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第七話「決着へ」.4


 倒れたままのトバルは、首を動かして俺を見る。


「様々な、お手数をおかけして、申し訳ない。ゴーレム殿」

「気にするなよ。おかげでマベッツの奴は人間への復讐がどうだとかいう目的を離さなくなったし、俺も何ができるのか、試験にもなるからな」


 マベッツに言われた通り、ただひたすら一定温度で過熱を続ける。だがその温度は二千度を超える温度であり、これがドラゴンの炎と言われるほどの熱量なのだとわかる。


「なるほど、普通のゴーレムならまず耐えられないな、これは」


 普通のゴーレムというものにあったことはないが、少なくとも鉄より融点の低い石や岩の類では耐えられそうにもない。

 これが中世や古代の錬金術師というのは、一体どうしていたのだろう。タングステンもない時代、一体どんな炉を使っていたのか。


「何時間これを熱し続けたらいいのか……どうにか計測できないものか」

『賢者の石生成レシピをダウンロードしますか?』

「いやいや、しないから。あの、アカシック・レコードっぽいなんかへの接続だろ? 一瞬で終わっちゃったから何がなんだかわからなかったけど、回数制限があるなら慎重に使わないと」


 虚空情報――アカシャ。人間たちの集合的無意識やら、神の知識などといった、不明瞭でふんわりとした言葉で表されるものだ。

 が、生前の俺には、別のものとして存在しているのではと考えていた。


「ガイア理論、地球の中心に近づいたからこそ、接続できるようになったとか?」


 俺が地球の中心に求めたロマンは、未知というだけではない。どれだけ大量の地下資源が発掘できるか。空洞説のような巨大空間を発見できるか。

 そして、地球に意志はあるのか。

 多くのことを確かめたくて、俺は自ら地底探査車に乗り込んだ。


「って、この星は地球じゃないんだから、地球の意志とか関係ないじゃん」

「ゴーレム殿、先ほどから一人で何をブツブツと?」

「ん、悪い悪い。トバル、君の娘さん、ケガはどんな状況なんだ? 場合によっては、賢者の石からエリクサーを造れたら真っ先に持っていてやった方がいいけれど」

「かたじけない。あの子は、特別な子でしてな。今代の、覚醒眼(ジャガンナ)の持ち主なのです」

「ジャガンナ?」


 何のことかと思っていると、頭の中に声がする。


『検索結果:三つ目のサイクロプスのことと判明。数世代に一人とされ、特殊な能力を保有するとされます』

「その子が、狙われたってことか」

「まだ、覚醒眼(ジャガンナ)は開いておりませぬが、我が娘ながら目は二つ、あとは額に第三の目が現れれば、その力は目覚めましょう。幼い故、此度のことがその妨げにならなければよいのですが……」


 アオバはあえてそれを狙った可能性も考えられる。

 奴が愉快犯的思想持ちなら、それくらいしかねない。


「額と腕を切られておりますが、命に別状はございません。どうか、全てリスボンたちへ」

「無理するなって。お前もネメアと戦って、あいつに蹴られて、結構重症だからな」


 この目で見てわかる範囲だけで、骨が結構な本数折れていた。


「ならばこれは、我への罰でしょう。罪もない先祖からの友人を傷つけた愚か者への、罰です」

「そう自分を責めるなって。あいつには、今度会った時に借りを返せばいい」

「お心遣い、かたじけない」


 幸いだったのは、彼らの文化に切腹みたいなものがなかったことだ。恥は死と同じと考え、自ら死を選ぶようでは、助けた甲斐がない。


「あいつのことと、今回の諍いのことはひとまず置いといてさ。無事に娘さんの所に帰ってやりなよ。その子の父は、お前しかいないんだから」

「……はい!」


 トバルの言葉に、俺は満足して頷いた。



少しでも気に入っていただけたら幸いです。




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