第五話「和解へ向けて」.3
俺は自分のセンサーを使って、怒りに震えるトバルと、困惑しながら無実を訴えるハダンを見る。どちらも譲れない主張を抱えているが、そこに嘘はない。
俺は単独操縦だったから、結果的に意味がなかった閉鎖空間訓練を思い出す。
酸素が薄く気圧の高い、閉じた空間。そこでストレス耐性訓練を兼ねて、推理ゲームをした。お互い感覚や思考が鈍った中で推理ゲームをしたものだから、無駄にストレスがかかり、感情的な対応になった。
それを収めるのは、探偵役だった俺の最大の苦労であった。
「トバル、お前たちを襲ったのは、どんな奴だった?」
「背丈が小さかった。俺たちの足の、ひざ程度だな」
「つまり、リスボン族たちほどの大きさだな」
「ああ。だからはじめは歓迎しようとした。取引には、こちらが赴くのが常だったからな。久方ぶりの山への来客だ。靴音を鳴らして近づいてきた奴を歓迎しようと、我が娘が近づいたとき――」
それが、事件の瞬間だ。
「奴は飛び上がり、我が娘の額にナイフを振るったのだ。ただの鉄のナイフであればまだ耐えられただろう。だが、我らサイクロプスが作りし刃を、防ぐ手立てはない……」
「その後、犯人はこの村のほうへ逃げてきたんだな」
「我らが追いかけ、追いつくたびに反撃を受けながら、まるで遊ぶように逃げておった」
やはり、犯人はリスボンとサイクロプスを対立させたかったのだ。理由はともかく、目的はわかった。
それも、もしかしたらまだ……。
「そしてこのナイフは……」
「ボクたちが見つけました。外の畑で中に投げ込まれ、何かと思って拾い上げた時……」
「我らは到着した。そして、そ奴らと対峙した」
ナイフを持った容疑者候補たち。今は対話の席について冷静さを保っているが、当時は一体どれほどの激情が彼らを支配していたことか。
「冷静になった今なら、リスボンたちがこんな無駄な争いを望んでいないと、君たちもわかるはずだ、トバル」
「……だが、奴によって我らが傷を負ったのもまた事実」
「そうだな。だから、そこを紐解いていこう」
俺の言葉に、トバルたちもハダンたちも首をかしげる。
二人の中央にあるゴーレムの肉体。それを変形させると、四角い箱のようなものになる。中身の構造がどうなっているか、正直俺も全然わからない。
ただ、それができると言う確信だけが、俺の中にはある。
「ハダン、ちょっとこっちに来てくれるか?」
「わ、わかった。テフノ殿」
見た目は人間の子どもとほとんど変わらないリスボンは、その背にリスのようなしっぽを持つと言う特徴がある。普段からマフラーのように首に巻いているそれは、ふさふさして暖かそうだ。
「トバル、襲撃犯は彼みたいに、首元がふわふわしていたか?」
「……フードケープのようなもので身を包んでいたから、よくはわからない。だが、素早い身のこなしはリスボンを思わせるものだった」
外見的特徴から探るのは、やはり難しいか。なら。
「ハダン、手を」
多少、無理のある手でも使ってやる。
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