ヤコブ 保釈
「宰相!どうしよう。困ったのよ」
私と宰相は、人払いをして相談している。
「それは、王女の身から出た錆び。ご自分でどうぞ」
(今なら、容赦なく宰相を投げられるわ)
「シンジケートの組織は他国の人がメインで動かしている。これは国際問題よ。宰相の出番。なんとかしなきゃだよ」
「それをある国ではキラーパスと呼んでいます。無茶ぶりしないで頂きたい」
「エリナも攫われたのよ。どうしよう」
「それは王女にも責任があるのでは?実際にその物凄く強い剣士とやら、我が国の精鋭部隊でもどうにかなる問題なのですかね?それが出来れば、私がとうの昔にやってます」
「じゃあ、私一人で死んで来いって?宰相は鬼だね。投げちゃうぞ!」
「エリナ様をさらった理由を考えましょう。まず、傷付けない様にさらった訳ですから、焦る必要はありません。相手の狙いは王女でしょう」
「それが問題よ。私は、いち乙女よ」
「状況から判断すると王女とエリナ様が組むと敵に都合が悪いのでしょうね。闘うより先にエリナ様の救出を主に考えてみてはいかがでしょう」
「私の国に暗殺部隊とか秘密部隊とかないの?」
「この国は平和で良い国です。不要です。それも先代の国王のおかげ。王女も少しは見習ってください」
「ちっ。使えないわね!宰相なんだからそれくらい用意しておきなさいよ!」
「王女。今、ちっ てしましたね!」
「じゃあ、宰相の名を使って勝手に動くからね。文句あるなら投げるわよ」
まずは、敵の情報が欲しい。私が捕まえた中ボス達に聞いてみよう。どうなってるかな?どうせ、取り調べも進まないし何一つ喋ってないんだろうな。
私は地下にある牢に向かった。牢番に宰相の許可を得ている事を伝え、最初に捕まえたヤコブに会う。
「元気?」
「お、おまえは!」
「私はこの城の住人だよ。貴方を逃がすことだって出来るんだから!」
「どうせ、ただじゃ逃がさないんだろ。けっ」
「そりゃそうよ。貴方に襲われたら勝てないもの」
「よく言うぜ。おまえなら軽く避ける筈だ」
ヤコブは思ったより元気そうだ。もっと酷い拷問とかしちゃえばいいのに。
「実はさ、最近プラドと仲良しになったんだよ」
「ん?プラドって俺の同胞のプラドか?」
「そう、貴方と剣の使い方が同じだったから本人に知り合いか聞いてみたんだよ」
「そうか。アネさんは元気なのか。怖い人だろ」
「怖いよ。この前なんか、血だらけだったよ」
「アネさんらしい。元気で良かった。で、俺になんのようだ」
「組織の5人の内、4人は運良く捕まえたんだ。ボス達の話によると剣士はとてつもなく強いらしくて困ってるんだ。勝つ方法ないかなって思って教えてもらいに来た」
「ああ、あの人に勝つのは無理だ。まったく次元が違う」
「せめて、エリナだけでも助けられたらいいのに」
「エリナ様だとぉ。それは何が何でも救い出せ。俺らの女神だ」
「エリナが女神?ないない。ぽちゃだし」
「おまえ、失礼にもほどがあるぞ。」
「じゃあ一緒に助けに行ってくれる?貴方の大好きなアネさん連れてくるから」
「は?俺を勝手にここから出して良いのか」
「それはプラドが判断する。貴方がエリナを助けたいって気持ちがどれ程のものか。」
「エリナ様は俺の手で救いたい」
「組織の仲間を裏切ることになっちゃうよ。剣士と一緒に斬りかかって来たら嫌だし」
「俺はエリナ様の絶対的な味方だ。それだけは信じてくれ。おまえがエリナ様の味方であれば俺も味方だ。」
「組織の一番強いボスに剣を向けられる?」
「エリナ様に忠誠を誓う」
「じゃあ一緒にプラドの元へ行こう!」
私は牢番を呼んでヤコブの牢の鍵を開けるように命令したけど、やっぱり、激しく抵抗された。
「おまえ、やっぱダメな娘だろ」
ヤコブに言われるとムカつく。もう一度、思いっきり投げてみたい。
「宰相に確認して来なさい!」
牢番が戻って来た。納得出来ない様子だ。私が王女なのにさ。私ってみんなにどう思われてるんだろう。
私は、ヤコブを牢から出してプラドの元へ行く。




