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女の子だって異世界で暴れたいっ!  作者: 結城
女の子だって異世界冒険したいっ!
3/19

第2話 『双子』

早速主人公がヒロイン(2人)と出会います。

生まれて初めて訪れた町、セナーレの町で

冒険者になろうとしていた私は、町のギルド

支部で話を聞くことが出来た。


冒険者になるには、ギルド主催の試験を

受けて合格する必要がある。そしてその

試験の開催日は、明後日。なので私は

ギルドを出て町の安宿で部屋を借り、

その日は食事を取ったあとすぐに部屋で

休んだ。


そして翌日。朝起きた私は食堂で朝食を

取って少し部屋で休憩した後、お店が

開くだろう時間を見計らって宿を出た。


持ち物は、昨日と違うのは腰にマチェット

を装備している事。そんでもって今日の

目的は明日の試験に向けて道具を揃える事。

必要なのは防具と薬などの必需品。

それと必要なものがあればそれも。


って事で、私は早速昨日のギルドの

お姉さんに教えて貰った武器屋に行って

見る事にした。

そして歩く事数分で到着。


昨日は来なかったから、どんな店かと

思ったけど、建物は年季が入ってて、

結構長くこの店をやっている事は雰囲気

で分かった。中の様子を覗いても、新人

からベテランまで、色んな冒険者らしき

人達がいる。多分このセナーレの町の

冒険者を相手に長年やってきてた、

って事なんだろうなぁ。


私は早速中に入り、防具のコーナーに向かった。

お店に置かれていた防具は大まかに分けて

2種類。鉄製の物か、革製も物。そこから

更に面積などの関係で重い、中くらい、軽い

の3つくらいに分けられそうな感じの物が

置かれていた。……結構品数良いなぁ。


とか考えながら防具を見つめていると……。

「いらっしゃい。嬢ちゃん1人かい?」

ふと声を掛けられ、そちらを向くと、

口ひげを蓄えた、中年の男の人がいた。

少し汚れた服装からして、もしかして

職人さん、かな?

