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何気にあった辛い話  作者: ムスイ
1/3

~幼稚園編 1~

幼稚園くらいの頃でしょうか。

母は私に

『カミナリが鳴るとカミナリ様がヘソを取りにやって来るとよ』

などと言いう怖い話をしていたものです。


ま~よくある話ですね。

怖がらせて楽しんでいたのでしょう。


そんなある日のこと、母が近所の家に出かけました。

私は一人、家でお留守番。

そんなタイミングでおとずれてしまったんですよ。

そう『カミナリ』が。


私は焦りました。

『ヘソを取られる!!』と慌てふためきました。


恐怖におののき、家を飛び出し

母がいる近所の人の家に飛び込んで

そこにいた母に泣いて抱き着きましたね~。

怖くて怖くてたまらなかったからです。


そんな私に母もビックリして

『アハハ~、カミナリが怖かったとね。大丈夫よ。』

などと言って笑うわけなんですよ。


めでたし、めでたし・・・・・・・ではありません。




こうして聞くと子供時代の微笑ましい体験談に聞こえます。

しかし、それはとんでもない間違いというものです。


母は私に『カミナリ様はヘソを取る』と教えたんですよ。

『カミナリ様がヘソを取る』って、どういうことですかね?

私は具体的にこのようにイメージしていました。


・角や牙がある狂暴なカミナリ様

・指先には鋭い爪が

・その指で腹を『グシャリ!』と突き刺す

・そしてそのまま『ヘソ』をブチブチっともぎ取る

・舞い上がる血しぶき! 痛い! 苦しい! 死ぬ!


恐ろしい・・・メチャクチャ恐ろしいじゃないですか・・・。

想像を絶するほどの恐怖の存在ですよ『カミナリ様』って奴は。

こんな恐ろしいバケモノがこの世に実在しようとは・・・・・。

私は大変なショックを受けたものですよ。


そんなある日、突如『その時』は訪れてしまいました。

『カミナリ』が鳴り響き始めたんですね。

それはまさに『凶悪犯が脱走し野に放たれた絶望の合図』とでも言いましょうか。


『怖い』なんて生易しいものではありません。

むしろ『苦しまないように殺して下さい』と願わずにはいられないほどです。

まさに半狂乱としか言いようがない絶望的な恐怖に私はつつまれていました。


それでも私は信じていたのです。

きっと母が帰って来てくれる、と。

急いで帰ってきて、私を抱きしめて

家のどっかで一緒になって隠れてくれるものと信じていたのですよ。


ところが・・・・・帰って来ません。

二軒隣の家にいるはずなのに。

すぐに帰ってこれるはずなのに。


外には凶悪犯の『カミナリ様』がいるんですよ?

それなのに、それなのに、母は帰ってきてくれないのです。


私は狂ったように泣き叫びながら外に飛び出しました。

外には凶悪犯『カミナリ様』がいるのはわかっています。

バッタリでくわしたらムゴイ死に方をするのもわかっています。

しかし、母の元に走らずにはいられませんでした。

怖くて怖くてたまらないからこそ、母のそばにいたかったのです。

私はまさに命を懸けて母の元へ走ったのですよ。


そんな決死の覚悟を持ってやってきたというのに

母の第一声は『アハハ~』ですよ。

一体どこに笑える要素があったというのか。


この時、私の母に対する信頼が地に落ちたことは言うまでもありません。カミナリなだけに。




『小さい頃は神様がいて~♪』なんて歌があります。

しかし、それは大人の妄想というものですよ。


小さい頃には神様などいません。

いるのは『幽霊』や『バケモノ』のたぐいです。

子供は常に『恐怖』と戦っているものなんですね。


子供を無意味に怖がらせてはいけません。

あなたにとっては『冗談の恐怖』なのかもしれませんが

子供にとっては『本物の恐怖』なのですから。

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