第八話「サイクロプスの里」.4
移動距離を算出していると、予定の距離を九割進んできた。
風穴の内部には様々な鉱石が生え並び、キラキラとした幻想的な光景を生み出している。火山に近づいたことで、鉱石も多く見られるようになってきたようだ。
「トバルたちも、この辺りの鉱石を掘り出していつも作業を?」
「ああ。火山のマグマそれ自体も、鉄や鉱石を梳かす熱になる。我らが作るあらゆる武器は、この火山とともに生まれるものだ」
豊かな素材があるからこそ彼らの技術は進んできた。他のサイクロプスたちの集落も火山や、最低限鉱山に隣接するところに築かれてきたという。
サイクロプスたち自身、火山より生まれた存在だと言われている。そもそも鉱石やマグマというものと親和性が高い存在なのだろう。
「そろそろ地上へ戻るころだな。しっかり捕まってくれ。大きく揺れるぞ」
車体の角度を上に向け、風穴から地中へ進撃。再び車体全体を振動させながら垂直に上昇する。車体内部には魔子を充填させて垂直方向に重力を作り出す。そうすることで寝転がっているサイクロプスたちだけではなく、リスボンやマベッツたちも安全に移動できる。
「うぅぉぉぉぉっ! テフノ、大丈夫なのかい!?」
「なんか、すごい揺れてるよ!」
降りてくる時より登っていくときのほうが、やはり振動が大きい。サイクロプスたちの車両から悲鳴のような声が聞こえてくる。
さすがに彼らもこんな急加速を体験したことはないのだろう。現代人ならジェットコースターなり、飛行機なりで経験したことがあるかもしれないが、この世界の住民にそれはない。
まして彼らの巨体だ。他人に運ばれると言うことだけでも、未知の体験だろう。
「体は後ろに引っ張られているのに足は地面に吸い寄せられる……なんか気持ち悪い感覚じゃのぉ」
「すぐに終わるから待っていてよ。リスボンたちは問題ないか?」
「ぼくらは問題ありません。ですが、あまり、気持ちいいものじゃないですね……」
「まぁ、はじめのうちは、あ、ちょっと揺れるから」
地下水脈を発見したら、そこは避ける。通過後の地面はすぐには硬化しない以上、地中に与える影響は長く続く。もちろんずっとそのままということはないが、余計な水分量を得て液状化が深刻化することは避けた方がいい。
「おわぁっ!」
「ぐぅぅぉぉぉ……」
その分、大きい横揺れが車内の者たちに悪影響を与えるのは避けきれないけれど。
特に、この車体は普通の車や列車よりも長い。地下空間という移動先の限定された領域では、そもそも曲がろうとするだけでも車体に負担が大きい。つまり内部にいる人にも大きな衝撃が来る。
「地中面を突破。地上へ脱出する!」
一瞬地面が近くなったために太陽光が強まったと思うと、次の瞬間、傾き始めた太陽に向けて、ゴーレムトレインは飛び出した。
無理のある移動かと思ったが、思ったよりうまくいった。移動時間も想定通り以上。地上では目立ちすぎる巨体でも、地下なら誰にも気づかれず迅速に移動できた。
「車体着地、衝撃に備え!」
最後の着地。空中に飛び出した車体が地面へ叩きつけられる。振動は相殺できても慣性までは制御できない。重力制御と合わせて多少軽減させるが、車体内部で悲鳴と苦悶の声が響き渡った。
「それでも、移動完了だな」
「これほど豪快な移動とは、我も思わなんだ…」
そんなマベッツの言葉がしたけれど、ひとまず到着だ。
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