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黒柳悦郎は転生しない 一学期編  作者: 織姫ゆん
十日目 調理実習
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10-1 いつもどおりだけどいつもとは違った朝食

 

 そしていつものように朝が来た。

 窓の外では小鳥がチチチとさえずり、枕元ではスマホがアラームをピピピッピピピッピピピッと鳴らしている。


(起きるか)


 アラームが鳴る直前にうっすらと目覚めていた俺は、そのまま意識を覚醒へと導いてベッドの上に上体を起こすと、枕元に手を伸ばしてスマホの画面をスライドし、鳴り続けるアラームを止めた。


「ん〜」


 両腕を天井に向かって伸ばす。

 肩の裏あたりの寝ている間に縮こまっていた部分が、ゴキゴキと小気味よく音を立てる。


「いよっと」


 伸ばした腕を後ろに振り下ろし、その勢いで身体を振り子のようにしながら反動を利用して素早くベッドから降りたりしてみる。


「うん。なんか今日は活動的だ」


 スタスタと窓に歩み寄り、カーテンを開ける。

 その向こうに広がる青空……は、咲の家で遮られて見えないが、顔を傾けるとうちと咲の家の隙間からスッキリと晴れた青空が目に飛び込んできた。


「昨日とは打って変わっていい天気だな」


 視線を正面に戻すと、すでに咲の部屋はもぬけの殻になっていた。


(もう起きて朝食の支度してるのかな。そういえば、今朝もまたあの魚だって言ってたような気がする)


 うちのかーちゃんの妹の竜子さんがおすそ分けで持ってきてくれた、名も知らぬ立派な魚。

 釣りマニアの竜子さんの旦那さん、つまり俺のおじさんが何匹も釣り上げて来たらしい。

 竜子さんのところは小さい子供が一人。確か名前は虎太郎くん。

 あの大きな魚を何匹も持って変えられてもそりゃあ困るだろう。

 対してうちは、家にはかーちゃんと俺しかいないけれども、食べるメンツとしてはかーちゃんのところの寮がある。

 近所に置行堀部屋って相撲部屋があるけれども、町内ではそこと双璧と言われるくらいうちは食べる量が多い。

 商店街ではいいお客さんだと思われているくらいだ。

 となれば当然、うちに持ち込めば食べ切れない食材は美味しく頂いてもらえることとなる。

 うちもありがたいし竜子さんのところもお魚を無駄にしないで助かる。

 つまり、ウィンウィンってやつだな。


「おはよ〜、起きてる〜」

「おー、起きてるぞー」

「朝ごはんの支度できたから、着替えて降りてきてね〜」


 なんて、どうでもいいようなことを考えていたら、咲が部屋の扉をノックして呼びかけてきた。

 朝は時間が経つのが早い。

 俺は、余計なことを考えるのを終わりにしてパジャマ代わりのジャージを脱いで着替え始めた。


 *    *    *


 朝食には予想通り、昨夜の魚の残りがアレンジされた料理が出てきた。

 セビーチェだかセビージャとか言う、南米風の料理らしい。

 昨夜ネットで調べてチャンレンジしてみたのだとか。

 よくわからないけど、まあとりあえずは美味かった。

 ただ、朝食としてはどうかと思った。

 それをストレートに咲に言うと、本人にもその自覚が多少あったのか、苦笑いで返された。

 なんでも、ちょっと前にレシピを見かけて、あの魚を見たときにどうしても作りたくなってしまったとか。

 まあ、美味かったからいいんだけどな。




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