第6話 『冒険者としての門出』
はい。これで第一章は終わりです。個人的にテンポ早めだと思います。
お風呂を出た私達は、ギルドを出て行く前に
ザックス支部長からお金、1人銀貨3枚を
貰った。どうして?と私達が首をかしげるが、
理由はホブ退治に貢献したから、だそうだ。
これでお金が入った私達は町のお店で夕食を
一緒にすることにした。
ギルドのお姉さんに良い店を教えて貰った
私達はそのお店で夕食を取った。お会計は
割り勘で、1人銅貨6枚と、ちょっと
高かったけど臨時の収入もあって問題には
ならなかった。
「ん~~。食べた食べた~。満腹~」
私はふ~、と満足げに呼気を漏らす。
「美味しかったね、お姉ちゃん」
「えぇ。久々に美味しい物を食べた気が
するわ」
2人も満足した様子で笑みを浮かべている。
ちなみに、店に入って料理を注文したん
だけど、量は多いわ何品か注文してない
ものがでてきた。慌てて注文してないって
言うと、店の大将らしき男性が来て『おごりだ』
って言ってくれた。
私達は大将に奢られる事してないよね?
って2人と首をかしげていた。気になって
理由を聞くと、あの坊ちゃんをぶっ飛ばした
事らしい。聞けば、あいつは町でも普段
から領主の息子という立場を笠に着て
好き放題やっていて、町民の悩みの種
だったそうだ。……って言うか私があいつを
ぶん殴った話、もう広まってるんだ。
まぁ奢られて悪い気はしないでの3人で
完食した。
「さて、と。私はもう宿に戻るけど、
2人はどうする?」
「私達はこれから宿を探すわ。と言っても、
空いてるところがあるか分からない
んだけどね」
そう言って苦笑を浮かべるアリエス。
う~む。そうだよなぁ。もう夕暮れ時だし、
今から宿となると……。ふ~む。
……ダメ元で聞いてみるか。
「ねぇアリエス、ウリエス。よかったら
私の宿に来ない?」
「え?」
私の提案に首をかしげるウリエス。
「正直聞いてみてないと分からないんだけど、
今私1人部屋を借りててさ。2人も出費
を抑えたいだろうし、そこに2人も
泊めて貰えないか聞いてみようと思うの。
どうかな?」
私の言葉に、アリエスは困ったような表情で
笑みを浮かべている。
「全く。ミハルのお人好しは相変わらずね」
「まぁね。で、どうする?」
「聞いてみる分にはただ、だし。行ってみよう、
お姉ちゃん」
「そうね。聞く分なら、お金は取られない
でしょうし」
どうやらOKみたい。
「それじゃあ早速行こっか」
と言う事で、私達は早速私の泊ってる宿、
マーサの宿に向かった。
「え?あの部屋を3人で使いたい?」
で、宿に戻って早速マリーさんと出会ったので
相談してみた。
「う~ん。でもあそこは1人用の部屋だからな~」
そう言って腕を組むマリーさん。
やっぱり無理かなぁ。
「ちょっとお母さんたちに相談してくる。
待っててね」
「あ、はい」
奥へとは行っていくマリーさん。
「どうかな?やっぱ無理かな」
「う~ん。分かんない」
首をかしげるウリエスに、私は正直に
答える。まぁ聞きに行ってるって事は
必ずしも無理ではないんだろうけど……。
とか考えて待っていると、マリーさんが
戻ってきた。
「あ、マリーさん。どうでした?」
「それがね、お母さんたちはOKだって」
「え?良いんですか?」
「うん」
聞き返す私に頷くマリーさん。
「ミハルちゃん。あのクソ息子ぶっ飛ばした
んでしょ?そんな良い子のお願いなら
聞いてやらないとね、ってお母さんが」
「そ、そうですか」
他人をぶっ飛ばして良い子って。
ホントあいつどんだけ嫌われてるの?
