第九話「新たな始まりへ」.2
現状、サイクロプスたちを襲った凶刃の意図は、正確なところは判断できなかった。それでも、わかっていることはある。
「君を襲ったあいつは、リスボンを騙る偽物で、俺とマベッツがぶっ飛ばしておいたから」
「あれが、偽物だったのですね?」
「ああ、だから心配するな。我はリッチの王。そなたらがかつての魔王の配下であるのなら、我もまたそなたらの友である」
「今度あいつが来たときは、君の父や、リスボンの仲間と一緒に倒してやる」
安心したような顔をするルツに対し、俺は自分の下にある箱からビンを取り出す。ゴーレムトレインの時もそうだが、俺が間接的でも接触状態でさえあれば生成物は機能する。
つまり、ゴーレムトレインの中は冷蔵庫完備の食堂車付きなのだ。
「マベッツはリッチで優秀な錬金術師なんだ。ここに来るまでの間に、キンキンに冷やしておいた」
「ふふふ、我特性エリクサー! こやつの錬成炉にもなる体を利用して通常の十分の一以下の時間で造った新品エリクサーじゃぞ。傷に一滴、垂らすだけで全快じゃ!」
取り出したビンの蓋を開ける。中身は揺らすたびに色が変わる謎の液体が入っており、紫や緑に変化する。
「包帯をとるぞ。ルツ」
「は、はい。お願いします、マベッツ様」
マベッツはルツの額に撒かれた包帯を解く。ルツの両目には眉毛がなく、代わりに半円状の、額全体からこめかみ付近まで続く眉がある。トバルや他のサイクロプスの持つ眉毛が、第三の目の形状に合わせて変化しているのだろう。
彼女の額にはまつ毛の生えた割れ目があり、第三の目があることがわかる。その瞼に、鋭利なナイフで切りつけた痕がある。
「これが、あのバカがつけた傷だな」
「痛かっただろうね。テフノ、エリクサーを」
「ああ」
少しルツの顎を上げさせ、顔を上に向ける。エリクサーのビンを傾けてゆっくりその中身を落とす。すると、傷口からエリクサーは染み込みながら発行。
彼女の瞼にくっきり残っていた刃傷は瞬く間に消滅し、何事もなかったかのようにきれいになった。
「ふむ、きれいになったの。ほれ、テフノ、鏡」
「ああ。わかるか、ルツ」
俺は銀を拭きつけて磨いた鉄板を取り出すと、それをルツに見せる。くっきりと鏡に映った彼女の顔に、傷など一つもない。
「すごい、きれいに治ってる! これが、錬金術の秘術のお力なのですね!」
「ふははっ! もっと褒めるがよい! テフノ、他のビンを出せ。我がこの村の傷、病魔、全て癒してくれようぞ」
「ほどほどにな」
マベッツは褒められたのがよほど嬉しいのか。ヤバルを呼びつけてエリクサーのビンを複数持たせると、ルツ以外に襲撃時に傷を負った者の所へ案内させる。
トバルはそんなマベッツの様子を見て、ルツの下にやってくる。
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