第四話「二つの種族」.2
ネメアを走らせた俺は、集落の中心へ向かう。まるで一昔前の日本の田舎の村のような集落だ。茅葺屋根の建物が並び、集落の奥には彼らの農地が広がっているはずだ。
そこに続く道が、小人たちの地で濡れてさえいなければ、牧歌的な美しい光景が広がっていただろう。
「リスボンたちが……何があったのじゃ!?」
「これが、リスボン……見た目は子どもじゃないか」
小学生並みの身長の住民たちが、大小さまざまな傷を負っていた。何かから逃げてきたのか。皆同じ方向から走ってきた様子で、傷つき倒れた者もいれば、泣き叫ぶ子どもを必死になだめる者もいる。
クルツアスランという巨大な獣がやってきたにも関わらず、逃げ出す気力さえなかった。
「テフノ、あの奥じゃ!」
建物の向こう側。農地へ続く柵のほうから、何か大きな力を感じる。生体センサーは、リスボンたちの小さい生命力をはっきりと捉えることはなく、代わりに巨大な何かの存在を、俺に訴えかけていた。
クルツアスランという、森の来たに住む猛獣を追い立てる何かがいた。ならば、南にも同じように侵攻してきたものがいたとしてもおかしくはない。
「だからと言って、巨人はどういうわけだよ!」
村に近づいていたのは、一つ目の、濃緑色の巨人サイクロプス。
ナイフや斧を持ったリスボンたちとの対格差は、五、六倍は感じられる。
「ネメア、行け!」
地球の伝承では人食いの鬼であったり、見事な鍛治をこなす巨人であったり。顔の半分を超えるような大きさの単眼をぎょろりと動かせば、鋭い眼光に睨まれたリスボンたちの動きが止まる。
サイクロプスは鋭い爪を持ち、さらにその眼光で動きを怯ませる。おそらく、これは彼らが持つスキルの一つだろう。正確なスキル看破を行うには状況が悪い。まずはネメアのパワーで抑えてもらう。
俺とマベッツはネメアの背中から飛び降りると同時に、百獣の王は四肢を加速させる。
「ゴガァッ!」
「ヴァッ!?」
巨人に群がっていた小人たちは、腕を振るうだけで吹き飛んでいく。
しかし、同等の体躯を持つクルツアスランならば、簡単には投げられない。両腕の爪と牙を用いて飛び掛かり、巨人の分厚い皮膚を貫いて動きを止めた。
「よくやった。スキル看破、開始!」
二十四面体の両目を輝かせ、サイクロプスの巨体を見る。
「スキル内容認識、拳技、鍛治、鍛造……魔眼(麻痺)、こいつか!」
リスボンたちが、まるで蛇に睨まれたカエルのように動けなくなるのは、この魔眼のせいだ。一種の魔法であり、睨むだけで効果を発揮する。
「マベッツ、リスボンたちの救助を!」
「任された! 我が眷属たちよ、地の底より目覚めよ!」
マベッツは地面に手を付け、地面に薄紫の陣を描く。そこから流し込まれた魔力が、大地の底で主の声を待っている者たちを呼び起こした。
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