ともかく、これで2人とも泊まれる事に
なった。ちなみに、料金は特別料金になった。
これも私があいつをぶっ飛ばしたお礼だとか。
一週間の契約で2人。でも料金は1人分の
銀貨1枚で良いとの事。これは出費を
抑えたい2人にもありがたい事で、2人とも
喜んでいた。
んで、今日は色々あったので、部屋に戻る
と私達3人とも、ベッドで横になった。
「……やっぱ3人だとちょっとキツいね」
ベッドは、元々大人用なのかそこそこ大きく、
私達女子3人が並んで寝そべっても問題無い
大きさだったけど、でも寝相が悪いと、
壁が無い右側のアリエスが落ちそう。
「しょうがないわよ。ここ元々1人部屋
なんでしょ?」
「私は別に大丈夫ですよ、ミハルさん」
2人は特に不満を言う気配は無い。
と言うか……。
「なんで2人は私の両腕を握ってるの?」
ベッドの中央で寝てる私の両腕を、右の
アリエス。左のウリエスが、それぞれ
ギュッと抱きしめていた。
「こ、これはその、そうっ!寒いからよっ!
こうしてた方が暖かいしっ!」
「私は、ミハルさんの事が大好きだからです」
「えっ?」
「う、ウリエスッ!?」
なんか今凄い事言われたような。
って言うか反対側ではアリエスがワナワナと
震えてるし。
「私は、ミハルさんに出会えてよかったです。
助けてくれて、守ってくれて、優しくて、
強くて、かっこ良くて。そんなミハル
さんが私は大好きです」
そう言って満面の笑みを浮かべながら私の
腕を抱き寄せるウリエス。
ふぉぉ~~。ウリエスの胸に私の腕が
挟まれてるっ!?
お風呂でも思ったけど、2人とも胸結構
あるんだよねぇっ!?着痩せするタイプかな?
って今はそれどころじゃないぃぃっ!?
「そ、それだったら私だってっ!」
『むにゅんっ!』
おぅふっ!?えっ!?アリエスも同じように
私の腕を抱き寄せているっ!?そして
案の定胸に当ってるぅぅっ!?
「わ、私だって、ウリエスと、同じ、
気持ちなんだから」
そして繰り出されるアリエスのツンデレ~!
……って、え?
「そ、それって、アリエスも私のことを?」
「ッ!?ッ~~~~~~!言わせないでよ
バカァッ!」
『ぎゅぅぅぅぅぅぅっ!!!』
あだだだだだだだだだっ!?
腕っ!腕ェ思いっきり掴まないでぇっ!?
ま、まさか出会って数日の2人に好意を
向けられるなんて、思いもしなかった。
結局、私は両手を2人に抱かれたまま、
昼間の疲れもあってすぐに眠ってしまった
のだった。
翌朝。明け方。ふと目が覚めた私は最初、
起き上がろうとした。でも両手が何かに
ガッチリ止められて動かせない。何事っ!?と
思って左右を見回すと、そこでは未だに
眠ったままの双子、アリエスとウリエスの姿が。
あぁ、そうだった。と、昨日の夜の事、
2人と一緒に眠った事を思い出しながら、
私は体を起こすのを諦めた。
しっかし、女子2人に女の私が告白
されるとか。いやまぁ告白されて悪い気は
しないよ?実際前世じゃ普通の恋愛物の
漫画から、ガールズラブ描写の漫画、
ボーイズラブ描写の漫画まで。色々読んだ
事もあるし、正直私は人の恋愛なんて
自由だと思ってる。
って言うか、他人の恋路に第三者が
あ~だこ~だ言う資格なんて無いと思ってる。
だって恋愛は2人の人がする物だ。
第三者が偉そうに何を言うんだって感じ。
で、話を戻せば私は前世でも普通だった。
ノーマルだった。と言うかそもそもオタク
女子だった私に友人以上の関係の男子なんて
いなかったし。当然女友達とそんな関係に
なった事も無い。
で、結論から言うと……。
『バイセクシャルでも良いじゃない』。
って事で私は自分を納得させた。
いやまぁ恋愛なんて自由だし、異性
だろうが同性だろうが好かれて悪い気は
しない。じゃあもうバイでいいや。
と言うのが私の結論だ。
さて、まだ眠いし、もう一眠りしよ~っと。
二度寝をする私。そして目が覚めると……。
「おはようミハル」
「おはようございますミハルさん」
両脇から聞こえる美少女双子の微笑み
&モーニングコール。しかも2人とも、
未だに私の腕を抱いている。
何だここは?天国か?ラノベの主人公(男)
ってこんな事してたのかっ!