「あ、ど、どうも」

私は戸惑いながらも頭を下げた。


男性は、何やら私の事を見て、次に腰の

マチェットに目を向けた。

「お嬢ちゃん、もしかして冒険者志望

 かい?」

「え?は、はい」

「やっぱりなぁ。で、お探しの品は

 防具かい?武器は、その腰の短刀かい?」

「え、えぇはい。正直武器はもうこれが

 あるんで良いんですけど、防具の方を

 揃えたくて」

「そうかぁ。しかし短刀使いとなると

 動きやすい方が良いから、装備は革鎧

 の方が良いだろうな。それとも鉄製のに

 するかい?」

「いえ。革製ので大丈夫です。重い鉄製

 のだと、動きが鈍くなりそうなので」

「そうか。しかし素早さ重視となると、

 部分的な所を保護する軽装の革鎧

 辺りがお勧めだが、とりあえず 

 試着でもしてみるか?」

「え?試着OKなんですか?」

「あぁ。ちょっと待ってな。お嬢ちゃん

 くらいで、軽装の革鎧となると、

 これとこれとこれかな」

そう言って、近くにあった商品を見繕って

くれるおじさん。

「って、男の俺がお嬢ちゃんの着替えを

 手伝っちゃ不味いか。お~いシェリー!」

何やら店の奥に向かって叫ぶおじさん。

すると奥から、20代くらいの女の人が

出てきた。


「なんです店長?」

「お前悪いがこの子の試着手伝ってくれ。

 見たところ、冒険者志望みたいだからな」

「分かりました。じゃあこっち来て」

「あ、はいっ」

私はお姉さんに促されるまま、店の奥に

あった試着室で、お姉さんに手伝って

貰いながら革鎧を身につけていった。


あの店長と呼ばれてたおじさんが見繕って

くれた革鎧は、左胸。両肩。両手前腕。

両腿前部や両膝と言った、傷を受けると

戦いに支障を来す、或いは致命傷に

なりかねない部位を最低限守るための

物だった。でもおかげで動きやすい。


「どうかしら?サイズは?キツくない?」

「はい。むしろぴったりでちょっと

 驚いてるくらいです」

「そう。まぁ店長はこの道数十年の

 ベテランだからね。相手を見るだけで

 どのサイズが合うか大体分かるらしいわよ?」

そう言ってクツクツと笑みを浮かべるお姉さん。

やっぱりその道のベテランは違うって事か。

とか私は思いながら、鎧の感触を確かめた。


その後、動きを確かめてこれに決定した私は、

お姉さんから防具の装着の仕方のレクチャー

を受けた後、これを身につけたままお会計

を済ませた。合計で銀貨5枚、今の私から

したら結構な出費だけど、死んだらそんな

事も言ってられないし。


「あ、そうだ。そう言えばこの辺りで

 冒険者向けの道具を売ってるお店を

 知りませんか?薬草とか、毒消しとか」

「ん?あぁそれなら、店を出て左へ。

 少し行った所にそう言うのを売ってる

 店があるぜ。ウチと同じで冒険者が

 頻繁に出入りしてるから、行けば

 分かると思うぞ?」

「お店を出て左、か。分かりました。

ありがとうございます」

店長さんに教えて貰ったので、私は頭を

下げて店を後にしようとしたンだけど……。


「あぁ、嬢ちゃん」

「ん?はい」

呼び止められ、振り返った。


「まだ冒険者にもなってないお嬢ちゃんに言う

 のもあれだが、冒険者って奴はどうも危険

 を好む奴が多い。……そのせいで死ぬ奴

 もな。だからこそ忠告しておくぜ嬢ちゃん。 

 ……死ぬなよ?」


最後のその言葉には、どこかプレッシャーが

感じられた。でも……。

「分かってますよ。私だって、まだまだ

 死にたくありませんから」

私はまだ、この世界の事を何も見ていない。

だからこそ死ねない。そして当然の如く、

死にたくないって思ってる。

だからこそ……。


「だから生き抜きますよ。どんな事が

 あっても。どんなに無様でも」


少なくとも、今の私には前世には無かった

力がある。だからこそ、今度はあんな風に

簡単に死なないと思うし、そして、一度

死を経験した身としては、もう二度とあれを

味わいたくないって、思うから。


「く、くくっ!面白い嬢ちゃんだ」

すると、私の回答が面白かったのか店長

さんは笑みを浮かべていた。


その後、もう一度頭を下げて店を出た私は、

