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黒柳悦郎は転生しない 一学期編  作者: 織姫ゆん
十一日目
93/181

11-2 いつもと違う通学中の闖入者

 

「いってきまーす」

「はい、いってらっしゃい」


 いつもどおりの時間に、俺と咲が家を出る。

 この『いつもどおりの時間』は、もちろん遅刻しないで済む電車に間に合う余裕の時間のことだ。

 そうしてゆっくりと駅前に向かい、途中で緑青と合流する。


「おはよう、咲、悦郎」

「おはよう緑青」

「おはようちーちゃん」


 そのまま3人でいつものコンビニの前を通り過ぎ、駅の改札へと……。


「悦郎さんっ!」

「おわっ!」

「見ました? 見ました? 大発見なんですよ!」

「あはは〜、やっぱり来た」


 妙なハイテンションで唐突に俺の前に現れ、恐竜新聞と書いてある謎の業界紙のようなものを広げながら俺の前に立ちふさがる女の子。

 ちょっとだけ驚いたけれども、朝のニュースを聞いた時点でこうなるんじゃないかとは少しだけ思っていた。

 そして、咲も同じ意見のようだった。


「見てください見てください! ここに、今回発見された全身骨格の詳細記事が載ってるんです!」


 彼女の名前は常磐ときわ美雪。俺たちと同じ学校に通う、いち学年下の女子だ。

 自他ともに認める……というか、若干周りがひくほどのレベルの恐竜大好き少女で、何でも聞いた話ではそれ系の学者さんのところに押しかけ弟子入りしてしまうくらいにハマっているらしい。

 っていうか、なんでそんな子が俺に変なふうにまとわりついてくるんだろう。


「はいはい、わかったから。それよりも電車間に合わなくなるよ? 常盤さんも遅刻したくないでしょ?」

「あっ! そうでした! 今日は学校でした!」

「……」


 学校の成績はかなりいいらしいが、こうして若干抜けているところがある。

 天才によくありがちな、そういうパターンなのだろうか。


「でですね! でですね! 新発見についてなんですけど!」


 電車の中でも、常磐は話し続けた。


「これまで国内で発見された化石はですね、ほとんどが身体の一部分だけなんです! 一部分だけなんです! 揃ってても八割くらいで、残りの部分は想像で補ってたんですよ!」


 目をキラキラさせながら、自作の資料まで俺に手渡し懸命に説明してくる。

 いや、それはもう説明というよりは、プレゼンテーションといった雰囲気だった。

 もっとも、何のプレゼンなのかはまったくわからなかったが。


「ふふふ」

「今日もすごく熱心」


 そんな俺と常磐の様子を、咲と緑青が妙にほのぼのとした空気で見守っていた。


「でですね! でですね! 今回発見されたのは、なんと全身の骨格なんですっ!」


 かなり窮屈なラッシュの時間。

 それなのに楽しそうに話す常磐の声。

 いつもならちょっと大きな声で咲たちと話しただけで迷惑そうに見てくるサラリーマンたちも、なぜか今日は微笑ましげに常磐のことをチラ見するだけ。

 ぶっちゃけ恐竜の話はよくわからないが、こいつのこういう謎の能力だけは評価せざるを得ない。

 これも1つの人徳ってやつだろうか。


 ……違いそうな気がする。


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