何て羨まけしからんっ!
って、今は私がそんな主人公みたいになってる~!
そっかっ!これもある意味主人公に発生する
イベントのような物っ!いや~転生して
よかった~!
とか思ってると……。
「何朝からニヤついてるのよ。そんなに
良い事でもあった?」
「いや~。朝から美少女2人に左右を
囲まれてるのって良いな~って思って」
おっと、つい本音がぽろっと。
「ッ~~~!そ、そう言う恥ずかしい事は
簡単に言わなくて良いのっ!」
『むぎゅぅぅぅぅぅっ!』
「いふぁいいふぁいふぉありふぇす~」
本音が漏れてしまった私は、朝からアリエス
のほっぺをつねられるのだった。
その後、私達は朝食を食べた後、ギルドへ
向かった。もちろん依頼を受けるためだ。
アリエスたちは、やっぱりまだ懐が寒いので、
少しでもお金を貯めておきたいと言う。
だったら私も行くしか無いでしょ。幸い、
たっぷり寝たのでそこまで疲れてはいないし。
って事で早速ギルドに入ると……。
『ザワザワッ』
う~ん。分かっていた事だが、やっぱり
私達は注目されている。まぁ、あんな事
やらかしたからなぁ。
でもまぁ周囲を気にしてても始まらない。
私達は早速依頼を張り出している掲示板に
歩み寄り、私達のEランクでも受けられる
依頼を探す。
と言っても、内容は試験でもやったような
ゴブリンの討伐。これはゴブリンが増えすぎる
のを防ぐための間引き。後は東の森とは
別に西の森で取れる薬草の採取や、ちょっと
変わった所だと畑仕事の助っ人募集とか。
それが私達Eランクの受けられる仕事だ。
「ねぇ2人とも。これなんてどうかな?
薬草の採取の依頼」
そう言って私は壁に貼られた依頼書を指さす。
「そうね。内容は西の森で薬草10本以上を
採取。量によって追加報酬もあり、か。
良いんじゃないかしら。私は良いわよ?」
「はい。私も大丈夫です、ミハルさん」
「OK。じゃあ早速やりますか」
と言う訳で、私達は早速この依頼を受ける事
にした。
依頼書を剥がし、受付に持っていって受理
してもらう。
そうやって依頼を受け、こなし、報酬を貰う。
それが冒険者ライフだ。
そして数日。私はアリエス、ウリエスと共に
簡単な依頼を受けていた。農家のお手伝い
だったり、家の掃除の手伝い。ちょっと冒険
して東の森でのゴブリン退治などなど。
更に依頼を受ける合間に、私たちは町で
買い物もしていた。内容は主に2人の
持ち物。出会った時に着ていた服は、
所々よれていたりほつれていたりした
ので、安物だけど新しい服を買ったり、
あとは冒険者として仕事をしていくのに
必要なアイテムを買ったり。
特に新しい服を買うとき、2人に似合いそう
な青い服を選んで可愛いって褒めたら、
顔を赤くして喜んでくれたっけ。
そうやって私は、2人と一緒に過ごしながら、
冒険者をしていた。
でも……。
「ミハル・スプリング。ちょっと良いか?」
「あ、はい」
ある日の朝、ギルドを訪れた私にザックス支部長が
声を掛けた。
「……この前のケンカ騒ぎの処罰が決まった」
支部長は、本当に渋々と言った表情で
そう言った。それだけでアリエスとウリエス
は表情を険しくし、或いは暗くし、周囲の
冒険者やギルド職員もこちらの様子を伺って
いるみたいだ
「……ここではなんだ。俺の部屋に来い」
「はい」
周囲を見回した後、歩き出す支部長に私も続く。
「ミハルッ!」
その時、後ろからアリエスが声を掛けた。
今の彼女は、とても心配そうな表情をしていた。
アリエスの後ろのウリエスもだ。
「大丈夫だって2人とも。すぐに戻って
くるから。だからちょっと待ってて」
私は2人を安心させようと微笑み、そう呟いて
から支部長の後に続いた。
そしてやってくる支部長の部屋。
「さて、早速だが、本題に入らせて貰う」
「はい」
「お前の処遇についてだが、逮捕するとか、
処刑する、牢屋に入れるとかじゃないから
そこは安心してくれ」
「そうですか」
正直、逮捕云々が無いのはありがたい。