道具屋を目指して歩いていた。

「え~っと、冒険者が頻繁に出入りしてる

 って言ってたけど……。あっ」

しばらく歩いていると、私は店長さんの

言っていた店を見つけた。確かに、剣や

弓、防具を身につけた人が出入りしている。

道ばたから中を覗くと、お店の中には

これまた冒険者の人達が。どうやらここで

間違い無いみたいだね。


早速私は中に入り、陳列棚へ……。

ではなく、カウンターの方へと向かった。

幸い、会計の為に並んでる人はいないので

ちょうど良かった。

「あの~すいません」

「んぁ?あぁいらっしゃい。どうしたね?」

カウンターに居たのは、白髪に眼鏡を掛けた

60代くらいのおじいちゃん店員さん。

……風貌的に店長さんかな?とか思いつつ、

私は聞きたい事を聞いてみる事にした。


「すみません。実は私、近々冒険者に

 なろうと思ってまして」

「ほう?それで?」

「明日の試験なんですけど、どう言う物を

 持っていったら良いかとか、全然

 分からなくて。良かったら教えて貰え

 ないかな~と思いまして」

「成程。それでね~」


ここで私は、ある意味『石橋を叩いて渡る』、

みたいな事をした。理由は簡単。この

世界はゲームの世界じゃないから、リスポーン

なんてない。ゲームなら、必要な物が

無くて戦いに負けても前のセーブ地点や

チェックポイントから復活出来るけど、

当然この世界にそんなのはない。

同じように、こういうのを買え、とか言う

チュートリアルも無い。


だからこそどういった物を持っておけば

良いのか分からない。そして分からないから

ってスマホやネットで調べる訳にも行かない。

だったらどうするか。当然、聞くしか無い。

更に言えば、『餅は餅屋』って事で、アイテム

の事を聞くならアイテム屋と言う発想で

このおじいちゃんに聞いてみたのだ。


「そうさね~。新人さんが持ってくなら

 やっぱりポーションは基本だね。

 あとは解毒ポーション。人によっては麻痺

消しのポーションも買ってく人が

いるけど、セナーレの町の周辺に麻痺

の力を持った魔物は少ないから、こっち

 はいらないかねぇ」

ふむふむ。成程成程。ちなみにこの世界

では薬の事は大体ポーションと呼んでいて、

回復薬は普通のポーション。それ以外だと、

~~のポーションと言う。解毒薬を解毒の

ポーションと言う感じにね。


「あとはポーションがない時とか、怪我をした時

 に治療に使うために包帯。

 傷を洗ったりするのにも使える真水。

 長丁場のために干し肉みたいな携帯食。

 動物を倒した時に解体にも使えるナイフ。

 火をおこすのに使う火打ち石とかだねぇ」

ふむふむ。結構数あるね。となると、懐の

お金が心配だ。


「それを全部買うと、やっぱり高いですか?」

「まぁ別々に買うとねぇ。あぁでも、そんな

 お嬢ちゃんに良い物があるよ。

 ちょっと待っててね」

そう言うと、おじいちゃんはカウンターを出て

お店の棚の中から中くらいの箱を持ってきた。


「あの、これは?」

「こいつはさっき言った包帯やら真水の

 入った水筒なんかが入ってるものでね。

 冒険者セット、とか言って販売されてるん

 だよ。今の新人冒険者の大半は、まず

 真っ先にこれとポーションを買うね」

おぉ、セットになってるのか。それはありがたい。

「じゃあこのセットと、ポーションと

 毒消しのポーションを4つずつ買ったら、

 いくらですか?」

「あぁ、それなら銀貨3枚だね。

 ポーションも毒消しポーションも4個で

 銀貨1枚。こっちの冒険者セットも

 一つで銀貨1枚だから」

「分かりました。じゃあそれで買います」

「はい。まいどあり」


その後。冒険者セットとポーション、

毒消しポーションを購入した私は店を

出てセナーレの町を散策する事にした。

町の中は、そこそこの活気に溢れていた。

道ばたでは露天商が店をやっている。

そんな道を行き交う人々。傍目には、

何の変哲も無い、普通の平和な町だ。


でも、それは表面的なものだ。私がいま

居るのは大通り。そこから別れた細い

道の、建物の影には、明らかに貧しい

