第30話(1)
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
【注意】血の描写、残酷な描写が一部あります。苦手な方は回避してください。
ここは……?
赤い床。
これは……。
視線を動かす。その眼の先に写りこんだもの。
重なり合うように、うつ伏せに倒れる男女。服の色は、もはや何色か分からない。どす黒く染まった赤は、自分の足下にまで広がりだしていた。その足下は歪んで見え、目が回り始めた。
祐介は息を乱しながら目を見開いた。額に触れると、粘りけのある汗が手の甲に付く。身体を起こし壁により掛かると、背中から伝う壁の冷たさが、一気に身体を冷やす。熱いはずなのに、寒気がする。武者震いをすると、時計に目を向けた。午後四時を差している。
呼吸の乱れが落ち着くと、祐介は再びベッドの中に潜り込んだ。暗い部屋の中を、大きく見開いた目で睨み付ける。
要に自分の過去を見せてから、二週間以上がたっていた。
「新しい、夢……」
要の言っていた「パズルのピース」が、一つ見つかった。
「あの人達が、僕の両親……?」
ピンと来なかった。男の下に見えた女の顔を思い出そうとすると、突然吐き気を覚え、嗅いだこともない、生臭い血の臭いが鼻を掠めた気がした。
祐介はベッドから飛び出すと、トイレに駆け込み、空嘔吐を繰り返す。目を瞑ると、女の顔が蘇る気がした。見たいようで、見たくない。忘れたいようで、忘れてはいけない。
身体全体で息をしながら、祐介はよろよろと立ち上がった。
「要に、知らせなくちゃ……」
祐介はトイレから出ると自室へ戻り、勉強机の上に置いてあったスマホを手に取った。
ゆっくり、一文字ずつ震える手で文字を入力する。
『朝早くにごめん。例の夢を見た。新しい夢だ。詳しい話しは後で。』
たったそれだけの文章だったが、えらく時間が掛かった。祐介は非常識な時間帯だと思いつつも、送信を押した。一刻も早く、要に知らせたかった。メール送信完了の文字を見ると、身体の震えが収まりだした。
祐介は毛布にくるまるようにして、ベッドの上に座りスマホを握り締める。返信を期待しているわけではなかったが、そうしていると何故か安心できる気がした。
メールを送信してから二分後、バイブレーションにしてあるスマホが震えだした。
祐介は急いでデスプレーを見ると、要からだった。
祐介は要からのメールをすぐに読んだ。
『今日の放課後、終業式が終わったら話しを聞く。おじさんに話すなよ。取りあえず、寝られるなら、もう少し寝てろ。俺は寝る』
祐介は頷いた。
寝られるかどうかは自信がなかったが、身体を横にし、丸くなったまま目を閉じた。不思議と、先程まで見えていた女の顔は、見えなかった。
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