「元々あのバカ息子が色々やらかしていた事も
あって、領主の方も、殴られたのは良い薬
だと言っていた。なので、お前を直接的に
どうこうする気は無い、だそうだ。
だが、それではあのバカ息子の怒りが
収まらないし、何よりあいつを殴って
怪我をさせてるからな。話し合いの結果、
喧嘩両成敗って事になった。あのバカ息子は
しばらく牢屋にぶち込まれる。対してお前
は、あいつをぶん殴った事をチャラにする
代わりに、近日中に町を『出て行って』欲しい」
「……追放、ですか?」
「すまない。お前だけ何も無いって言うのは、
出来ないからな」
「そうですか」
町を出て行け、か。まぁ、生まれ故郷を追放
されるんじゃないから、別に良いけど。
「分かりました。出て行くのは、明日の朝
で良いですか?」
すると、支部長は一瞬目を見開いてから、
頭を下げた。
「すまない。俺が情けないばかりに。あの時、
俺は喧嘩を止められる立場にあったって
のに」
「良いんですよ。気にしないで下さい。
むしろ、冒険者としての資格剥奪、とか
言われたらどうしようとか思ってた
くらいですから。町から出て行け~
ってのならまだ楽な方ですよ」
そう言って私は笑った。
「……本当にすまないな」
そう言って、もう一度頭を下げる支部長。
しかし、追放か。まぁ荷物は殆ど無いから
問題無いけど、この事を2人にも話さないと
いけないし……。あっ。
「ザックス支部長、最後に1つだけお願いを
聞いて貰って良いですか?」
「ん?何だ?俺に聞ける事なら構わないが」
「どこか空き部屋を1つ貸して貰って
良いですか?あの2人と、3人だけで
話がしたいんです」
「分かった。それくらいお安いご用だ。
すぐに手配しよう」
私がそう言うと、ザックス支部長は真剣な
表情で頷いた。
その後、私はザックス支部長に案内された
小さな応接室のような場所で待っていた。
数分すると、支部長に連れられた
アリエスとウリエスがやってきた。
「ミハル、どうだった?話は?」
「うん、逮捕とか処刑とか、そう言うのは
無かったよ。だから安心して」
と、私が真っ先に伝えると、2人は
とても安堵した様子で息をついた。
「よ、よかったですミハルさん」
「うん。……でも、何のおとがめも無し
って訳じゃなかったから、2人に話して
おきたいことがあるんだ」
「「え?」」
2人の表情が、驚きと困惑で染まる。
その後、私は2人に、町を追放される事を
話した。
その事にアリエスは憤って声を荒らげ、今
にも暴れそうだったので、ウリエスと私で
止めた。
「ミハルはそれで良いのっ!?この町で、
冒険者として経験を積むって言ってた
じゃないっ!」
「それはまぁ、別に良いかなって思ってる。
冒険者として経験を積むのなら、何もこの
町で依頼を受けたりする必要があるわけ
でも無いし」
「じ、じゃあ、ミハルさんはこの町を出て行く
つもりなんですかっ!?」
ウリエスは、今にも泣きそうな目で私を見つめて
いる。その表情は、『行かないで』と縋る子供の
ようだった。うん、分かってた事だ。でも、
だからこそ……。
「だからね、2人に話しておきたいことが
あるの。それはね、『私と一緒に行かないか』
って言う誘いなの」
「「え?」」
揃って首をかしげるアリエスとウリエス。
「今言ったように私はこの町を出て行かない
といけない。でも正直、折角出会って
好きだって言ってくれた2人と別れたく
ない。そこで私が思いついたのは、
一緒に出て行くって事なんだけど……。
2人はどうかな?もちろん強制とかじゃ
無いから、嫌なら良いんだけど」
本音を言えば1人で町を出るのは寂しい。
だから2人が付いて来てくれるのなら
嬉しい。でも、その事を強要したくはない。
だから聞いてみた。
2人の答えは……。
「ハァ、もしかしてミハル。分かってて
聞いてる?だとしたら、あなたって
思いのほか意地悪ね」
「え?え?」
唐突なアリエスの言葉に、意図が分からず
私は疑問符を浮かべてしまう。意地悪?
