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おっさん、黒の全身タイツで異世界を生きる  作者: しょぼぞう
一章 脱出
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第十五話「宮殿探索」

〈アッカネン莉奈 視点〉



 莉奈は子供の頃、いじめられてた。


 理由は単純、莉奈の見た目――

 外国人の血が入った莉奈は目立ってたんだと思う。


 小学校の低学年の時だったかな。

 子供って正直で残酷なんだよね。


 彼等は、他と違う莉奈を、平気でからかいいじめる。

 男の子たちからは、ガイジンは臭い、国へ帰れって言われたりもした。



 莉奈、臭くないし。


 声を大にして言いたい。

 いつも匂いには気をつけている。


 お前たちの方が臭いだろっ!

 汚い手足、汗、油みたいな匂い。

 何回もその言葉が口から出そうになるけど、莉奈は臆病だから結局なにも言えずにいた。



 気にして香水をつけていくと、次からはそれでいじめられるんだ。

 女の子からも、莉奈ちゃんは可愛くて男子に人気あっていいよね、って嫌味言われ、仲間はずれにされるし。


 とんでもない。

 それならお前が莉奈と代われ――と、そう言いたい。



 いじめるやつからすれば、理由なんか何だっていいんだ。

 そのせいで――莉奈の小学校での思い出は、ひとりぼっちのモノしかなかった。




「ワタシたちお友達だよ~~っ!!」


 この言葉に衝撃を受ける。

 画面の中、テレビに映る莉奈と同年代のこの少女はそう言った。


 莉奈でもいいの!?

 ガイジンだよ、それでも友達になってくれる??


 莉奈は、すぐにそのアニメに夢中になっちゃった。


 たまたまテレビでやってた、アニメ。

 魔法少女マジカルプリティ。



 テレビの中では女の子たちが友情を確かめ合い、強大な敵に立ち向かっていた。

 凄いんだよっ。マジカルプリティなんて、魔法の杖から炎をだして敵を焼き尽くすんだ。


 決め台詞の「汚物は消毒よっ!」のポーズを決めると、莉奈の胸は高鳴る。こんな風になりたいっ!

 ――ってね。


 莉奈はマジカルプリティの衣装を買ってもらう。

 その衣装に着替えて、マジカルプリティごっこをする。



 現実には友達がいないけど、アニメの中では友達がいるんだっ。

 友達に飢えていたワタシはどん欲だった。


 そのアニメが終わった後も、続編にハマり、その類いのアニメ、ゲーム、漫画、次々と手をだして、さらにハマってしまった。私は、お年玉で色々と買いそろえていく。

 マジな話。それは今でも続いていた。



 ドキドキぱらだいす 私立 魔導聖女学園。

 魔法少女マジカルプリティのパロディが、たくさん入ってて、高校生になった彼女たちと再会できた気がした。


 あ、もちろん十八禁の方じゃないからね。

 ゲーム機で出てる方。




 中学生になると莉奈は逆に人気が出てきたんだ。

 可愛いと噂になり、リア充の美少女だと噂される。


 みんな私に、その役割(美少女)を押し付けてきた。

 本当は莉奈、そんなの望んでいないのに。


 それまで人と上手く接することのできなかった私に、そんなの上手くできるはずがない。

 羨ましがられるから気分はよかったけど――

 ストレスが溜まって、よりいっそう趣味にハマっていっちゃった……。



 悠斗や美優にも知られてない。

 中学生の時、悠斗に趣味(アニメ)のこと、ちょっと話したら「はっ?」って顔で、「アニメって小学生の見るものだよね? 中学生にもなったんだから卒業しないと」って言われちゃった。


 

