武者修行を心ざす
今回は、ベスを大至急医者に連れて行く事にして私もお城に戻った。特に騒ぎになっている訳でも無く、忘れられていたのか?って雰囲気だ。
直ぐに部屋に戻って着替え、ペスの怪我の具合を確認する。ちょっと血が出てるかな。軟膏を塗ってあげるけどこれって犬に効くのかな?まあいいや。たくさん、撫で撫でしてあげるからね。ペス、ありがとう。私が無事に帰れたのはペスのおかげだよ。
それにさ、あのお人好しの盗賊もどき達にも感謝だね。あんなに震えて怖がってたのに、よく戻って来たね。嬉しいよね。こういうのは。勇気をもらったよ。ヘタレのくせに、何も出来ないくせに!敵に石を投げてくれた。私に当たったけど。
私は、柔らかな気分に包まれたまま、その夜は眠りについた。
次の日、ペスを獣医に連れて行ってみんなと会った。
「おう!犬も元気そうじゃないか」
「ベスも安静にしてれば直ぐに治るらしい。大袈裟なんだよなぁ」
「良かった。良かった」
「で、どうする?あのお金」
「とある公爵殿下に委ねるのはどうかしら?大金持っててもロクな目に遭わないよ」
「おお!賛成。公爵様なら信用できるし」
「俺たち公爵様の依頼で動いてるんだし当然だな」
「さすが親分。ぐっじょぶだ」
「じゃあさ、ベスの身体が治るまでちょっとひと休みかな。とある公爵様にもお金の事とか説明しといてね」
私もやらなきゃいけない事があるんだ。
私は父上に面会を申し込んだ。
「リリス。改まって面会とは何用だ」
「はい。私は今、世間知らずの未熟者を痛感し、もっと世を知ろうと心掛けております。それ故に、某国に大変興味を持ちました。一週間でも結構です。某国の様子をこの目におさえたいと思い、お願いに参りました」
「ふむ。是非もなし。皇子の国へ行け。そなたの考え天晴れであるぞ!くれぐれも無事に帰ってくるのだぞ」
「ありがとうございます。しかと承りました」
私は早速、皇子に手紙を書いた。
「何卒、貴方の柔術の師に教えを請いたい。仲間を守りたいのです。どんな厳しい訓練にも耐えますのでよろしくお願いします」みたいな内容を今度は自分で書いて送った。
受け取った皇子は大笑いをしたらしい。
「これは脅迫文かそれとも私への挑戦状なのか?おおよそ、王女がフィアンセに当てる手紙とは程遠いものだ。面白い。こんな手紙は初めてだ」
「恋文とはかけ離れておりますな。武芸の師に弟子入りを願い出るような鬼気迫るものを感じます。皇子、どうするのですか?」
「それはもう、望みどおり厳しくやってくれ。この王女は私を投げたのだぞ!しかも、私に投げられてケロッとして再戦を望んできた。根をあげるところが見たいものだ。あはは」
「皇子がそう言うなら、真髄を教えましょう。国際問題になっても知りませんからな」
「よいよい。この王女は何か違うのだ。楽しませてくれる」
公爵はケリーを呼びつけて話を聞いていた。王女が自ら某国に行くと言い出した訳を知るためだ。
「親分は、俺たちを逃がすためにひとりで敵と戦ってくれたんです。さすがに多人数相手にひとりで戦うのは無理があったようです。」
「おまえ達はどうしたんだ?」
「親分ひとりを置いていけないって事で助けに行ったんですがね、対して役に立たなかったです」
「それは仕方ない。親分は武術を学んでいるんだろうよ」
「仲間の一人が怪我をして親分が猛烈に怒りました。それなりのショックを受けたんだと思います。親分はあれでとても心優しい人なのです」
「仲間を守る強さでも、求めたか?」
「あまり自分の事は話しませんし公爵様のことも、とある公爵様と言って詳しく聞きません」
「くくっ。とある公爵様と言ってるのか?なるほど、興味がないんだ。放っておきなさい。今はおまえ達を守ることに夢中なのさ」
「俺たちは親分に頼ってばっかで。石を投げたら親分に当たっちゃうし」
「王女に石を投げ…いや自分らの親分に石を当てたのか?」
「親分が指示をしたんですが、親分に当たっちゃって。親分が私に当てないでって言ったのに」
「まあ、それはそれで可笑しいから良いがな。なんとも…」
(リリスは武者修行のつもりか?それはそれで良い事だけど、わざわざ皇子の国に行くか?全く行動の原理が読めない娘だよ)




