第五話「和解へ向けて」.2
体を大の字にして寝転がるサイクロプスは、背中を強打したことで動けなくなっていただけで、大きな怪我を負ったわけではない。
しかし、こちらの力を示すのには十分だ。傷ついたリスボンたちはマベッツが抑えつつ治療を施し、お互いに飛び掛かれない位地に止めさせる。
俺はその間に立ち、ゴーレムの中からコアを出す。
「よし、じゃあここにリスボン・サイクロプス講和会議を始める」
パキパキと乾いた拍手がなる。マベッツが拍手してくれたようだ。ありがとうと思って手を軽く振ってから、座り込む二種族へ視線を向けた。
「今回、勝手ながら二種族の争いに介入させてもらった俺、テフノ=ルギアの仲裁で、この会議を進めていく」
「貴様に俺は倒された。巨人は強者に従う」
「ボクらは助けられた側だ。アナタに従うよ」
サイクロプスの代表と、リスボンの代表が答える。
「じゃあ、まずは自己紹介から。俺は名乗っているから、今リスボンたちを治療しているリッチは俺の……まぁ、友人ということにしておいて」
「雑ではないか!?」
「名前はマベッツ。今この周囲はあいつのゾンビたちが取り囲んでいるから、無茶なことはしないでくれよ」
物理的な仲裁の準備も万端だ。
「それじゃあ、君たちは?」
「サイクロプス鍛治棟梁トバルだ」
「リスボン衛士隊長ハダンだよ」
片や六メートル前後の巨人、片や一メートル前後の小人。サイクロプスの腕でも届かない距離でにらみ合う二人の間に立つ俺は、事前に渡されていたものを取り出した。
「こいつは、リスボン族にサイクロプス族から送られた品物ということで間違いないか?」
「ああ。我が先祖がリスボンに送った短剣だ。我らの造った雷の力を持った刃、我らの皮膚を貫く鋭さ。まぎれもなくサイクロプスの刃だ」
鉄のように硬いサイクロプスを傷つけることができるというだけでも、とても高度な技術で造られた武器なのだろう。
そして、俺が来るまでの間に戦っていた、ハダンに率いられたリスボンたち。彼らの使う武器もまた、トバルたちサイクロプスからの購入品だった。
「我らから武器を買い、自らを守ってきた小さき者たち。その刃が、まさかこのような形で自分に降りかかるなど、思いもよらなかった」
「そうだな。そこが、最初の問題だよな」
右手が持ったナイフは、子どものサイズに合わせたものではあるが、小さな細かい装飾と、見事な鍔細工をほどこされた芸術品だ。
その凶器の存在が、彼らの怒りを掻き立てる。
「そんなこと、ボクたちリスボンがするはずない!」
ハダンの言葉は、トバルたちサイクロプスの心に、届くことはなかった。
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