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黒柳悦郎は転生しない 一学期編  作者: 織姫ゆん
二日目 カレー
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2-5 いつもどおりじゃない体育のあとのニオイ

 

 体育の授業が終わり、俺たちは教室へと戻った。


「くんかくんかくんか。うーん、まだちょっぴりカレーの匂いがする」


 鼻をヒクヒクさせながら着替え始めた俺に、砂川がコロッケパンをモグモグしながら近づいてきた。


「この組み合わせ、なかなかオツだよ。まるでコロッケカレーを食べてるみたい」

「体育のあとはやめろ。見てるだけで胸焼けする」

「動いたんだからエネルギー補給しないと」

「お前ホント燃費悪いよな。いや、いいのか? 食べたのがすぐエネルギーになるんだから」

「どっちでもいいよ。僕は美味しいから食べてるだけだし」

「さいですか」


 カレーの匂いがうっすら充満していた教室の匂いに、体育の授業のあとの男子の汗とホコリの匂いが混じっていく。


「しまった、これがあったか」


 男女別の体育の授業。

 着替えの方も、男子と女子では別だった。

 男子は教室で。

 女子は更衣室で。

 気を遣わなきゃいけないものがいろいろあるから、その区別は当然のことだとは思うけど、今日のところはそこが問題だった。

 あのカレーの匂いのする教室で、体育のあとの男子が着替える。

 そうなれば当然、その匂いが混じってしまうわけで……。


「違うぞ悦郎。それだけじゃない」

「え?」


 ツナサンドをモグモグと頬張りながら、砂川が指さした。

 すると、その先では……。


「ちょ、おまっ! 今日はそれダメっ!」


 プシューッと制汗スプレーを盛大に使う一人の男子生徒。

 いつもならそれほど気にならないフレグランスな香りが、今日は微妙に癪に障る謎の合成臭となって鼻に突き刺さってきた。


「うううっ。さらに臭いが混じっていく」


 カレーと汗とホコリと制汗スプレーの香り。

 それらが絶妙なケミストリーを生み出すはずもなく、俺たち男子生徒は鼻を摘みながら窓を全開に開けた。


「悪い悦郎」


 制汗スプレーを使ったバスケ部の近藤が謝ってくる。


「いや、お前は悪くない。俺たちも気づかなかったからな」

「グラウンドに出る前に窓を開けて行けばよかったな」

「ああ」


 砂川と二人、窓から身を乗り出しながら深く呼吸をする。

 周りを見ると、俺たち以外のクラスの男子も、窓から身を乗り出すほどのことはしていなかったが、それにほぼ近いことをみんなしていた。


 そして、しばらくして女子が着替えを終えて戻ってくる。


「うっ……なんか……いろいろ混じったニオイ……」


 咲が眉をしかめ、匂いと表現するか臭いと表現するかで迷っているような顔で俺たちのことを見てきた。


「まあ、そう言うな。こっちもいろいろあったんだ」


 教室に女子が増えてくるにつれ、さらにニオイは複雑になっていった。

 ほぼ制汗スプレー一択の俺たちに比べて、女子はさらにいろいろな種類のニオイ対策をしている。

 それらがまだ少し残っていたカレーの匂いや、俺たちの汗やホコリの臭いを駆逐していく。

 そして、少しずつだがマイナス方面のバッドスメルの要素が減っていった。


 休み時間が終わり、みどり先生が教室に来るころにはほぼニオイの問題は解消されていた。

 俺の机の周りは、まだほのかにカレーの匂いが漂っていたけれども。




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