私が?どゆこと?
「つ、つまり、その。んんっ!私達が
断らないって分かっててそう言う事
言うなんて、意地悪じゃないのよっ!」
顔を赤くしながら叫ぶアリエス。
「えぇっと、別に分かってたとかじゃ
無くて、ただ私は2人の自由意志を
尊重しただけで……」
と、その時ウリエスが私の両手を取った。
「ウリエス?」
「私は、ううん。私達2人は、ミハルさんと
一緒ならそれで良いです」
そう語るウリエスは頬を赤く染めながら
ゆっくりと話し始めた。
「私達もこの町の生まれじゃないから、
愛着とかもありません。ミハルさんが
いるのなら、ここに留まる。居ない
なら精々冒険者ギルドとかを利用する
以外、この町に居る意味なんてありません」
「ウリエス」
……何だろう、今の台詞。ちょっと考えると、
この町に居るのは私が居るからで、私が
居ないと居る価値がないって言ってるような。
もしかしてウリエスってヤンデレの気が
あるのかな。……いや、今は深く考えるのは
やめよう。
「じゃあ、改めて2人に聞きます」
そう言って、私は深呼吸をし、気分を
落ち着けてから口を開いた。
「私と一緒に、冒険してくれますか?」
私からの問いかけに、2人は……。
「「えぇ(はい)」」
笑みを浮かべながら頷いてくれた。
ッ!その笑顔が何だか輝いてみえて、
そしてとっても嬉しかったのを、私は
いつまでも忘れないかもしれない。
その後。ザックス支部長に話をして、2人
と一緒に町を離れることを伝えた。
また、それに加えて今後出て行くとしたら
どの方角に向かうべきか聞いてみた。
「そうか。特に予定が決まってるわけじゃ
無いんだな?」
「はい。とりあえず、冒険者やりながら
世界中を回ってみたい、って言うのが
私の目的ですし、2人も特に行きたい場所
は無いって言うので」
「そうか。なら、西へ向かうと良い。
このセナーレの町から西へ馬車で2週間。
人の足だと1ヶ月以上かかるが、
『リーヴァ』という大きな都市がある。
リーヴァは交通の要衝でこの国の
王都に次ぐ大きな都市だ。物も人も
集まるし、ギルドもここよりデカい。
集まる依頼の数も多いだろう。それと、
リーヴァにたどり着くまでにはいくつか
の村や町が点在してるし、そこらにも
ギルド支部があるから道中仕事に困る
事は無いだろう」
リーヴァ、この国で2番目に大きな都市か。
交通の要衝なら色んな物も集まって見られる
かもしれないし。
「分かりました。じゃあ、当面は
リーヴァを目指してみます」
「分かった」
そう言うと、ザックス支部長は執務机の椅子
から立ち上がって私の傍へ歩み寄って来た。
反射的に私も立ち上がる。
「道中の無事を祈ってる」
そう言って右手を差し出すザックス支部長。
「ありがとうございます、支部長」
私もそれに答え、握手を交わした後、私は
部屋を出て外で待っていた2人と合流した。
そしてその日も依頼をこなしてお金を稼いだ。
明日ここを出て行くとは言え、お金が無い
といけないからね。
そして夜。私は宿に戻り、マリーさん達に
明日出て行く事を伝えた。話を聞くと、
マリーさん達は心底残念そうな顔をして
いたけど、最後は『元気でやるんだよ』
と笑顔で励ましてくれた。
夕食を食べ、部屋に戻る私達3人。そして
昨日と同じく、依頼もこなして疲れてた
から3人並んでベッドにイン。
「……明日でこの町ともお別れか~」
ポツリと独り言を呟く私。
「なに?寂しいの?」
すると隣に居たアリエスがそう問いかけてきた。
「やっぱり初めて冒険者になった町だから
ねぇ。思い入れもある、みたいな?
