第42話(1)
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自分が両親を殺した?
ツツジの垣根に身を隠し、屈んで話しを聞いていた祐介は、身体を震わせた。
街灯の青白い光が、垣根の奥を僅かに照らしている。その薄暗い明かりの中で、土のついた自分の両手を見つめた。
震える両手は何の感覚もなく、耳さえ遠のいて感じる。しかし、新しい人物の声に身体を硬直させると、耳は自然と会話に注意を向けた。
宗太郎の声だと分かり、益々身を固くする中、要が静かに宗太郎の質問に答え始めた。
「俺から連絡をすれば、きっとあなたは警戒をするだろうと思ったんです。真実を話してもらうには、祐介から連絡をしてもらった方が、何の壁もなくあなたと会話が出来ると思った」
「私は壁など作ってはいないよ。今も、昔も」
「いや、自己催眠という壁がある。昔、俺があなたの犯した罪に全く気がつかなかったのは、俺自身が病んでいたせいもあるでしょうけど、あなたが、自身に念入りに自己催眠をかけていたからです。事件について、自分は何も知らない、とでもかけたんでしょう。あの頃、俺は人に触れなくても、心の中を読むことが出来ていた。俺の父親が、あなたにその説明をしていたはずです。それを聞いたあなたは、俺を受け入れるかどうか悩んだはずだ。でも、結局は受け入れた。きっと父親の熱心な願いに応えてくれたんでしょう。それとも、自身の催眠力を試してみたかったのか」
宗太郎は静かに低い笑い声をたてた。
「私が一体どんな罪を犯したと言うんだ?」
「祐介の両親を殺したのは、あなたですね」
祐介は息を飲み込んだ。思わず声が漏れそうになり、両手で口を押さえる。恐る恐る、垣根の隙間から様子をうかがったが、宗介も宗太郎も、こちらに気がついた様子はない。
祐介はそのまま口を塞いで耳を澄ませた。
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