも地上を走るために天井を開け、トバルたちが並んで座れるように構造を変更してある。
ゴーレムトレインの同じ車両には、マベッツの他リスボンたちがいる。視線の誓いルツに対し、リスボンたちは興味深げに話しかける。
「ルツさんも鍛冶仕事されるんですか?」
「はい。父の手伝いの傍らですが、いくつか造らせていただいていますよ。自分の武器くらい、自分で造れてサイクロプスは一人前と言われますので」
カシャ、と音を鳴らせた鞘には、幅の広い剣が納められている。サイクロプスたちが鍛造する鉄は、特殊な合金らしく普通の鋼より硬く軽く鋭い。
ルツ自身、余り武器の扱いは得意ではないということだが、あって困るものではない。
「サイクロプスは、この山周辺の多くの部族へ武器を提供してきました。魔王の治世の元、私たちが自立し、独立して生きていくには、種族の武威はもちろん、多くの部族との協力関係も、欠かせませんでした」
「この山――ポリュペウス山脈は、東西南北に十字に広がる大山脈。サイクロプスたちの住処はハルガッシュ火山だったね?」
マベッツはこの辺りの地理を理解しているのだろう。地図はなくとも、空中に指で地図を描く。
「はい。中央山脈から東側、つまり旧魔王領と呼ばれた地域に、サイクロプスたちは多くの武器や農具を提供してしました。戦の亡くなったこの五十年は、ずいぶんと減ったようですけど」
「ルツも、統一後の世代じゃな」
「もちろん。こんな小さいサイクロプス、二十年も生きているわけがないじゃないですか」
サイクロプスの身長は、二メートルを超えたくらいから、身長×十=年齢となる。つまり、ルツはまだまだ若いサイクロプスということだ。
「武器の提供はともかく、農具の提供は続けていましたから、交流が耐えることはありませんでしたけど、やはり格段に減ったと、父は言っていました」
「種族間の繋がりが薄れ始めてきた昨今、アオバみたいなやつが暗躍するにはちょうど良かったってことなのかね」
「他の部族にまで、手を出してないといいが……」
種族間交流がもっと盛んなら、今回のような事件は起きなかったかもしれない。
「これから先、どうされるんですか? 近くの集落と言えば、クルラホンの酒造村がありますが」
「なら次はその周辺をあたろうかの? 労働力と人員は、多いにこしたことはなかろう」
「リスボンの街を拡大させるのはもちろん、約束だからな」
約束、その言葉にルツやリスボンたちは首を傾げた。
「お前が寂しくないような街を、創ってやるって」
「そういえば、そんなこと言っておったの」
マベッツは少し呆れたように笑った。干からびたその表情筋はほとんど動かなくても、何となく彼女が嬉しそうだということは、わかった気がした。
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