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おっさん、黒の全身タイツで異世界を生きる  作者: しょぼぞう
一章 脱出
23/51

第二十二話「迫り来る兵器たち」

本日二話目です。

 ――キキキキィィィィィィィィィィッ



 接触する前に、悲鳴のようなブレーキ音を立てながら列車が止まる。



 俺たちは二車線あるうちの、列車の止まっていない路線を走っているのだが、このまま進むと、先ほど止まった列車の横を通り過ぎることになるようだ。


 列車の側面が、ガルウイングの車のように開き、そこに並んだ兵士たちが、でっかい機関銃を、三脚みたいなのに乗せ、横を通り抜ける俺たちに向けて乱射してきた。



 ――パン、パン、パパパパパンッ


    ――パン、パン、パパパパパンッ


 ――パン、パン、パパパパパンッ



 ――トトトトトッ、トトトトトッ、トトトトトッ





 流石に橋の上だからか、備え付けてある大口径の列車砲は撃ってこない。


 だが、この機関銃。

 こいつが結構、地味に痛い。


 魔法プロテクションを張る。

 しかし、すぐに削り取られていた。

 

「きゃあっ!

 痛いっ! 痛いっ! って!!!!」


 後ろのギャルの悲鳴がすごい。

 たしかに怪我はしないが痛ってぇ。



 ぎゅっと握った、雪玉をぶつけられた感じだ。

 怪我はしないが小突かれている感じかもしれない。


 幸いヘルメットの部分。

 頭部は一番硬いので、少しも痛くないのが救いだった。



「プロテクションッ!」


 ――魔力装填数 1/6 



 ――パン、パン、パパパパパンッ


    ――パン、パン、パパパパパンッ


 ――パン、パン、パパパパパンッ


 ――トトトトトッ、トトトトトッ、トトトトトッ


 

