勇者捨てられる
旅に出てしばらく。
現れる魔物を倒し。各々がレベルを上げて魔王がいる世界に向けて前進する一行。
魔王との戦いは何度もあり。
倒しても倒しても魔王は復活して繰り返す内5年も経っていた。
魔王も、さすがに疲れたのか大人しくなり進行も止まる。
一度国に帰り鋭気を養おうと言うことになり、一行は帰路につく。
その途中。勇者が大怪我を負う。
人間ならば瀕死の怪我を…
洞穴で暖をとりながら一行は勇者の怪我がマシになるまで足止めとなる。
そこで一行の不満は、爆発した。
「……あーもう。我慢ならねぇ。未熟だからとかじゃねぇだろ!何度目だよあいつのせいでこんなことになんのっ!」
「ちょっガインっ聞こえちまうって。声を抑えろよ」
「…ガイン殿の言うことも間違ってませんよ。私達は旅に出てから戦ってばかり彼女は戦うにしても足手まといで、強くもない」
クリスティアが怪我のせいで熱を出し、寝込んでる間に仲間達は不満を漏らしていた。
そこでシスターであるミレイアが黙っていたことを口にする。
クリスティアがハーフであることを。
ミレイアはレティシアと知り合いで。
勇者と選ばれなかったレティシアが父に聞いた秘密を伝えたのだ。
クリスティアすら知らない事を。
「ハーフってマジかよ。勇者はなんか体丈夫だと思ってたけど、そう聞くと合点が行くな」
「しかし、英雄である、勇者がハーフというのは人々は受け入れませんよ、ハーフは穢れえた混血、そんな存在と五年もいたとは…」
「なぁ、丁度魔王もおとなしくなってて、国に帰るとこだしこいつも怪我してる、魔王と相打ちで死んだ事にしてここに捨てていこうぜ。MP足りなくて応急処置しかしてないし、ほおっておけば魔物の餌にでもなんだろ」
ハーフは、迫害対象。
ましてや勇者が、ハーフでは話にならないと。
不満が爆発した一行。
翌朝
クリスティアをここに置き去りにし、魔王と相打ちで死んだとして彼女の持つ聖剣を持ち帰り、彼女には何にも纏わせずに旅を再開したのだ。
「…………クリスティア…ごめん。ここに君を置いていく…必ずまた会えるから…君にこれを預けておくから…」
「おーい、ジェイク、早くしろよ置いていくぞ」
「わかってる。じゃまたね、さよならは言わないから…」
竜騎士、ジェイクはどこか同族ではと感じていて仲間達がする事を見ているしか出来なかった。
5年の間で彼女と想い合い愛し合っていたが、ハーフであることが枷となると。
必ず生きて再会できること願って別れること選んだ。
彼は仲間に内緒でハーフでなくどちらかの種族にできる方法を探すのだった。
一行がいなくなったあと、クリスティアはまともな怪我の治療もされず魘されるのだった。
彼女の傍らにはジェイクが身に着けていた騎士としてのマントと竜族が伴侶に決めた相手にだけに渡すとされる一枚の鱗。
互いの思いが通じる間はその鱗は赤くなり、思いが離れれば色を失い、いずれは黒く変色して朽ち果てる。
まだまだ、赤く輝く鱗は彼女を魔物から守る盾でもあった。
洞穴の周辺には血の臭いを嗅ぎつけて餓えた魔物たちが集まってた。
その中、一体の蝙蝠型の魔物が鱗による盾を物ともせずに魘されるクリスティアの傍に行き人の姿となる。
「………愚かな…ハーフだからというだけで捨て置くか…勇者いや勇者だったか…お前のことを魔王様は気に入っている、敵でなくなったのであれば助ける…」
「ザリク様…奴らはどうしますか?」
「今は無視だ。彼女を魔王城へ…まずは怪我の手当てを魔竜騎士ジェインを呼んでおけ」
ザリクと呼ばれた魔物はクリスティアを抱き上げて、彼女の傍に残されていたモノは布袋に入れて部下の魔物に運ばせ、彼女を抱えたまま、空間に切れ目を入れて空間移動をして洞穴には血だまりのみが残っていた。
集まっていた魔物も獲物がいなくなったことで散りじりになっていった。