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勇者を眺める者

クリスティア達が出立し門に向かうのを城の窓から眺める者がいた。


彼?いや彼女か、性別の判断が付きにくい容姿を持ち、人とは言えぬ雰囲気を漂わせる者。


聖王 フェルダ。



外を眺めているフェルダの足元にはこの国の宰相が床に顔を押し付ける勢いで土下座をしていた。


「ねぇ。あたしの言ったことは守った?あの子の髪の毛…」


「もっもちもんでございます。聖王様の言いつけ通りに勇者の髪を一房ご用意いたしましたっ」



「うふふ、ホントにいい色…聖剣の器…あぁもう一人聖剣に触れた子いたわね…あの子は…捨て駒に使えそう…手は回しておいてくれる?くれる?」


「はっはいっ!!聖王様のお望みとあらば直ちにっ」


 バタバタと速足で去っていく宰相を見ることなく、フェルダは手に持つクリスティアの髪の匂いを嗅ぎうっとりと頬を赤らめて嬉しそうにしていた。


聖王は人の形をしていてももう何千年何万年と生きている。


なぜかと言うと、肉体を移り変わるからだ。


彼の体は歴代の聖剣に選ばれし勇者だと言われていた。


初代魔王と相討ちとなり、瀕死の傷を負いながらも聖剣の力により人外的な力を与えられていて寿命も人にしては長いほうだった。


人は老いればいずれは世を去るのが理と言われていた。


けれど、聖王となった初代勇者は、より長く自分が生き国を支配するという野望が年を取るにつれ芽生え、表からではなく裏から手を回すようになった。


確かに国には人間の王はいるがフェルダからすれば影武者ともいえる。


魔王が代替わりする度に勇者が誕生する、そう何度でも、フェルダはその歴代の勇者の体を己の物としているだ。本来の初代勇者の名はハリム・アグレイン。性別は男性。ごく普通の一般の国民で貧相で気の弱い青年だった。


彼は仲間といえる仲間がいなかった。


当時は見栄を張る王族から貴族と身分の高い者ばかりがお家のためだから名誉だのと勇者のお供をする。


お金が稼げるならば平然を味方を売るようなものばかりでの旅。


 勇者だとは言え、身分の一番低い立場、いい様に扱われていた。


恨み、妬み、憎しみばかりが彼を支配し、彼の体内に存在した聖剣も聖剣とは言えず魔剣とも言えるほどに黒く変色していて、魔王と相討ちとなった際、形だけの仲間は勇者の回復をするわけでもなく、放置した上、無理矢理聖剣を体内から引き抜き、瀕死となる勇者を捨て置こうとした。


事件が起きる、聖剣に我先にと触れた、欲に塗れた仲間たちは生気を聖剣に吸い取られ、立って入れないほど弱った。


逆に瀕死の勇者の傷が見る見る良くなり、傷すら残らないほど綺麗になり、狂気に満ちた顔で立っていた。


初代獣王より命を受け同行していた猛将ガリウスは、女であって王族だった魔法使いを蹴り飛ばし踏みつける勇者の変貌ぶりに恐怖を覚えたと後に語っている。


彼は、王国に戻った時に当時の王を踏みつけ、誰も逆らうことができない状況を作り出し、聖剣から字を取り聖王と名乗るようになった。


非道な扱いをしてきた、貴族王族は全員が罰せられ、現在は聖王の子孫が王族を名乗っている。


こうして初代聖王となった、勇者は生きているかぎり、悪政で支配をした。


逆らう者にはその身を持って分からせる罰を繰り返した。


彼も老いには勝つことはできなかった。


勇者としての役目が次の代へ変わった時、聖剣から受けていた加護が、彼の中から失われたのだ。


国を支配し続けるという願望は聖剣の呪いとなり、代々の所有者となる勇者の体を蝕むのだった。


蝕まれた勇者たちの体は若くして聖王の贄として捧げられるようになるのである。



贄にささげられた勇者は死んだとされその姿を持つ新たな肉体を持つ聖王に接触できるのも限られた上部の者だけだった。


現在で言えば宰相のみである。


肉体を入れ替えながら支配をし続けるのが聖王なのである。


「今回の勇者はそっても若い…女の子…白い肌…食べたくなる…いずれはあたしの体になるのね…うふふふふっ」


城の中でも入らずの塔の最上部。聖王しかいない空間に彼の楽しそうな声が響き渡った。








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