表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/33

第10話【異世界転生】

 意識が浮上すると俺は瞼を開けた。

 長い間、眠っていたかの様に頭が重く、俺は頭を支えながら上体を起こす。


 相変わらず、白い世界を見て、病院かと勘違いしそうになる。


 ーーと、そこまで考えて、俺は自分の手に気付く。


 俺はその手を開いたり握ったりすると改めて、素っ裸の自分の身体に視線を移す。


 これが肉体の再構築って奴か……。


 自分の身体じゃないかの様な錯覚を受けるな。


「目が覚めましたか、ツキオカさん」


 俺は此方を見るガブリエルに気付き、視線を移す。


「頭が重い。違和感もある」

「再構築した脳とリンクするのに時間が掛かっているのでしょう。

 しばらくすれば、治まる筈です」


 ガブリエルは俺にそう告げると俺が生前に着ていた衣服に似た物を用意する。


「体調が回復したら、これに着替えて下さい」

「……ああ。解った」


 俺はガブリエルに頷くと意識が肉体に馴染むのを待つ。

 そんな俺の横にガブリエルがちょこんと座る。


「今の内に私達の世界について、お話しても?」

「ああ」


 俺が頷くとガブリエルは静かに話し始めた。


「私達の世界は今、魔王により支配されています。

 地上で住む人々は服従するか、全滅するかのどちらかしかありません」

「難しいとは思うが、和平は?」

「実質、不可能に近いです。

 そもそも、人々にその様な選択をする余地も与えぬ程、進行されているのです。

 このままでは黙示録が起こるのも時間の問題でしょう」

「黙示録?」

「天使と悪魔による最後の戦いです。その場合、地上のありとあらゆる生命が死滅するでしょう。

 それはなんとしても避けたいのです」

「そうか」


 俺はガブリエルの言葉を聞きながら立ち上がり、衣服を着る。

 ガブリエルの世界の現状が、切羽詰まっているのは把握した。

 

 ならば、俺のすべき事はその現状を打開する事だろう。


「それだけではなく、人間には強欲なーー野心を持つ王がいるのです。

 訳あって私達はその王の言う通りに別の世界の人間を送らねば、なりません」

「理由は?」

「私の半身が人質にされているからです。

 その王ーーアイン王は民を虐げつつ、私の半身を人質にして民衆の反乱が起こさぬ様に領地を支配しています。

 ツキオカさんはまず、アイン王の毒牙に掛からない様にご注意下さい」

「ああ。解った」


 俺がそう告げると同時に眼前に黒い穴が突如、現れる。

 その縁からは不気味な黒いワカメの様な無数の手がユラユラと揺れていた。


「これは?」

「強制召喚時の儀式によるゲートですね。

 本来はその黒い手が強制的に相手を引きずり込みます。

 ですが、ツキオカさんは此方の世界の一部となりましたから、その強制力はありません」

「もし、俺がこいつに入らなかったら?」

「別世界の誰かが無作為に召喚されます」


 俺はその言葉を聞いて意を決する。


 ーーこれは最早、入る他ないだろう。


「世話になったな、ガブリエル」

「覚悟はお決まりですか?」

「ああ」

「でしたら、助言を……私の石像と使徒を探して下さい。

 必ず、ツキオカさんの力になるでしょう」

「石像と使徒だな?……解った」

「御武運を、ツキオカさん」


 俺はガブリエルにサムズアップするとそのゲートとやらの中へと飛び込む。


 ゲートに飛び込むとその眼前に女性が立っていた。


「うおっ!」

「きゃあっ!」


 勢い良く飛び込んだ俺はその女性とぶつかると二人して転倒する。


「ーーっと、失礼!」


 俺は素早く起き上がるとゲートの方を振り返った。

 ゲートは俺を呑み込んだ為か収縮し、やがて消える。

 俺はそれを確認するとぶつかって転倒させた女性に向き直り、手を差し出す。


「怪我はないか?」

「あ、はい。大丈夫です」


 彼女は俺の手をおずおずと取る。


 よく見れば、女性はガブリエルが大人びた様な姿をしていた。


 もしや、彼女がガブリエルの半身なのか?


 そう思っていると鉄の仮面を着けた鉄の鎧と赤いガウンを羽織る男がやって来る。


「ようこそ、異世界の勇者よ!

 私はこの城の主である鉄のアイン。

 アイン王と呼んでくれれば良い」


 こいつがアイン王か……。


 成る程、確かに野心に満ちた眼をしているな。

 友好そうな態度とは裏腹に密かに此方を品定めしているのも解る。


「そう警戒する必要はない。君は選ばれたのだ。この世界を救う為にな」


 その言葉に俺はスイッチを切り替え、友好的な態度を取る。


「月岡です。俺が勇者なんて光栄ですよ」


 俺はそう言ってアイン王と握手を交わす。


「ツキオカよ。この様なカビ臭く、薄暗い部屋ではなんだ。

 まずは話の出来る場所へと参ろう」


 アイン王はそう俺に言うとガブリエルに似た女性に視線を移す。


「リエル殿。休息を与える。しばらくは自室で休まれよ」

「……かしこまりました」


 リエルと呼ばれた女性はアイン王にこうべを垂れると俺の事を一瞥だけして、その場を後にする。


「では、我々も参るとしましょう」

「ええ。お願い致します」


 俺はアイン王に丁寧に返すとリエルと同じく、部屋を後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