第14話(2)
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さっきのヴィジョンは一体何だったのだろうか。祐介が一瞬触った時に見えたヴィジョンが脳裏から離れない。
全てが赤い世界。艶のある赤い液体の中に、誰かの足が見える。小さい足だ。祐介の目線であることから、これは祐介本人のものだ。しかし、足の大きさが幼すぎる。この赤は一体、何だ?
「要?」
祐介の声が耳に飛び込んできた。要は我に返ったように目を見開き、重く怠い頭を上げた。自分の周りに立つクラスメイトを見上げる要の端正な顔は、可哀想なほど傷だらけになっている。
「なんで……」
振り絞った要の声は、震えていた。
「礼なら二戸神に言いな。俺らは一人に対して何人も居るって言うのが気に入らなかっただけだ」
堀田は自分の竹刀を要の顔の前に差し出した。要は微かに顔を険しくさせ、堀田を見上げる。
「掴まれよ。触られるの、嫌なんだろ。一人で立ち上がれるなら立て。さっさと帰るぞ」
要は微かに目を見開き驚いた顔をしたが、すぐに小さく笑みを浮かべた。
「じゃ、遠慮なく」
と言うと、堀田の竹刀を掴んだ。
堀田が勢い良く引き上げると、要はすくっと立ち上がった。
「歩けるか?肩、貸すけど」
祐介が要の顔を覗き込むように訊ねた。
「ありがとう。大丈夫だよ」
要はぎこちなく笑みを浮かべて答えた。本当は気持ちが悪くて仕方がなかった。小林に羽交い締めにされたことで、見たくもない小林の過去のヴィジョンが、詳細に見えてしまった。宮崎の友達なだけあって、犯罪まがいなことを数多く犯している。要は嘔吐きたくなるほど気分が悪く、本当は立っていることが精一杯だった。
だが、最後に見た祐介のヴィジョンがもっとも気になるものだった。今まで感じたことのない、恐怖にも似た嫌悪感を感じた。今は何も考えたくなかったし、見たくなかった。これ以上、ヴィジョンを見たら、自分がどうなってしまうのかすら、想像が付かなかった。
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