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転生のやり直しを要求します

神さまが引き起こした事故によって死亡した私は転生することになった。

小さな(体格の)女の子になりたいって要望を伝えたはずなのに、全く体形が変わっていないので、転生のやり直しを要求した。

言いくるめられたりしないんだから。


------------------------------------------


《え? やり直しスか…》


銀色のカラスに特段変わった様子はないけれど、そこから聞こえてくる検収の神なんたらの声は、イラっとした感情が含まれていた。


しかし、ユイとしてはやり直しについては正当な要求だと思っている。小柄な体型という大事な希望が実現されてないんだから。と


《「調整」でなんとかなるかもしれないでスし、まずは一緒に現状確認をしてもらえまスか?》


(お、上手に状況をコントロールしようとしてきた。言葉使いは気になるけど、仕事が出来そうな人だ。あ、いや、神さまか。ひとまずそこは安心だ。でも言いくるめられないように気をつけよう)


ユイは、神さまの言葉使いと自身の前世での年齢から、不遜にも神さまに対して上から目線の感想を頂いていた。


「わかりました」


《では確認作業をし、必要な調整をするっス。納得したら検収のサインをもらうっス。それで転生完了っス。それ以降はは調整出来ないっス。検収の神との会話も出来なくなるっス》


「…(おいおい、なんか釘刺しに来たよ)…」


《それと注意事項っス。検収が終わるまでこの世界に影響が出るようなことしないでほしいっス》


「影響?」


《物を壊したり、生き物を殺したりしないでほしいっス。多いのは誤って虫を踏みつぶしたりとか、まあ、ユイさんの場合は心配ないっス。そこで普通にしててください》


(なんか引っかかる言い方だなぁ。まあ心配ないって言うんだからいいかな)


《影響を与えてしまうと、この世界との因果ができてしまうっス。そうなると面倒っス》


(まじかー)


色々と思うところはあるが、どうしようも無さそうなので、ユイはカラスに頷いた。


《それではえーっと、ご要望は…小さくて速い女の子になって、剣で自分より大きな敵と戦う…年齢は20歳のころに若返らせる。でいいっスか?》


「そうだったかなぁ」


《間違ってます?》


「いや、大丈夫」


《それでは確認作業を始めるっス。まず、体の大きさは最小サイズということでしたね?》


「そう!それ大事」


(それが一番重要なんだよ。しっかりお願いしますよ!)


ユイはカラスに頼むような視線を送った。


《ご要望通りっスねー。よしっと》


「え?」


ユイは一瞬言葉を失って、自分が間違っているかのような錯覚に陥ったが、そんなはずはないと、思い直した。


(おい、今なんつった? 困るよそれ)


「いやいやいや、小さくなってないじゃん」


と抗議した。


《いいえ、大丈夫ですよ。最も小さいサイズになってるっスよ。次に速さはいかがスか?》


「大丈夫? え? 速さ?」


ユイは、神さまの『まともに取り合うつもりもないという姿勢』、彼女の知っているもので例えて言うならば、『交番の警察官が酔っ払いを相手にしているかのような対応』に、屈辱と若干の違和感を覚えた。しかし話を先に進められて、ついていこう必死になる悲しい組織人の習性も同時に働いてしまった。


《『速く』という要望は、戦闘の時に速く動きたいということでいいっスか? 体感では通常の3倍以上の速度で体捌きが可能になってるはずっス。戦闘中のつもりで動いてもらっていいっスか?》


戦闘中のつもりね。

敵を思い浮かべて、前後左右斜めに体捌きをしてみる。


「うわ。速い。すごい」


《大丈夫そうっスね》


「ふふふっ 通常の3倍、ぐふふふ、今日から私も彗星。」


《ツノも無いですし赤くも無いですけどねー》


今なんつった?空耳か?


《速さは問題なし。それから身体が小さくなってるんで、それによる速度上昇もしてるっスから、気をつけてくださいっス 。じゃあ、2番よし。次は...転生した時に刀は手元にあったっスか?》


「刀? ないけど? それより身体は小さくなってないでしょ?」


《小さいから大丈夫っスよ。じゃあ、刀が手元に出現するように念じてみてもらっていいっスか?》


「念じるってなによ?」


またしてもはぐらかされたが、ユイの興味は刀に移ってしまった。


《呼べばいいっス》


(え? ああ、潮くんの槍みたいな感じか! よし、)


ユイは左手の掌を思い切り天にかざして叫んだ


「刀よ来い!」


ユイの左手に一振りの太刀刀が現れた。


《…口に出す必要はないっス。ポーズもいらないっス》


(う。念じろって言ってたね、そういえば)