 ――パキッ


   ――パーーンッ



「プロテクションッ!」


 ――魔力装填数 0/6 


 やばっ。

 コレ無くなったら、雪玉がなにに変わるんだ。


 ゾッっとする。



 硬球ボールぶつけられるぐらいまで上がったら、確実に死ねる。


 ――再填数

 ――魔力装填数 5/6


 俺はすぐさま再装填をしてプロテクションをかけた。


 まだ、再装填の回数は六回は残っている。

 たぶん、抜けるまでは持つだろうが気が気ではなかった。



 ――パン、パン、パパパパパンッ


    ――パン、パン、パパパパパンッ


 ――パン、パン、パパパパパンッ



 ――トトトトトッ、トトトトトッ、トトトトトッ




 あと少しだ。


 最後尾。ごっつい大砲付けた車両がすぐそこに見える。

 あそこを抜ければ――



 ――パキッ

   ――パーーンッ



「プロテクションッ!」

 ――魔力装填数 3/6 


 長い、あとちょっとが長く感じる。

 ゾーン(集中状態)に入ったのか時間がゆっくりと進む。



 あと一車両かくそっ。

 あと一車両。あと一車両。あと一車両。


 あと一車両。


 これで逃げ切っても、しつこく追ってくるのだろうか。

 ここで、少しは損害を与えておきたい。




 俺は思考を巡らせる。


 ガルウイングのように開いた側面。

 ガルウイング……

 ――側面が上に開いてる。


 俺は開いている最終車両のオリハルコンワイヤーを飛ばし、上がっている側面を掴んだ。



「フヌおおおおおおおおぉぉぉぉぉっっっっ!!!!」

 もう、こんなんばっかだ。



 力任せに、それを降ろす。


 ――ガキンッ


 なにかが折れた音がして、列車の側面が落ちた。

 開いていた所に備え付けられた機銃たちの上にそれが落ちる。


 パニックを起こす兵士たち。

 もう、機銃の乱射音は聞こえない。



 そんな彼らを尻目に、列車の猛攻から、俺たちは抜けていったのだった。





§





「抜けたあああああああああっっっっっっ!!!」


 俺は、両手を上げてガッツポーズを決める。

 気分は、某映画の刑務所から脱出した雨のシーン。



 ――おっと危ない。


 バランスを崩しそうになったところで、両手をハンドルに戻す。

 なんとも締まらない感じだが、そんなこたぁいいんだよ。




『無事抜けることができましたね。


 後は、陸からの武装列車ですが――

 現在、橋のたもとの街には配備されてないようです。


 一番近い街から来たとしても……。

 我々が脱出する予定の場所、十キロ地点に到達するまでに彼等がたどり着くことはないでしょう』



 ほっとして、肩の力が抜ける。


「よかった……」


「う、うぇ、うぇぇぇん。

 怖かったよぉぉ」




 後ろで、ギャルが泣いている。

 全身タイツの上に着ていた服なんか、穴だらけでもうバラバラだ。


 隙間から見えるのはダッサイ全身タイツなのだが、年の割にセクシーな彼女の身体は、そのダサすらも凌駕し、なんだかエッロイ格好になっている。


 あぶない、あぶない。

 思わず、おっきしてしまいそうになるが、咄嗟に素数を数えて冷静さを取り戻す。

 まあ、素数とか咄嗟に数えらんないから、合ってるかどうかわからない数を適当に数えてるだけなのだが。




 しかし、話は戻るがギャルが泣くのも当然だ。

 引きこもりでメンタルが豆腐な俺だが、一応は大人だ。


 大人の俺が、これだけツライんだから、十代しゃべり場な小娘にはかなりツラかっただろう。



 腹を摘んでる手を、ポンポンと軽く叩いて元気づける。



「う、うぅぅ。さわんなアホぉぉ」


 アホって、泣かすぞこのやろう。

 もう、泣いてるがな。




「まあ、安心するのは――」


 ――キキキーッ





 ぐっ、と前方に引っ張られる感覚。

 急ブレーキのせいで、車体から進行方向に放り出されたそうになる。




「い、イノリさん……。

 止まるなら、止まるって言ってよ……」


「うぇぇっ、もうなに~」




 何とか、こらえる。

 後ろからギャルがぶつかってきて、また放り出されそうになるが、それもこらえる。




 なんなんだ、一体。


『コウゾウッッ!!

 防御シールドを張ります!!!!


 急いで二メートル間隔にこれを――

 ワタシたちの四方へと置いてくださいッ!!!』



 バイクの側面がスライドし、手のひらサイズの筒状のものが四つ出てくる。


『念のためコウゾウと莉奈の体を――

 Xanthosを橋の鉄柱にオリハルコンワイヤーで固定してください!


 衝撃に備えて圧力にも耐えられる姿勢をとって!』



 イノリさんの声が、本気で焦っている。

 こ、これは、マジでヤバい。


 理由はわからないが、とにかく指示通りにする。




「ちょっと、なに!

 もーっなんなのーーーっ!」


 ギャルの文句は無視。

 そんなのにかまってる暇はない。



『シールドは一分ほどしか持ちません。

 発動は寸前でおこないます』


「一体、なにごと? イノリさん」



 俺は作業する手を止めずに聞く。




『――海を見てください』


 ――海?


 海って……。




 げっ、なんだあれッ!!!!





