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黒柳悦郎は転生しない 一学期編  作者: 織姫ゆん
六日目 咲が風邪をひいた
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6-6 いつもどおりを守りたい放課後

 

 放課後。俺たちはオカルト研究部の部室に集まっていた。


「というわけで作戦会議だ」

「なにがというわけなんだ、クロ」

「いやいや、聞いてるでしょ洋子先輩。査察が入るらしんですよ、生徒会の」

「は?」


 すでに説明していたつもりだったが、どうやら洋子先輩には誰もあのことを伝えていたなかったようだ。

 俺は改めて先輩に、生徒会が予算削減のために部の団体数を減らしたがっているという話を伝えた。


「ってことはなにか? アイツら、私のオカルト研究部を潰そうってつもりなのか?」

「いやまあ、査察の結果によってはそうなることもあるかもしれないってくらいで。っていうか先輩のじゃないし」

「ったく……ろくでもないこと考えやがるな」

「でも向こうの考えてることもわからなくもない。うちの学校、部の数多すぎ」

「まあなあ……私も知らないようなのたまに見かけてびっくりするときあるもんな」


 聞いた話によれば十何年か前の生徒会がガバガバの審査体制で、書類の数さえあっていればどんな部の設立ですら許可してしまった時代があったのだとか。

 そのときに膨大な数の部が生まれて、それ以来ダラダラとその状態が続いている。

 もちろんその中には休眠状態が生徒会に把握されて、調査の結果廃部になった部もそこそこ存在する。

 部設立のための審査もガチガチに厳しくなり、新しい部を立ち上げたり同好会を部に変更したりするのもかなり難しくなったとか。

 生徒会の方にしても、おそらく今回の査察というのは最終手段に近いのだろう。


「で、どうするんだ? うちの部はその査察とかいうのをされても平気なのか?」

「私は大丈夫だと思ってる。毎日ではないとはいえ、こうやって部室に集まったりもしてるし」

「緑青はそう言ってるけど、お前はどうなんだクロ」

「俺も大丈夫だとは思いたいけど……」


 もし生徒会がチェックするのが、活動しているか否かだけだったらたぶん大丈夫だろう。

 洋子先輩がバイクの鍵とヘルメットの隠し場所にしているおかげで、この部室には毎日誰かしらが来ている。

 帰りに俺たちが寄ることもあるし、洋子先輩が1人でくつろいでいることもある。

 あと俺は会ったことないけれども、秋彦先輩という人もいる(らしい)。

 同人誌とかいうのを書いている漫画描きらしく、資料目的でうちの部に入ったとか。

 極端な人見知りで、部室に人がいないときだけ来ることにしているとか。


(謎すぎる……まあ、オカルト研究部っぽくていいとは思うけど)


「なんだ? クロは不安なのか?」

「うん。確かに、人の出入りはあるよ、うちの部は。でもそれ、オカルト研究部とはまったく関係ないよね」

「ああ……そういうことな」

「そこまでは調べない……と、思う」

「言い切れるのか、緑青。相手はあの七瀬だぞ?」

「うっ……」


 生徒会長の七瀬真朱。香染の繋がりで、何度か顔を合わせたことはある。

 というか、今日の午前中も体育の授業で一緒だった。

 話はほとんどしたことないけれども。

 噂ではかなり真面目で、ルールを厳密に守らせたがるタイプとのこと。

 よくそれであの香染と付き合えているなとは思うが、だからこそ逆にお目付け役として香染のそばを離れられなくなっているのかもしれない。

 それに、あの2人は俺と咲のような幼馴染同士だとか。

 もしかしたらそのせいで、七瀬はそんな性格になったのかもしれない。

 破天荒な香染の面倒を見続けている間に、ルールの重要さを身にしみて憶えた……とか。


「確かに……あの子は手強いタイプ」

「だろ?」

「でも悦郎さん。なにかアイデアがあるって言ってましたよね?」


 それまで黙って俺たちの話を聞いていた麗美が、会話に参加してきた。


「ああ。アイデアってほどでもないけどな。七瀬本人にどうこうじゃなくて、七瀬にわがままが言えるようなヤツと取引ができるかもしれないなって思って」

「七瀬さんにわがまま?」

「おい、話が見えないぞ。ちゃんと説明しろ」

「ああ、はいはい。洋子先輩にはわかりづらかったですね。実は、ここ最近……」


 俺は洋子先輩に、麗美と香染、七瀬の話をする。

 麗美を引き抜きに来たアイドル研究部の香染。

 その香染のお目付け役の七瀬。

 そして、そんな香染の興味を引くことができそうな、ある地下アイドルの話。


「ふむ……つまり、そのハチャメチャ娘をコントロールして、生徒会長から有用な話を引き出そうってわけだな」

「まあ、査察をクリアするにはどうしたらいいのか的な条件を聞き出すくらいでしょうけどね、できるとしても」

「しかしそれでも、それを知らないと知ってるじゃまるっきり変わってくる」

「うん。テスト前に範囲を知ってるかどうかと同じくらい」

「さすがです悦郎さん。それを聞き出すことができれば、きっとオカルト研究部は大丈夫ですね」

「ああ」


 こうして咲のいない放課後、俺たちはオカルト研究部の今後について話し合った。

 もちろん、そのことについてはあとで咲に報告するけれども。



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