第八話「サイクロプスの里」.1
サイクロプスは鍛冶の種族――と言われているが、それは正しくない。
彼らは作成物全般に精通している。鍛治棟梁と呼ばれるトバルの鍛冶の腕が優れているのはもちろんだが、伴に来た二人の青年サイクロプスもまた、傑出した職人だ。
兄ヤバルと弟ユバルは、それぞれ木工、土工に優れていた。
兄ヤバルは豪快に木々を薙ぎ倒し、のこぎりも使わず製材し、組み合わせ、瞬く間に家一軒を造ってしまう。
弟ユバルはその太い指からは想像できない繊細な作業をこなし、水がめ、皿、すり鉢、あらゆる土器を瞬時に造り、自ら発する炎で焼き固めて完成させる。
「土器づくりなんて、焼いて乾燥させるだけでも結構な時間がかかるのに、それが全部炎熱魔術で肩代わりできちゃうわけか」
「ただ熱量があればいいだけではない。ひび割れぬように繊細な熱量コントロールができるのは、あの者が熟練の職人である証よな」
そう評したのはマベッツだ。彼女もサイクロプスの技巧には興味津々なのか、治療があらかた終わり、多くのリスボンたちとともに見学に来ていた。
「村の修復が完了次第、サイクロプスの里へ行くのか?」
「その予定だ。早いうちにトバルの娘さんに薬を届けてやりたいし、あの薬を量産できれば、いざって時には役立つだろう。そのための土器だ」
彼らの巨体ではリスボンの建物の中には入れない。なので先んじて造られた巨大な工房の中でユバルは作業している。ヤバルは村を囲むように策を設置中、トバルは俺が作った溶鉱炉の前で作業中だ。
「しかし、狭いな、巨人には」
身長五メートルを超す巨体には、天井までの高さが七、八メートルあるはずなのに狭く感じてしまう。こんな大きいもの、学校の体育館くらいか? 横幅もさほど広いわけではないから、余計に狭いように思えてしまう。
「そんな気にせんでくれ。おらたつぁお頭を止められなぐって、リスボンたちに迷惑かけた。罪滅ぼしになんだったら、こんくらいしかできんで」
ヤバルとユバルの兄弟は、トバルにとって甥っ子に当たる。体色は叔父のトバルが濃緑色に対し、彼らは青い。村には赤や黄色もいると言い、カラフルな集落らしい。
「体を小さくできれば、もっと楽そうなものなんだけど」
「無理を言っでくれるなよ。おらたつぁ種族魔術以外はからきしよ」
つまり、種族特性として持つ魔眼や雷電、炎熱の魔術以外は使えないのだ。
もっとも、その太い指でリスボン用の土器を作り上げるユバルの手つきは、魔法のようにしか見えなかったが。
「おーい、みんな。柵できたぞ!」
兄ヤバルの声がした。どうやらあちらも自分の仕事を終えたらしい。手際が良すぎる。
トバルは相変わらず黙々とサイクロプス製の武器を造っており、剣や斧が並んでいた。
「すぐ行く」
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