 ――異様な光景だった。


 あのキレイな海の水が消え、海底が姿を見せていた……。

 海底だった所に、打ち上げられた海洋生物がうごめいているのが見える。

 それほど干上がっていたのだ。


 み、水はどこに……。





 その答えはすぐに出た。

 その答えがすぐに目に飛び込んできたのだ。



 ゲームかなにかで見るCGのように、水が遠方に見える水の山に引き寄せられている。


 いや、引き寄せられた水が集まっているから山になっているのか。

 それは取り込んだ水と比例して肥大しているようだった。



 ギャルは口を開けて、その光景を見ている。

 俺も同じような気持ちで、その信じられない光景を見ていた。



 わかる。

 わかるんだよ。何でだか。


 目の前に見えている水の山は、急速に肥大している。

 それが風船のように膨張しているのだ。



 バラエティー番組の罰ゲームで膨らませる風船のように、結末が予想できる膨らみ方だった。


 俺の中の戦闘術が、スマホにくる災害警報のアラームっぽい音を脳内でひっきりなしに鳴らし、警告してくる。




『コウゾウッ!! 早くッ!!!』


 イノリさんが、発した声と同時だった。

 その膨らんだ緊張は張り裂け、牙を剥く。



 こちらへ向けて迫る、馬鹿でかい津波――

 巨大な水の壁が、こちらへと押し寄せてきた。



 この橋の上は、海面よりもかなり高い位置にある。

 おそらく十階建てのビル位は、余裕であるだろう。



 ――でもだ。


 今迫ってきている津波。

 それは、ビルなんて表現、そんなものは生温い。



 神話とかに出てくる、人類を滅亡させる津波とはこんな感じなんだろう。




 ――人類滅亡。

 それすら思い浮かぶそのスケールの津波が、こちらへ向け押し寄せてくる。


 空が陰った。

 いや、冗談じゃなく、本当に太陽光が遮られているのだ。


 その水の壁に。



 高波の膨大な質量の水が、橋を襲う。


『コウゾウ!! 莉奈!! 衝撃に備えてください。

 Xanthosのシールドを張りますッ!!』



 それと同時に、津波が俺たちに覆いかぶさってきた。

 膨大な質量が体を圧迫する。





「ぐあああああああああぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」

「きゃあああああああああぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」


 立っていることは、できなかった。

 気分はナイアガラの大瀑布で滝行だ。


「ちょ、イノリさん!! シールドはどうなって――」



『効いています!!

 ただ、シールドの許容量を超える質量に圧倒され、全てを防ぎきれていません!!』


「ヤバいよ!! ヤバいって!!

 しぬうううぅぅぅ!!


 莉奈、まだ死にたくないって!

