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途中からの恋愛ゲーム  作者: 11029
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 教壇では教師が世界史について板書を行っていた。梅雨入りした気怠い暑さに加え興味の沸かない内容と淡々とした話が眠気を加速させる。

社会人になったから言える。この教師はこんなつまらない授業で金をとっていいのだろうかと。仕事なのだから生徒のための授業をしてほしい。これでは眠ることを推奨しているようなものだ。

そもそも試験は生徒だけでなく教師も試されるべきではないだろうか。平均点の低い科目の教師は責任を負いボーナス額減らすとか。

そうなるとテストを簡単にして平均点上げるだけになるか?


 つまらない授業そっちのけでくだらない妄想。


 ――こんなことをしている場合ではなかった。

忘れないうちに昼にあった出来事についてメモをまとめないと。

自分については以下のように追記した。


・昼ご飯はいつも準備している

・競争苦手

・図々しくない


 ……正直この半日の経験を考えても、こんなメモが役に立つとは思えない。加えて「友達は多くない」「部活には入っていない」「運動は苦手」など、事前に記載している項目を見返すと、とても地味な人物像が浮かびあがる。なんだこの特徴らしい特徴のない人物は。

まあいい。自分について記載するのはついでだ。メインは昼に出会った彼についてである。


・お人好し

・トラブル体質

・生徒会長と仲が良い

・手があったかい

・意外と筋肉質


 こんなとこだろうか。

この世界が恋愛ゲームであるのであれば手っ取り早い。やるべき行動はわかる。ギャルゲー歴10年を超える俺がヒロインなのだ。

要は彼に攻略されるために、こちらから積極的にかかわりを持てばいい。

問題はどのように関わっていくかだ。

俺のクラスにいないということは別のクラス。気軽に話しかける相手になるには異なるクラスという壁は厚い。わざわざ別のクラス訪ねるなら理由がほしい。

まずはそのクラスを探さないといけないのだが。まあ所属クラスなんてすぐに――――


あれ?そもそもあいつの名前なんだっけ




 クラスも名前もわからない。

ならば放課後に下駄箱の出口に張り詰めることにした。

下校時であれば必ず下駄箱は通る。見つけて話しかけることならできるはず。


 しかし見つけたとしても話しかけるきっかけはどうしよう「昼にぶつかったの謝りたくて」にしようか。

その話題は昼に終わってる上に、彼にとってはよくあることの一つ。気にするなとまで言われたものを掘り起こすのはどうなんだろうか。話題として弱いように思える。

待ち合わせをしていると見せかけ偶然を装い話しかけるのが無難だろうか。話題はなるようになる。たぶん。



 ――30分は経っただろうか。

未だに目的の彼は出てこない。すでに下校する生徒はまばらとなっており、校庭で運動部が活動を始めたのか、遠くからかすかに掛け声が聞こえてきいる。

おかしい。遅すぎる。6限終了と同時に出口まで来た俺よりも早く下駄箱に来た生徒は見かけなかった。終業時間は曜日にかかわらずすべてのクラスで6限。

仮に部活やってたとしても靴の履き替えは必要。部室棟に向かう前に必ず下駄箱は通るはず。


「……文化部か?」


 文化部であれば校舎内での活動のため、下駄箱は通らない。

このまま待ってても活動が終わるまで……これから2時間程度は下駄箱を通ることはないだろう。

思わぬ失策。このままでは無駄になってしまう。


「――――しめた」


 俺はにやけが止まらなくなった。

同じ部活動での恋愛は定番である。

部活に入っているのであれば出会いのハードルはぐんと下がる。偶然を装って同じ部活に入部することができるのだ。

共通の話題もできる。仲良くなることだって相手のことを知ることだって容易くなる。

そしてなにより文化祭などの学校行事だって一緒に過ごすことができる。

これほど理想的な環境はほかにないだろう。運動部であれば性質上男女で壁ができるが文化部であればさらに都合がいい。部員が多くないで部であればなおさらだ。


 くくく、思いがけない成功とはこれほど愉快になれるとは知らなかった。

これからすべき行動は一つ。彼の部活を探すため各文化部の見学をしよう。

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