11-4 いつもどおりのお昼の時間
「「「いただきまーす」」」
午前の授業が終わりお昼の時間。俺たちはいつものように机を移動させて島を作り、お弁当を広げていた。
「悦郎、からあげ1個くれ」
「なんかと交換な」
「じゃあそうだな……このチーズかまぼこでどうだ?」
「それなら3本だな」
「せめて2本」
「間をとって2.5本」
「仕方ない。チーズかまぼこ2本とこんにゃくゼリー1個でどうだ」
「よかろう」
取引が成立し、砂川はチーズかまぼこ2本とこんにゃくゼリー1つを俺の弁当箱のふたに差し出してくる。
そしてそれと引き換えに、からあげを1つおかずゾーンからつまんでいった。
中でも一番大きな個体を。
「てめっ! それ一番大きいじゃないかよ!」
「ふっふっふ。ブツを指定しなかったそちらのミスだ」
「くっ。確かに……取引自体に不正はない。だが……」
などと妙に演技っぽい口調で面白がっている俺の弁当箱に、咲の手でからあげが補給される。
「はいそこまでね。面白がってないで、お昼食べる」
「「はーい」」
そうして、いつもどおりのお昼が開始された。
俺と咲はいつもどおりの咲の作ってくれたお弁当。
麗美は藤田さんの作ってくれたケータリングっぽい持ち込みランチ。
砂川は学校のそばにある専門店で購入してきたいつもの美味そうなサンドイッチ。
そして緑青は……。
「じゅるじゅるじゅる〜」
「またそれ飲んでるのか。好きだな」
「これが一番手軽にエネルギー補給できる」
「固形物もちゃんと食べろよ?」
「朝と夜はきっちり食べるから平気。昼は眠くなるからこのくらいがちょうどいい」
「なるほどなあ」
食にはいろいろこだわりがあるらしい緑青。
とはいえ緑青が好んで飲むあのジュースだけは、どうしてもいただけない。
いや、不味いわけではないのだ。
ただ、甘すぎる。
「悦郎も一杯いっとく? 糖分の補給ができて、午後の授業も頭スッキリで受けられること間違いなし」
俺の視線をどう解釈したのか、緑青がオリジナルドリンク。グアバジュースのエナドリミックスを俺にもすすめてきた。
俺はブンブン首を振ってそれを断る。
「いやいい。それよりも俺は、普通の食事で栄養補給しときたい」
「そうか」
いつもどおりの咲の弁当で腹を満たしていく。
俺も甘いものは嫌いではないが、緑青のレベルには程遠い。
あいつと同じ味覚を楽しめるのは、俺の周りでは砂川くらいだ。