見た目をした人達の姿が見える。

恐らくは、物乞い。しかし誰も彼等に

見向きもしない。


そして、大通りから見える遠くの場所に

見える豪華な屋敷。多分、この町、

セナーレを収めている町長か、或いは

貴族か何かの物と思われる屋敷。


富を持つ者と貧しい者。表の皮を一枚

剥がせば、そこには格差がある。

そしてこの世界には、私の暮していた

日本みたいに生活保護なんて無い。


実力や金こそが物を言う世界。

弱者を守る行政なんて無い。

冒険があり、自由がある。だが、それは

同時に全てにおいて自己責任だ。

それゆえに、弱ければそれは自分のせいに

される。金が無ければ自分のせいにされる。


残酷なまでの世界。そしてそれは、私が

生きていた前世以上なのかもしれない。

魔物や盗賊という物理的な脅威。それらから

自分達を守ってくれる軍隊や警察組織は

この世界には存在しない。傭兵や冒険者、

騎士を雇って守って貰うと言う選択肢は

あるが、それが出来るのは金持ちだけ。


弱者に厳しい世界。それがこの世界だ。

……改めて私は、自分が今どんな世界に

転生したのかを理解していた。


冒険有り、危険有りのファンタジー世界。

そして、弱者が生きるには、残酷な世界

である事を。



その後、私は沈んだ気分を切り替える意味で

食べ歩きをしていた。露天商で売っていた

串焼きを何本か買ってそれを食べながら町を

歩いていた。その時だった。


「ハァ、どうしよう。お姉ちゃん」

「どうって、もうこれ以上お金を使う

 訳にはいかないでしょ?明日の試験で

 使う武器は、ギルドで買うしか無い

 のよ?」

ふと聞こえてきた会話。何やらギルド

とか武器とか明日の試験とかと言う単語から

もしかして、私と同じ試験受ける子?とか

思って周囲に視線を巡らせた。声から

して女の子かな?って思うけど。肝心の

声の出所は、あっ。あそこの路地からだ。


そっちへと向かい、角から中をのぞき込むと……。

「あっ」

「ん?」

そこに居たのはやっぱりと言うか、2人の

女の子だった。


しかも、容姿がそっくりな事から恐らく双子。

金髪ショートヘアの子と、金髪ロングヘアの子。

2人の金色の髪が、僅かな日の光を受けて

キラキラと輝いている。

でも、特徴的なのはそれだけじゃない。


オッドアイ。しかも2人の光彩が逆なのだ。

どういうことかと言うと、ショートヘアの

子は、左目が金色。右目が赤色。

逆にロングヘアの子は、左目が赤色。

右目が金色みたい。


金髪双子にそれぞれ逆のオッドアイとか!

なんとアニメ的な容姿っ!顔立ちも私なんか

と違って上の上って感じっ!これはあれ

だわ、アニメとかでヒロインになる子達だわ!

そんな子達と出会えるなんてラッキー!


とか思ってたんだけど……。

「……何見てんのよ」

ショートヘアの子が私をメッチャ睨んでる。

か、完全な威嚇状態だわ、これ。

「あ、え、えっと。ごめんなさい。話し声が

 聞こえたから、つい」

「あっそ。……じゃあ、さっさとどっか

 行ってくれる?」

そう言って私を睨むショートヘアの子。


性格キッツいなぁ。とか思って居た時。

『クゥゥゥゥ~~~』

どこからか可愛いお腹の虫の悲鳴が。

見ると、ショートヘアの子の後ろに

いた、ロングヘアの女の子が顔を赤く

しながらショートヘアの子の後ろに

隠れた。


もしかして、ショートヘアの子が姉

なのかな?

「ちょっ!?ウリエスッ!」

「ご、ごめん、お姉ちゃん」

あ~やっぱり、ロングヘアの子の方が

妹みたいね。しかし、お腹空いてる

のか。しかも妹ちゃん、ウリエスちゃん

の視線は私の手元にある串焼きの袋に

集中してる。


う~~ん。まぁ、いっか。

「あの、良かったらこれ、食べる?」

「「え?」」

私の言葉にシンクロして疑問符を漏らす2人。

う~ん、流石双子。

「い、良いんですか?」

妹のウリエスちゃんの方は喜びと戸惑いが

混じったような表情をしている。が……。


「結構よっ!」

それを制してお姉ちゃんの方が鋭い視線を

更に鋭くして私を睨んでいる。

「悪いけど他人の施しなんて受けないわっ!

