勇者から少女へ…
血の繋がった両親と会って洞穴に捨てられ、仲間に裏切りにあってから数日。
クリスティアは用意されて部屋で怪我が綺麗に治るまでベットに安静にしていた。
「……暇だな…母さんはここで給仕長をしていて…と…ガジェインさんは騎士団長…話に聞いていた魔王と全然違うし…」
一人ぼやいていれば、部屋の扉を叩かれる。
彼女が短く返事をすれば、銀髪のエルフ族の青年と全身黒い鎧を身に纏い口元しかわからないが竜族の青年が入ってくる。
ここ最近はまた、討伐やら侵攻やらでバタバタしていてザリクすら彼女の元に来るのが大変になってきていたために、まだ会った事がない二人がやってきたのだ。
「初めましてクリスティア様、私はヘルン。ハーフエルフです…ザリク様の指示で彼を紹介しに参りました…ジェイン…前へ」
「魔竜騎士ジェイン…よろしく…」
「はっ初めまして…クリスティアです…」
「ここに来た際にあなたは出血が酷く瀕死の状態でして、彼の血をあなたに輸血しています…ですから強制的に番となってしまっているのです、いわば伴侶です」
何を言い出すかと思えば、ヘルンはジェインの紹介をした後に驚くことを口にしていた。
確かに伴侶となるには、共に生きると誓い夫が妻に血を与えるという決まりがあったりとするが、当人同士の関わり関係を無視した状態でのせざる得なかった輸血。
説明が頭に入ってこないほどクリスティアは固まっていた。
つい最近までジェイクという恋人がいて失恋した直後で混乱でしかなかった。
伴侶だといわれても顔すらわからない相手にとまでっていた。
「…血には相性があります、本当は血に繋がりがある父か母から貰えればよかったのですが…何分急いでおりましたから、魔王様もあなたの事を大切に思っているので彼らの仕打ちに対して怒っているのですよ、裏切りを与えた男と恋仲であることも気に食わないようで…同じ竜族で父君のガジェイン殿からも信頼の厚い彼があなたの相手です…」
「ちょっと待ってください、いきなりそんなこと言われても困ります…顔もわからないのに…「顔を見せればよいのか?」えっ?」
「顔を見せれば落ち着くかと聞いている、それに俺は初対面じゃない…小さい頃に会ってる…木登りばかりをして女らしくもなかったクリス…」
「そっそれを知ってるのはジェイ…そんな事故で死んだって教えられて…」
忘れている様子のクリスティアにジェインは息を吐きながら話し始める。
話し始めたのにヘルンは二人だけにしようと部屋を気づかれないようにと気を使いながら出ていく。
魔竜騎士ジェインは小さい頃はクリスティアと同じ国で母親と共にひっそりと暮らしていた。
その時に知り合ったのが5つになったばかりのクリスティアだ。
人見知りで打ち解けにくかった、ジェインに話しかけて仲良くなった。
でもその二年後には母親が病気でなくなり、国の税を払えず、生贄という形で魔王の支配する国に大人たちに捨てられたことで死んだのだとクリスティアは伝えられていた。
クリスティアは7歳、ジェインが12歳の時のことである。
「俺としてはうれしいよ。クリスと伴侶になれて…今更、国にだって帰れないだろう?ハーフは迫害されるんだから…」
「ジェイ…なんか変わったね、強くなった…」
「君だって勇者に選ばれて強くなっただろう?魔王様も君の成長を楽しんでいたし」
「ねぇ顔を見せて?ジェイ…」
仲良さそうに話す様子を魔王は王座に座り、魔鏡越しに眺めていて口元に笑みを浮かべながら今後の二人をたのしむのだった。