皇子と初顔合わせ
パーティが始まった。
ダンスの時はパットがズレない様に気をつけなきゃだね。叔父様が私をダンスに誘ってくれた。
「ドレスがとても似合っているよ。会場で一番輝いているよ」
「胸のパットが気になって仕方ないわ」
「直ぐに成長するさ。今は我慢しなさい」
無事に叔父上とのダンス終え、今度は皇子とのダンスだ。
「あはは。馬子にも衣装とはこの事だな」
「それは否定できませんね。馬術や柔術に明け暮れてる方が好きですので」
「ほう、私も柔術は得意なのだ。今度お相手願いたいものだ」
「それはぜひとも。あなたのせいで私が外出禁止にされた時から投げ飛ばしたい気持ちで溢れております」
「それは、悪かった。対策を考えておくよ。お手柔らかに頼む」
「私が贈った人形はどうしたのかな?」
「あれは、捨て…いや…盗ま…いや、きっと小さな女の子の手に渡り喜ばれているでしょう」
「やっぱり、気に入られなかったのか?当然そうだろうな。我が国の風習でな。失礼な事をした」
「とんでもない。私の方こそ、申し訳ない気持ちです。すみません」
「落ち着いたら、テラスの向こうで話そう」
今日は招待客も控えめで落ち着いた雰囲気だね。ゆったりしよう。普段は、パーティで食べられないけど、今日は良いよね。きっと私のためにケーキを沢山用意してくれたに違いない。
テラスで待っていると皇子が約束どおりやって来た。
「待たせてしまったかな?」
「いえいえ、ケーキを食べておりましたので」
「君は興味深い子だな。言葉を飾らない。素直なのかな。じゃあ、僕も素直に言うが、国益を鑑みた場合、君との婚約話が出るのは至極当然だと思っている」
「私も王族の端くれゆえ、理解出来ます」
「君に迷惑をかけたのは僕の本意ではない。すまない。僕の希望は、君に僕の事を知って欲しいし、僕も君の事を知りたい。お互いがお互いを理解した上で話が進んだら良いと勝手に考えているんだ」
「それは私があなたに好かれなかったりという事態も想定出来るという事ですね」
「それより、お互いの国の情勢などいつ変わるかわからない。恨みっこなしでどうかなって提案だよ」
「その考えに激しく同意します。あなたはなんて素敵な人でしょう!」
「君は言葉の使い方間違っていると思うよ」
「では、お互いを知る第一歩に柔術で戦いましょう。後から、とんだお転婆娘だって言われたくないですもの!」
「それは構わないけど、やるからには手を抜かないよ。ドレスで大丈夫?」
「私が言い訳などすると思って?いざ!」
私は、皇子の懐に飛び込み遠慮なしに背負って投げた。恨みっこなしだよ。さっき自分から言ったんだから、ちょっと意味が違うけど。
驚いた事に皇子は空中で身体を反転。地面に着地したと同時に今度は腰で私を投げた。ドレスのスカートが大きく空中で舞う。ドレス姿で投げられたのは、世界で私ひとりに違いない。
「痛ぁあ!」
「大丈夫ですか?貴女の技が見事過ぎてつい、反射的に本気で投げてしまいました」
「あはは。本気で負けたわ。清々しい気分です。もっと強くなったらまた勝負してください。次は勝ちたいです。ちょっと悔しいです」
「次はドレスじゃない方がいいかもですね。それと…」
「まだ、闘うのですか?」
「いや。その。ちょっと胸のパットがズレていますよ」
しまった。国家の極秘事項を他国の王族にバレてしまった。
「オホホホ。では、御機嫌よう」
私は何事もなかった様にその場を去った。恥をかいたわ!次は絶対に仕返ししてやるんだから。
「くくっ。面白い。あんな王女は他にはいないぞ!実に愉快だ。公爵殿!あの娘がご自慢の姪なのですね。わかる気がします」
「まさか、本気で投げるとはヒヤヒヤしました」
「私も黙って投げられるつもりだったのですが、技のキレが素早く、手を抜くスキが出来なかったんですよ。そう言った意味でも王女は面白い娘だ」
「リリスは、真っ直ぐな良い子です。私はあの娘の幸せをただただ祈るのみ。このまま、真っ直ぐ生きてもらいたい」
「殿下のお気持ちはお察し致します。確かに変に染まって欲しくないものですね」