 私達は、私達の力だけで生きていくっ!」


それは、まるで彼女自身が自分に言い聞かせて

いるようだった。私を、他人を頼るなと、

自分自身に必死に言い聞かせているようだった。

「下手な哀れみだけなら、今すぐ消えてっ!」

拒絶とも、懇願とも取れるその叫び。


お腹をすかせている彼女からすれば、今の

私の持っているこの串焼きが欲しい願望

と、それを求めてはいけないと言う理性が

せめぎ合う原因に違いない。その

大きな葛藤が、彼女にとっては苦痛に

なっているじゃないかな。


だったら……。

「じゃあ、哀れみじゃなかったら良い?」

「「え?」」

おぉ、再びハモる双子姉妹。まぁそんな事

は良いから。


「貴方達2人って、明日の冒険者になる

 ための試験、受けるんでしょ?」

「は、はい。そう、です」

「ウリエスッ!」

勝手に答えた妹ちゃんに声を上げるお姉ちゃん。

「まぁまぁ」

そう言って私が宥めようとするが、相変わらず

お姉ちゃんは鋭い視線で私を睨んでばかり。


「じゃあ試験の事も知ってると思うけど、

 試験の時には3人から4人でパーティを

 組むの。でも、私この町には昨日来た

 ばかりで誰も知り合いがいない。

 だから、試験をするときに周りで

 組める人が居ないか不安なんだよね」

「そ、それと私達が何の関係があるって

 言うのよ?」

「簡単だよ。もしもの時は私と

 パーティを組んで欲しい。それだけ

 だよ。そのお礼と言うか、前金と

 言うか。対価としてこの串焼きを

 2人にあげる。私は試験の時の不安を

 どうにか出来る。2人はこれが食べ

 られる。どう?お互いに利益がある

 でしょ?……それでもいらない?」

私の誘いに2人は顔を見合わせ、お姉ちゃん

の方は戸惑っている様子だ。

やがて……。


「……あとで返せとか言っても返さないわよ」

「言わないってそんな事。ほら」

そう言って私が袋を差し出すと、お姉ちゃんの

方がひったくるように袋を取り、ウリエス

ちゃんと一緒に中身を確認している。


確か、買い食いしようと買いすぎちゃった

からまだ6本くらい残ってたはず。

そして2人は、中の串焼きを見て目を

輝かせている。……どうやら相当

お腹が空いてたみたいね。


「それじゃあ、明日ね」

そう言って、私は踵を返して歩きだそうと

した時。


「『アリエス・フォーランド』」

「え?」

不意に聞こえた声に、私は足を止めて振り返った。

「だから、名前よ名前!知らなきゃ不便

 でしょ!」

顔を赤くしながら叫ぶお姉ちゃん改めアリエス。

おぉ、何というツンデレ展開。


「あ、えと、私は、『ウリエス・フォーランド』、です」

更に後ろに居た妹ちゃんもおずおずとした様子

で自己紹介をしてくれた。

アリエスちゃんにウリエスちゃんか。

「じゃあ私も。私はミハル・スプリングです。

 気軽にミハルって呼んでくれて良いから。

 よろしくね」

そう言って右手を差し出す。するとウリエス

ちゃんがおずおずとした様子で手を取ろうと

したけど……。


「握手なんかいらないわ」

それをアリエスちゃんが遮った。戸惑った

様子のあと、手を下げるウリエスちゃん。

「なれ合う気は無いから。あくまでも

 私達は貴女とお互いの利害が一致した

 からこうしてるだけだし」

ありゃりゃ、ちょっとはデレてくれたの

かなと思ったけど、この反応は。

まぁ仕方無い。


「えぇ。分かってる。それじゃあ、明日ね」

それだけ言うと、今度こそ私はその場を

後にした。



あの子達。見た目は綺麗系で、前世だったら

読書モデルとかでやっていけそうなくらいの

美少女達だった。……でも、他人に頼る事を

拒む姉。何かに怯えてばかりのような妹。

そして何よりも、お金に困った様子な事。


私は冒険者になるために、子供の頃から

コツコツとお金を貯めてきたからこそ

余裕がある。でも、あの2人はそうは

見えなかった。つまり、生きていくための

お金に余裕が無いのかもしれない。


そして、そこから思い出すのは、昨日

ギルドのお姉さんに聞いた、お金を稼ぐため

に冒険者になろうとする子供達の話。

あの2人、私より少し背が低かった。

多分、1歳か2歳くらい年下かもしれない。

16歳以下なら試験は受けられない。でも、

2人はどうしても冒険者になるしかない。

まぁ年齢の話は、あれくらいなら16歳って

偽っても大丈夫だろうけど……。


でも、裏を返せばそれって、年齢を偽って、

武器を買うために食事を我慢しなきゃ

いけないくらい、あの2人は追い詰められて

るって事だよね。


そう言う意味では、彼女達もまた、この残酷

な世界の被害者なのかもしれない。

そう思うと、ふと足が止まる。


彼女達には、他の選択肢なんか無い。

守ってくれる親も居ないのかもしれない。

頼れる人なんて居なかったのかもしれない。

だから戦うしかなかった。冒険者になるしか

なかった。


そうしなければならない。つまり彼女達に、

『選択の自由』は無かった。冒険者になる

事こそが、彼女達にとっての、たった一つ

の生きていける道なのかもしれない。


そんな彼女達の事を、助けたいって私は思った。

でも、あのアリエスって子はそれを拒んだ。

下手な哀れみって、言わば同情だよね?

でも、そう言うのを嬉しいと思う人がいれば、

疎ましく思う人もいる。多分彼女は後者なの

かもしれない。


それでも、彼女達の事を助けてあげたいって思う

私の思いは、偽善なのだろうか。


そんな答えの出ない考えを繰り返しながら、

私は宿へと戻った。


気分は良いとは言えない。

それでも、気を緩めるわけにはいかない。

なぜなら、明日は試験があるのだから。


     第2話 END


誤字脱字があれば、遠慮無く指摘お願いします。あと、もしよろしければ

感想もお願いします。めっちゃ励みになるので。

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