第六話「王の力」.2
サイクロプスの巨体が、その半分以下の大きさの男によってなぎ倒された。
決して軟弱ではないはずのサイクロプスの剛腕を、まるで人形を振り回すかのように軽くいなし、その腹めがけて蹴りを撃ち込む。
数トンはありそうなサイクロプスは容赦なく吹き飛び、森の木々をへし折った。
「はははっ、あまり無理をするなよ。君たちはあくまで生産型の種族で、戦闘型の種族じゃないんだから。争いは同レベルの者たちとやるものさ」
俺の目には、この巨漢が行ったことが正確に捉えられていた。単なる格闘技ではない。その体に膨大な圧力にまで圧縮された風がまとわりついており、防御ではクッション代わりに、攻撃では砲弾のように維持と解放を使い分けていた。
無色透明な風、空気の塊であるが、ゴーレム・コアには魔力の、魔子の流れが視覚的に捉えられる。その出力は、トバルの雷撃の倍以上。
だが――。
「では、我と遊んではくれぬか?」
マベッツの放つ冥闇魔術ならば、同格だ。
「――マルム・サンクティオネス!」
マベッツの手の中に生まれた闇色の塊が、遥か上空へと投げられた。すると、そこから生成された同色の槍が、巨漢めがけて落ちてくる。直径十センチ程度の槍だが、風の防壁でも防げない速度と鋭さを持っている。
俺はすぐに地面に手を付けると、出現させた腕でトバルを囲み、同じく他の巨人や俺たちも囲む。それからほんの一秒にも満たない時間の後、着弾。
先ほど森の一角を消し飛ばしたように、目の前に直径十メートル以上のクレーターが出来上がっている。
「これが、冥闇魔術の質量攻撃……さながら隕石の衝突だな」
「ふむ。森は浸食できておる。奴に冥闇魔術の毒素が効くかどうかはわからんが、普通の生物ならこれで死ぬ。だがあいつが普通ではない、魔人級の存在であったならば……」
「マジン級?」
先ほどの怪獣の例がある。あの巨漢も怪獣の類に属する者であったのなら、なるほど冥闇魔術の毒素は効きづらいだろう。
しかし、質量体の爆撃は効くはずだ。
「我の生体感知に反応がある。テフノ、トバルを避難させよ。あの魔人、侮れんぞ」
「わかってる、ネメア、リスボンたちを!」
「ゴル!」
ネメアは俺の指示に従い、リスボンたちを背中に放り投げる。彼らのことは任せ、俺は遠くで伸びているトバル、そしてそこに駆けつけていたサイクロプスたちを移動させる。
本体はマベッツに抱えられて飛び上がる。
マベッツは空中に陣を描くと、そこから骨でできた馬――ペガサスを呼び出した。その上に立てば、どこかアンデットの王、リッチとしての威厳が垣間見える。
「さて、どう来る」
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