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黒柳悦郎は転生しない 一学期編  作者: 織姫ゆん
八日目 見知らぬ街へ
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8-4 いつもと少し違う土曜の昼食

 

「めーしー」


 美沙さんと筆頭に、寮の人たちがゾロゾロとうちのリビングにやってきた。

 女性とはいえ体格の大きい人が多いので、すでにリビングはすし詰め状態だ。


「はい、みなさん紹介。この子が、これから食事当番になってくれる鈴木すずめさんです。彼女は学生さんなので、土日に通ってくれます。来週の平日当番の方は、あとでいろいろ話し合っておいてください」

「よろしくお願いしますっ」

「「「よろしくっ!」」」


 ペコっと頭を下げる鈴木さんに、レスラーのねえさん方が声を揃えて返事を返す。

 意外に野太い声が多いのは、やっぱり鍛えてるからだろうか。

 っていうか本来一番下っ端なはずの美沙さんが、一番偉そうな顔をしてるのはなぜだろうか。

 かーちゃんのお気入りだからか?

 いや、そういう贔屓みたいのは嫌うよなかーちゃんも美沙さんも。

 まあ、そういうキャラなんだろう。

 いるよなよく。なんか偉そうなのに、妙に上の人たちから好かれるヤツって。


「今日は最初ということなので、作りやすい鍋にしました」


 ちらっと視線で咲が俺に行動を促す。

 俺は小さくうなずき、キッチンから鍋を運んでくる。


「「「おー」」」

「「「美味そうな匂いっ」」」


 ねえさん方の反応はいい感じだ。

 まあ確かにいい匂いはしてる。

 鍋を運んでる俺の腹も、グーッと鳴り出したくらいだ。


「よーし、それじゃあみんな作ってくれたすずめちゃんと咲ちゃんに感謝しながら食べるよ」

「「「うっすっ!」」」


 かーちゃんが音頭をとり、ねえさん方がそれに続く。


「いただきますっ!」

「「「いただきますっ!!!」」」


 ガツガツとすごい勢いで鍋の中身が消費されていく。

 それを嬉しそうに眺めている咲と、驚きの表情を浮かべている鈴木さん。


「すごいでしょ」

「はい、びっくりしました」

「いつも大体こんな感じだから、すぐに慣れると思うけど」

「でも、いいものですね」

「ん?」

「自分の作った料理を、あんな風に美味しそうに食べていただけると」

「でしょ?」

「はい」


 鈴木さん、最初は料理当番ということに少し抵抗を感じていたみたいだったが、今ではそこに喜びを見出したみたいだ。

 まああとはかーちゃんの手綱さばき次第だろうな。

 あれでいて意外と名伯楽らしいし、俺が心配するようなことじゃないだろう。


「って、そういえば俺たちの昼飯は?」


 鍋の中身は、あっという間に空になっていく。

 かーちゃんたち用のかなり大きな鍋なのだが、それでもねえさん方にはやや物足りなさそうだ。


「ちゃんと取ってあるから大丈夫。じゃあ鈴木さん、私たちは向こうでいただきましょ?」

「はいっ」


 どちらかと言えば小柄な方に入るであろう鈴木さんが、咲と一緒にキッチンへと向かう。

 その後ろをついていく俺。

 あの小柄な身体でレスラーになりたいとは、見た目以上にガッツのある性格なのかもしれないな。


「……」


 とか思ったけど、よく考えたら俺の周りのちびっこ連中って、みんなそんな感じじゃないか?



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