第5話(2)
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若い男が、要たちを呼びにきた。厭らしい男と話してから、軽く二時間は過ぎていた。
要は一人、若い男に着いてスタジオの中へ入って行った。
スタジオに入った途端、嘲笑う声が要を襲う。
要のほかに、数名の霊媒師やらなんやらが居た。そして、ゲストと呼ばれる芸能人が数名いる。どの人物からも聞こえる、疑いの声。
要は、用意された簡易椅子に座らされるとすぐに、収録が始まった。
「では、本番いきまぁす」と、大きな声で誰かが言う。カウントが始まり、司会者が話を始めた。
VTRが流れ始めると、みな一様に静まり返って画面を見つめる。VTRには、要が数日前に無理やり連れて行かれた、超能力研究所という怪しげな場所で行われた実験の結果をまとめたものだった。
カードを次々に見せられ、どこかで見ているのかもしれないと言われ目隠しをし、再び「これは何?」と聞かれてそれを答えていく。
研究室での要の的中率に対し、大興奮でインタヴューに答えている研究員の言葉を最後に、VTRは終了した。
司会者がゲストに感想を聞くと、要の出番が来た。
「では、ご紹介しましょう。天才超能力少年K君です」
感情のこもっていない拍手の中、要は司会者の隣に立たせられた。
「K君、この間の実験どうだった?簡単だった?難しかった?」
要は俯いたまま「まあまあ」とだけ答えた。その返事に司会者は苦笑しながら「お、なんだか自信満々の様にも聞こえるねぇ」と言った。その言葉に、ゲストがわざとらしい笑い声を上げる。要はそっと目をあげてその様子を眺めた。
不思議な感じがした。あんなに笑顔なのに、心はちっとも楽しそうではない。それが仕事だから?だとしたら、みんな、ものすごい役者だな。
そんなことを思っていた。
一人の若い女性ゲストと目が合った。声が勝手に流れ込む。
眼だけはこちらを見ていたが、心の中では恋人のことを考えていた。番組収録が早く終わらないだろうか、今日はどこで夕飯を食べようか。そんな声だった。要はすぐに目を逸らし、俯いた。
「K君はね、シャイだから」と、言いながら司会者が要の肩に手を置いた。その途端、流れ込んできたヴィジョンに要は身体を捩り、司会者から離れた。それに驚いた司会者は、一瞬、顔をこわばらせた。
スタッフに言われた言葉を思い出したのだろう。すぐに顔を笑顔に戻し「もしかして、今僕の頭の中、読んじゃったかな?」と、冗談交じりに言った。
要はちらりと司会者を見上げると、小さく口角を上げた。その笑みを見て、男は何もなかったかのように、霊媒師たちに話題を振った。
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