まぁでもね」
「ん?」
首をかしげるアリエスとウリエス。
そんな2人に手を回し、私は自分の方に
ギュッと抱き寄せた。
「「ッ~~~!?」」
それだけで2人は顔を真っ赤にしてる。
「2人が一緒だから。私は寂しくなんか
ないよ。それと、ありがとね。一緒に
来てくれるって聞いたときは、
嬉しかった」
「そ、それは、私達が望んだ事だし」
「は、はい~~」
ふふっ、2人とも顔真っ赤でホント可愛い。
「これから一緒に、いっぱい旅して、
色んな所に行こうね。アリエス、
ウリエス」
「「えぇ(はい)」」
私の言葉に2人は笑みを浮かべながら頷く。
そして、眠りにつくその瞬間、私は
2人と共に3人で行く旅路に期待を膨らませ
ながら静かに瞼を閉じるのだった。
そして翌朝。朝食を食べた私達は、マリーさん
達に挨拶をして宿を出た。そのまま
町の西門に向かうと、そこにはザックス支部長が。
「あれ?ザックス支部長。どうしてここに?」
「あぁ。お前達に渡す物があってな。これを
持っていけ」
そう言って支部長が差し出したのは小さな袋。
何だろう?と思って受け取り中身を確認する
とそこには無数の金貨がっ!?
「支部長っ!これってっ!?」
「それはあのお坊ちゃんの父親、領主からだ。
息子が迷惑を掛けたお詫び、だそうだ。
少ないが旅の役に立てて欲しい、との
事だ」
……本当にこの町の領主は良い人だな。
何でそんな人からあんなバカ息子が生まれた
のか未だに信じられない。
まぁでも……。
「ありがとうございます。ありがたく、
使わせて頂きます」
「あぁ。……じゃあ、元気でな」
「はい。お世話になりました」
私が頭を下げると、後ろの2人も私に倣って
頭を下げる。
ザックス支部長は小さく笑みを浮かべると、
何も言わず町の方へ戻っていった。
「さてと、行こう。アリエス、ウリエス」
「「えぇ(はい)」」
そして、私達はセナーレの町を出て西へ
向かって歩き出した。
「にしても……」
町から離れてしばらく歩いているとアリエス
がポツリと呟き始めた。
「旅をするって言うけど、具体的に何を
するの?世界を見てみたいとか言ってた
けど」
「ん~?そうだね~。美味しい物食べて
美味しいって思ったり、綺麗な物を
見て綺麗だって思ったり。今まで見た
事ないものを見て驚いたりする。
それが、私が旅をする理由かな。
あ、でも色々やるにはお金が必要だから
冒険者としての仕事もするけどね」
「何それ?何て言うか、大雑把というか
なんというか」
「でも、3人で色んな事をするのは楽しそうです」
あきれ顔で苦笑するアリエスと笑みを浮かべている
ウリエス。
「そうね。折角こうして3人で一緒に旅する
んだし、色んな事をしながら楽しく、
時に冒険しながら旅をすれば良いのよっ!」
私は、まだ見ぬ冒険と、もしかしたら
出会うかも知れないまだ見ぬ仲間へ、
期待に胸を膨らませながら、私達の冒険者
ライフ始まりの町、セナーレを後にした。
第6話 END
次回から第2章です。面白いと思って頂ければ感想や評価などお願いします。