ユイは少し顔赤くしたが、それは恥ずかしさよりも刀に興奮してしまっていたことの方が大きいかもしれない。


「抜いてみていいかな」


《もちろんっス》


刃を上側にして袴の腰に刺して、太刀の方を抜いた。

ユイは思わず見惚れた。


《気に入ったっスか?》


刀を見つめたまま、うなずく。

刀の波紋の美しさに吸い込まれそうな感覚を覚えた。


《ユイさんは剣道の実力者だったので、剣ではなく刀にしたそうっス。性能もなかなかなもんらしいっス》


「性能?」


刀から目を離さずに尋ね返した。


《破損しても自然に修復するっス。召喚と送還も自由っス。あとこの刀の銘は、「強襲」っス》


え? それって…


《強襲には、セットの副武装として小太刀と十字手裏剣と、鎖鎌がついてくるっス。武器はこれでいいっスか?》


ユイは刀を納刀して送還した後、カラスに向かって頷いた。


《3番よしと。あとは、大きな敵っスが…、これはもうじゃうじゃいますから問題なしっと。4番よし。全部オッケーっスね》


「全部オッケーじゃないでしょ! 仕事出来る雰囲気だったのに、すっごいいい加減だなぁ」


《え?どういう事ですか?》


「小さくなってないでしょ?」


《なってんじゃないスか。一目瞭然っスよ?》


「どこがよ? こんな長い手足のまんまじゃん!最小サイズってお願いしたでしょ?どれだけ縮めたっていうの?1ミリ? 2ミリ?」


《1787.7ミリメートルっス》


「ほら、そんなの誤差みたいなもん…?今なんつった?」


《1787.7ミリメートル縮んでるっス。1818ミリメートルあった身長は、現在30.3ミリメートルっス》


「え?…センチで言い直してもらっても?」


《181.8センチメートルあった身長は、現在3.03センチメートルっス》


「さ、さ、3センチぃぃ?


《正確には3.03センチメートル、つまり一寸っス》


「いっすぅぅん?」


《歴代最小の人型生物は故一寸法師さんと同じ大きさっス。現在ユイさんが世界最小っス」


「え? 違っ、最小って、そ、そういう意味じゃない!

え? えぇぇえぇぇえ?」


ユイは驚き過ぎて言葉が上手く出てこなかった。


「小さくて…可愛らしい女の子に…なりたかった…んだけど?」


途切れ途切れだが、やっと思いが言葉になって出た。

カラスはそれを聞き取ってユイの心を読み取った。


《!…もしかして、体格を小柄とか華奢にしたかったんスか?》


ユイはその言葉にピンと来た。


「そう!それ!」


(やっと意思疎通が出来た。よかった。よかった。

さ、誤解があったってことで、さあ、やり直しましょう)


《それなら、なんで最小とか言ったんスか…》


(あ、この反応、これ駄目なやつだ)


《こちらとしては要望通りに》


「要望通りじゃない!」


ユイはかぶせ気味に叫んだ。


(まずい。このままでは逃げられる)


《最小になりたって言ったんスよね? 華奢とか小柄とか言って無いんスよね?》


(ぐぬぬぬ。まずい。私が悪いことになって切り上げられる。いや悪いかもしれないけど、認められないよ)


《ではこちらの検収書にサインをお願いするっス》


銀色のカラスが嘴を使って目の前に紙を差し出した。


「嫌。認めないよこんなの」


《いやいや、検収書にサインをするっス。俺も暇じゃないんスよ》


「嫌です」


《そうですか。あ、話の途中ですがキリギリスの登場っスね》


「キリギリス?」


《はい。ヒガシキリギリスのメス、体長3.5センチメートル、少し大き目っスね。ユイさんを敵と判断したようっス》


(なんだと?キリギリスだとぉ?)


ユイは地面を探した。


(3.5センチって大したことないじゃん。って違う違う。私より10%以上大きいよね。体感だと2m超のキリギリス…?)


今度は顔を上げて周辺を見渡し、大きなものを探した。


(って、いた! こっち見てる!)


「顔デカっ…」


キリギリスの大きさは、ハーレーダビッドソンのような大型バイクくらいだった。

ユイは睨み合ったまま後退りして、距離を取ろうとした。しかし、前に進んで間合いを詰められた。

もう一歩後退りした次の瞬間、キリギリスが縦にブレたように見えたら姿が消えた。


「そこかっ!」


背後に気配を感じて振り向いたら、本当にいた。


(瞬間移動? いや、飛んだだけ? こんな速いの?)


恐怖に駆られて叫びながら逃げ出した。


「や、」


《や?》


「やり直しを要求するぅぅ!」


《無理っスよ。検収お願いするっス》



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