 助けて、助けて……」




 一秒が、永遠にも感じられる時間。

 周囲が薄く発光し、なにかを弾いている。


 津波の中に混じっていた何かが、ぶつかってきたのを、弾いたのだろうか。

 俺たちを包むシールドが、俺たちの命を守ってくれているのを実感する。



『シールドは、あと十秒後に解除されます』



 イノリさんの、無慈悲な言葉に涙目になってしまう。


「ちょっ、そんな殺生な!!」



『大丈夫です。安心してください。

 ギリギリですが、しのぐことができそうです』


「いや、あのね。

 前から言おうと思ってたけど、イノリさんの大丈夫ですは信用でき――」




『――制限時間に達しました。

 シールド解除します』



「ああああぁぁぁぁぁ……」

 周囲を覆ってた光が、四散する。


 ――ドンッ


 凄まじい水圧が、俺たちを押し流す。

 バイクごと橋に巻き付けたワイヤーが軋む。


「きゃあああああぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」



 ギャルが流されそうになる。

 俺は咄嗟に手を掴み、引き寄せた。


 抱きかかえるようにして守る。

 先ほどとは、比べ物にならない水圧が俺たちを襲った。




 くそっ、ギリギリしのげるんじゃなかったのか……。


「イノリさんの……う、うそつき……」


 思わず口から漏れる。


 せっかくの抱きしめているギャルの感触を楽しむことができない。

 つーか、流石の愚息も、この異常事態にぴくりとも反応してくれない。




  くそ……童貞ぐらいは……


    プロでもいいからやっとけば……


 俺の……

  意識が……だんだんと……。






『それは心外です。嘘じゃありませんよ』


 ふっ、と、体から圧力が消えた。

 先ほどまでのことが、無かったかのように太陽が俺たちを照らす。




 青空が、俺たちを迎えた。



 海底の見えていた海に、海水が満たされていた。


 まだ、海の中の水流は濁り、荒々しく渦巻いていたが、先ほどまでの異様な光景よりかは、幾分マシになっているのがわかる。



 周囲を見渡すと、橋は所々倒れ歪んでいた。




 まあ、それでも、イノリさんの操縦するこのバイクなら、進めそうではある。

 俺は一息つくと、腕の中の柔らかいものを感じ、それを思いだして、俺はそれを見た。



 ギャルが、真っ赤な顔してコチラを睨んでる。

 直接、フルフェイスヘルメット越しでもシールドが透過してあるので表情はまる見えだ。



「いつまで……」


「へっ?」


「いつまで、触ってるわけぇーー!!」


 ジタバタ暴れるギャル。



 大丈夫。

 全身タイツ着てるから、殴られても全然痛くない。


 なに、このラッキースケベ的な展開。

 俺の人生、トップ五に入る艶事。



 まあ、勝手に巻き込まれたギャルにとっては、おっさんとのこんな展開、不幸以外なにものでもないだろうが、犬に噛まれたと思って諦めて欲しい。




「だーーーーーからっ!

 はなせーーーーっ!!」


 あーあー、聞こえない。

 しばらく、ギャルの感触を味わう。



『コウゾウ。ゆっくりしている暇はないですよ……。

 巨大な敵対反応が……コチラに近づいています』


 げっ、まだあるの。

 近づいてる、って、この状況。空でも飛んでいるのか。




『水中です。

 目標、水中を移動してコチラに……


 ――速いッ!

 もう目の前です――』



 水中に映る大きな影。


 それは次第に大きくなり、黒い影が白く光るものへと変わった。

 そして、爆発でもしたかのような音と水しぶきをあげ、それは姿を現す。





 ――ズズズズゥゥン



 純白に輝く金属。


 純白の所々には、金でラインが引かれている。

 その姿は、よく二次に出てくるフルプレートの聖騎士を思い起こさせた。




 俺はゆっくりとギャルを解放し、立ち上がる。


 ギャルも、目の前に出てきたモノが凄すぎて、のみ込めきれないのだろう。

 先ほどの津波を起こした水の山を見たときと、似たような表情になっている。



 それも、そのはず。

 俺たちは、まさかの再開を果たし、それの体を太陽の下で初めて見たからだ。




 一部だけ見て、でかいなとは思ってた。


 思ってはいたが……まさかこれほどとは――



 ――地下施設。


 そこで見たそれと、まさか、対峙することになるとはこれっぽっちも思ってなかった。




『対称をスキャンします……結果がでました。

 ステータスを表示します』



―――――――――――――――――――――――――――



種族:神級妖魔核機動兵器

サイズ:1225(245m)


筋力:1225

耐久:1225

魔力:4856/15300(稼働消費魔力:10/m)

機動:水中45ノット(約83km/h)



攻撃力(名称:貫通力:ダメージ:動作)


・腕:0:1225:10

 魔力消費:10


・魔力チョップ:32:1225:30

 魔力消費:100


・魔力120%チョップ:53:1225:30

 魔力消費:1000


・魔力エネルギー機銃

 射程:1500m 貫通力:10 ダメージ:30

 装填時間:4 1動作最高射出弾数:10

 動作継続時間:3 魔力消費:30


・魔力エネルギー主砲

 射程:20km 貫通力:30 ダメージ:500

 装填時間:20 魔力消費:1000


・大津波(水操作)

 貫通力:0 ダメージ:1000~100

 魔力消費:1000~10000


防護値(名称:装甲値:緩衝値)

・装甲:30:25



―――――――――――――――――――――――――――




 巨大な、高層建築物。



 感覚的には、何が一番近いか……。



 そうだ、都庁だ。

 あの、双塔のビルぐらいの大きさの聖騎士が、海の中から生えている。



 冗談みたいだろ――

 でも、残念なことに……それは本当のことみたいなのだ。





§


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