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黒柳悦郎は転生しない 一学期編  作者: 織姫ゆん
九日目 雨の日
78/181

9-5 いつもどおりの午後の授業

 

「と、ここまでが薔薇戦争が起こった経緯ね。なにか質問のある人ー」


 午後の授業は世界史だった。

 世界史担当の田町ぼたん先生が、小さな身体を精一杯伸ばして黒板の上の方までみっちり板書している。

 ぼたん先生は、みどり先生とはまた違った意味で人気のある先生だ。

 みどり先生は生徒たちから人気だが、ぼたん先生は保護者の人たちから絶大な人気を誇るらしい。

 といっても、授業が丁寧とか進路相談が的確とか、そういう理由ではない。

 その理由は、『なんだかもうひとりの娘みたいだから』らしい。

 正直それを聞いたとき、俺はちょっとだけ頭が痛くなった。


(先生捕まえて娘みたいはないよなあ。まあ確かに、ぼたん先生はちっちゃいけどさ)


 俺たちの中で一番背の低い緑青。

 クラスでは、藤黄あたりも同じくらい小さい。

 それでも全校生徒が集まれば、下級生にはもう少し小さい子が両手では数え切れないくらいには存在している。


(来年の同じころにはきっと抜かれていそうな気もするけど)


 そして、そんな緑青よりもぼたん先生はさらに小さい。

 もちろん小さいことは悪いことではないが、先生という職業においてはちょっとばかりマイナス要素になってしまうことは否めない。

 なにしろ、先生っぽさがかなりなくなってしまうからな。


「はーい」

「はい桑染さん。またなにかマニアックな質問ですか?」


 ぼたん先生の問いかけに、クラス四大歴女の1人である桑染が手を上げた。


「先生の怖い話が聞きたいです」

「またですかー」


『またですかー』と言いつつも、ぼたん先生は嬉しそうに笑っている。

 というのも、ぼたん先生は怖い話……というか、怪談とかオカルトとかそのたぐいのものが大好きなのだ。

 うちのオカルト研究部も最初はぼたん先生が顧問をしていたんだけど、あまりにガチすぎてみどり先生に代わってもらったという経緯があるらしい(俺たちが入るよりも数年前の話だ)。


「じゃあですね、薔薇戦争にちなんで、イギリスで実際にあった怖い話です」


 声を潜め、雰囲気を出しながら怪談話をはじめるぼたん先生。

 空気を読んだ窓側の生徒たちが、次々とカーテンを締めていく。


「みなさんはイギリスと言えば、ひとつの国だと考えがちだと思いますが、実際にはいくつかの国の連合王国です。これは、その中のスコットランドとイングランドの国境付近にある、ある古城でのお話……」


 薄暗い教室の中に、ぼたん先生の声だけが静かに響いている。

 朝に比べればだいぶ弱くなったが、いまだにシトシトと振り続ける雨の音が、さらにその雰囲気を盛り上げる。

 怖い話があまり得意ではない咲は、その両耳を塞いでいた。


 雨の日の午後の授業は、こんな感じでやや脱線しながら進んでいった。




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