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第九話「新たな始まりへ」.1



 サイクロプスの里は、遠目から見ても静かだった。

 襲撃があったとは言え、生産活動全てを止めるわけにはいかない。村の周囲には彼らの主食と思われる農作物が育てられており、トバルほどではないが、体の大きなサイクロプスたちが鍬を振るい、種を撒いている。

 俺はゴーレムトレインを里の外に停車させると、トバルたちの乗った車両を解放。寝そべったままだった三人が、一斉に起き上がり、故郷へ向けて走り出した。


「みんな、戻ったぞ!」

「……棟梁!?」

「棟梁が帰ったぞ!」


 想像以上に速いトバルの帰還に驚く者たちが多い。やはりリスボンの里は遠い、というのが彼らの共通認識なのだろう。

 そこに、体長二メートルにも満たない小さな――人間からすれば十分大きい――少女が駆けよった。


「お、お父様。お怪我は大丈夫でしたか?」

「ああ。心配ないぞ、ルツ。父は健在だ」


 少女はトバルに抱き上げられた。その額には包帯が巻かれており、その下には人間と変わらない双眸が見えた。

 サイクロプスの中で、二つの――否、三つの目を持つ者


「どうやら、彼女が今世の覚醒眼(ジャガンナ)なのじゃろう。額に怪我を追っているようじゃが……あれが傷を受けた個所じゃな」


 ルツと呼ばれた少女は、心配そうに父を見る傍らで、その後ろに続く俺たちにも気づいたらしい。マベッツに後ろから押された俺は、コアを乗せた四角い箱に車輪を造り、キュラキュラ音を立てながらトバルの横に立つ。


「トバル、その子が君の娘さんだな」

「テフノ殿」

「テフノ、様?」


 トバルの手に抱えられていたルツが降りてくる。トバルは単眼に螺旋状の額の角を持っていたが、ルツは隠れているが三つ目にこめかみの少し上から生えた双角を持つ。

 同じサイクロプスとは思えない違いだが、間違いなくこの二人は親子らしい。サイクロプスは単眼という種族的特徴は一緒でも、角や耳の形、身長や肌の色には個人差が存在するという。そこに親子や兄弟の同一は見られず、多様な姿を持つのだ。


「あの、お発目お目にかかります。棟梁トバルの娘、ルツと申します」


 サイクロプスの恰好は、どこか和服を思わせる部分がある。振袖のような袖と帯。トバルたちの格好も甚兵衛羽織に似ている。

 膝を付いた彼女は、俺の高さに視線を合わせてくる。うん、デカい。


「初めまして。ルツ。俺はゴーレムのテフノ=ルギア。彼女はリッチの」

「マベッツという。此度は災難だったようじゃの」

「お気遣いありがとうございます。その、リッチ様に、何か父はご迷惑を……?」


 リッチがアンデットの王だと理解しているのだろう。だからそんなマベッツが里に来たことに、少なからず困惑しているらしい。

 それに対し、心配するなとマベッツは首を横に振った。


「さほど迷惑なんぞかけられておらんぞ。それよりその額、ケガを負うたのじゃろ?」

「あ、これは、その……はい」


 一瞬、視線がマベッツのさらに後ろ。リスボンたちへ向いた。リスボン本人たちはサイクロプスの里に来たのが初めてなのだろう。自分たちの数倍の規格で造られた里に興味津々といった様子の彼らに対し、ルツ本人は少し不安そうだ。

 トバルはユバルたち兄弟と一緒に里の仲間へ説明を行っている。彼女への説明は、俺とマベッツの責任だろう。


「何も、心配しなくていい」


 まずは彼女を安心させるために、俺はそう断言した。



少しでも気に入っていただけたら幸いです。




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