第六話「王の力」.1
「おいおい、誰だそのちっこいの。何いい感じに解決してくれたんだよ」
男の声に、全員の視線が集中する。リスボン族にしてはあまりにも大人っぽすぎる音声は、小さい体とアンマッチだ。
こいつが、サイクロプスたちを襲った謎のリスボンで間違いない。
「こっちにも予定とか、優先順位とかあるんだ。勝手に和解されると困るんだ」
ガサガサと茂みを描き分けて現れた五頭身は、空気が読めないのか察せられないのか、ぺらぺらと喋り始める。
一方顔を上げたサイクロプスのトバルの目は両端が引き攣っていく。額に浮かんだ青筋は摘まめそうなほどはっきりしていて、握った拳から電撃がバチバチと溢れ出る。
「ゴーレム……内部に変な魂が宿っているのユニーク個体か? おかしなスキルでも獲得したか、それとも魂魄魔術の実験体か?」
「こいつ……!」
ひょうひょうとした態度だが、俺のゴーレム・コアの中にあるものを見抜かれた。だから何だと思いもするが、直感が告げてくる。こいつはやばい奴だ、と。
少なくとも、今この場にいる全員で相手しても、危険かもしれない。
「せっかく、お前さんたちがこの森で頭角をあらわせる機会を作ってやろうと思ったのによ。無駄にしてくれちゃっ、って」
語尾に勢いを付けながら、そいつはジャンプした。すると、それまで畳んでいた膝関節を伸ばした。五頭身の低身長に見えていたのは、足を曲げていたからで、実際の身長は二メートル以上の巨漢であった。腕替わりだった棒を放り投げると、体をゴキゴキ鳴らしながらこちらを見てくる。
「どう落とし前つけてくれるんだよ? 小さなゴーレム・コアくん?」
「なんでこいつらを争わせた? お前に何の得があってこんなことをした!?」
「……質問しているのはこっちなのになぁ。まあいいや。簡単な話、人魔統合国家の誕生で絶えた争いを再び起こさせる。お前たちはその実験対象に選ばれたってわけだ」
伝えても問題ない――そう判断しての発言だろう。どこかに不和の種を撒けば勝手に目を生やしてくれる。別に表立つ必要もなければこそこそしなくても問題ない。
この巨漢は、この状況でも自分の優位性が失われない自信がある。
「つまり、我らの敵であるのだな?」
サイクロプスの眼光が鋭く光る。そのスキル、麻痺魔眼が睨みを利かせる。
生物の脳神経に作用する眼光に、巨漢は怯んだ様子がない。尤も、立ち上がったサイクロプスの体躯からしてみれば、二メートル超える彼であっても巨人の子どもくらいでしかないのだろうけれど。
「そういうのは格下にしか使えないものだぜ、巨人くん」
見えないはずの眼光に対して巨漢は腕を伸ばすと、硝子を割るように握りつぶした。
相手のスキルを真正面から粉砕したのか? トバルの雷撃を砂の壁で迎撃したのはあくまで雷電魔術に対して土石魔術と鋼鉄魔術が抵抗力を持っていたからだ。
だが、この巨漢はスキルの力を握りつぶした。
この世界、まだまだ知らないことばかりなのだと、俺は痛感した。
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