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「そんな! タドミールさま、今度こそ私を馬にしてくれるのではないですか?」


 一番に叫んだのは大地の神ゼリムだ。誤解をまねくような物言いはやめてほしいと思う。


「いつでも水を呼び出せる私は旅の必需品ですよ! ぜひとも私も旅のお供に加えてください!」


 必死に叫びはじめた水の神に、アイーシャは呆れながら返事する。


「マーウィ……そんな、水の神を水筒代わりに連れていけるはずがないでしょう?」


 すると、今度は光の神が声を上げた。


「我が主キアリークさまをお救いいただきましたからには、私にはあなたさまをお守りする義務があります。どうか私をお連れください」


「マナラ、そんな義務を背負う必要はまったくないわよ」


「その通りだぜ! 一緒に行くなら俺だ。俺の火だって水と同じくらい旅の役に立つんだぜ!」


 手を上げ立ち上がったのは、火の神だった。


「フレイムまで……たしかに火も水も旅には必需品だけど、それくらいなら私の生活魔法でなんとかなるのよ」


 加護なしであっても、生活魔法はできるのだ。

 だからいらないと言いたいのに、今度は風の神がアイーシャの周囲を回り出した。


「旅は風の向くままと申します。風を自由自在に操る私ならば、どんな行き場所にでも思いのままですので、ぜひ私をお連れください」


「リャーフ、それは意味がないと思うわ。…………みんなも、気持ちだけ受け取っておくわね」


 アイーシャは、顔を引き攣らせながら全員に断った。

 しかし、言い終わるか終わらないかのうちに、背中からギュッと抱きしめられる。


「僕は、もう絶対ミールと離れないからね!」


 そんなことをするのが誰かなんて、言うまでもないだろう。


「キア――――」

「ミールの許可なんていらないよ! 僕が勝手にミールについていくから」


 ――――それは、正直困る。

 普通(・・)の人間のアイーシャに、創造神が止められるはずがないからだ。


「そこの人間も、僕とミールの邪魔をするならタダじゃ置かないからな!」


 アイーシャにしがみついたまま、キアリークはカフィを睨んだ。

 その視線を受けたカフィは…………ニヘラと笑う。


「いやいやまさか、邪魔なんてしないさ。旅は道連れ。多い方が楽しいだろう?」


 まさかの返答に、さすがのキアリークも驚いた。

 アイーシャも驚いてしまう。


「カフィさん、いいんですか?」

「別にいいけど、……っていうか、これって断れるものなの?」




 ――――普通に考えれば無理だ。

 創造神の望みを断れる者など、かつての破壊神しかいないから。

 だからアイーシャは、首を左右にフルフルと振った。


「だよなぁ~」


 カフィは頭の後ろで手を組む。


「俺は、アイーシャと一緒にいられればそれでいいよ。なにか、みんないろいろと常識(・・)がなさそうだけど、そういうのはアイーシャで慣れている(・・・・・)し……まあ、きっと、いまだかつてないほどに賑やかで騒々しい旅になるんじゃないのかな?」


 楽しそうにそう言った。

 もちろん、前代未聞の旅になることは間違いないだろう。


(神――――それも複数の神々と一緒の旅なんて、今までした人がいるはずないもの。……っていうか、カフィさん、キアだけじゃなく他の神々とも一緒に旅するつもりでいるわよね?)


 信じられないほどの許容力の高さだ。

 カフィの言葉を聞いた神々は、キアリークとザラムを除いて嬉しそうに笑った。


「お前、人間にしては話がわかるな!」


 フレイムは、ガシッとカフィと肩を組む。


「そうそう! 無駄なあがきをしないとか、非常にいい判断ですよ」


 マーウィは、上から目線だ。


「ザラムさまの次にタドミールさまの馬になるのは、私ですからね!」


 ゼリム…………そんなこと誰も競っていないから!


「よし! お前の好きな方向に風を吹かせてやるよ!」


 リャーフは、好意的なのかもしれなかった。


「仕方がありませんね。あなたに至高なるキアリークさまとタドミールさまの旅についてくることを許しましょう」


 マナラまでそんなことを言いだしてしまう。


(どうしてあなたが許可を出しているの?)


 アイーシャは、大きなため息をついた。


「反対! 反対! 絶対反対です!! タドミールさまのお側に侍るのは私だけで十分です!」


 予想どおりザラムは大きな声で反対する。


「なんだ? 狭量な奴だな」

「人間より器が小さいぞ」

「ザラムさま! 次の馬は私ですよ!」

「頭が冷えるように水をおかけしましょうか?」


 フレイム、リャーフ、ゼリム、マーウィの順の発言に、ザラムのまなじりがキリリと上がる。


(っていうか、マーウィ、あなたザラムの配下なのにその発言はいいの?)


 アイーシャは、頭を抱えた。


「狭量だろうがなんだろうが、私はタドミールさまのお側を誰かと共有するつもりはありません!」

「横暴!」

「絞めるか?」


 今度の発言は、リャーフとフレイム。

 どうして神というのは、力で全てを解決しようとするのだろう?


「ザラムさま、俺が馬になったらタドミールさまと二人乗りできるかもしれませんよ?」

「ザラムさまは闇の神なのにすぐに熱くなるから、私の水はお側にあった方がいいと思います!」


 ゼリムとマーウィは、ザラムを言いくるめようとしているけれど、あまり弁が立つとは言えないようだ。

 案の定ザラムは青筋を立てて怒り出した。


「ダメだと言っているでしょう!」




「…………どうしてお前に決定権があるんだ?」


 そこに、血も凍るような冷たい声が降る。

 もちろんそれはキアリークで、彼は不機嫌そうにザラムを睨みつけていた。

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