 そんなこと言われたら……もう悠斗には何も言えない……。

 嫌われたくなかったし、いじめられてたことを思い出しちゃうから。


 これが莉奈の秘密。

 今の高校生活からは想像できない、ずっと隠してきた莉奈の絶対守りたい秘密なんだ。





§





〈コウゾウ視点〉



 牢屋の壁際で体育座りしてる。

 壁にもたれ、イノリさんに話しかけた。



「……これから、どうしたらいいと思う?」


 つれてこられる前に被り直したヘルメット。

 その内側から見えるモニタに、イノリさんが映る。



『決まってるじゃないですか――

 施設の起動は必須です』


 そーですよね。

 その任務がありましたよ。


『宮殿のスキャンは終わりました。

 施設への入口も特定済みです』



 イノリさんは、HMDヘッドマウントディスプレイに宮殿のマップを映す。


 ――宮殿前広場。

 俺たちが落下したその場所に、ちょん印をつけている。



『ここにある巨像に、隠された階段があります。

 その階段を下りて約二百メートルほど地下に目的の施設がありますね』


 施設のある場所。

 ドンぴしゃ真上に俺たちは落下したのか。

 その正確さにびっくりする。



『今夜、闇にまぎれて行動しましょう。

 ACHILLESの光学迷彩機能を使えば、目視に頼る衛兵をかいくぐるのは容易いことです』


 自信満々にイノリさんは言った。

 そーいえば、暗視もできたよな。なにげに俺たちは闇に強い。




『その前に――

 コウゾウに、言語のインストールを施したいと思います』


「えっ、あれって、歯医者の椅子みたいなヤツに座わらなくてもできるの?」


 宇宙での出来事を思い出す。



『情報をインストールするため、ベースとなる部分をインストールするには必要でした。

 すでにベースのβ版スキルニューロンMODが入っているコウゾウには、このヘルメットからでも情報をインストールすることが可能です』


「言語って、この国の言葉ってこと?」


『はい、西方言語と呼ばれ、地方によって訛りはありますが、この西方大陸全土で使われています。

 先ほど応接室にあった書物をスキャニングし、さらに宮中の会話などを盗聴して、解読、分析しました』



 お、おぅ。

 優秀過ぎるだろ、イノリさん。


 見た目、魔法少女というふざけた姿なのに、相変わらずできる女っぷりを発揮してくれる。



『一気に、大量の情報をインストールするのは危険ですが、昨日のインストールから一日経ち、脳も回復しています。

 現状を考えると言語の修得は必須であり、インストールは早ければ早いほどいいですね。

 幸い夜までにはまだ少し時間があり――丁度よいので、今からインストールしたいのですが……』



 それは願ったり叶ったりである。

 さっきから、この世界の人たちへの言葉の通じなさに辟易していた。


 それにこれから、この世界で生きるには言語修得は必須だろう。

 この年になって、言語を一から覚える苦労を味あわなくてすむのはよかった。



『では、早くしましょう。

 身体をリラックスさせて、壁に背を付けてください』


 言われた通りに、壁にもたれリラックスする。



 ――しかし、イノリさん。

 なんだかインストールを急いでいる気がする。


 早く覚えておくに越したことはないのは、わかっているが、一分一秒を争うものだろうか。


 違和感に、俺はストップをかけようとする。



『――画面をよく見ていてください。

 今からインストールしますね――』



 ――バチッ

 

 目の前のモニタに幾何学模様や何がなんだか分からない映像が映り、目の中に飛び込んできた。


 どんどんと映像は切り替わっていく。

 怒濤のような映像から、目を離すことができなくなっていた。



 あ、これって、結構、辛いんだった……。

 俺って前回、散々、駄々こねてたよな。


 きっと、俺が駄々こねる前にインストールしたかったんだ――


 頭の中に情報が流れ込んでくる。



 思考をかき回され、世界がぐるぐると。

 吐き気とともに頭痛が俺を苦しめた。


 数分にも数時間にも感じられる時間がやっと終わり、映像が止まる。


 ――前もこんなことあったよな。

 俺は意識を手放しながら、最後に考えていたのはそんなことだった。





§





 結論からいうと、俺はもう見つかっている。


 いやいや、衛兵にってわけじゃないので安心して欲しい。

 見つかったのは日本人にだった。



「お、おじさん。牢屋に居たんじゃなかった!?

 こんな所でなにしてんの??」


 うん、このギャルに見つかったのだ。


 珍しいことに彼女、今は一人らしい。

 イケメン君と黒髪巨乳ちゃんが居ない。



「君こそ、こんなとこで何をしてるのかな――」


 俺は質問に質問で返してやった。



 案の定、その答えに苛ついたのか、彼女はきつい口調で――


「おじさんには関係ないでしょ……莉奈は――

 莉奈はイノリちゃんに用事があんのっ!

 早くイノリちゃんだしなさいよっ」


 イノリさんに用事?

 突然なにを言いだすのか。


 ん、ということは俺たちに会うため、彼女は一人でこんな所まできたということなのか。



「こんなとこで、イノリさんに出てもらう訳にはいけないよ。

 彼女はただでさえ目立つんだし――」


 地図でも確認し、宮中のこの場所が死角になっているのは知っている。

 索敵でも周囲に人がいないのはわかっていた。


 でも、コイツにそんなこと説明している暇なんてない。

 いつ、巡回している衛兵が、こちらに来るかわかったもんじゃないからな。



「急いでるんで……そんな用事なら後にしてくださいよ。


 それから、俺がここに居たってことは黙ってて欲しです。

 理由は……後で会った時に説明しますから――」



 まぁ、後でも何も、施設を起動させたら、この宮殿からとんずらさせてもらうけどな。



「……どこに行くつもりよ。

 もしかして、逃げるの?」


 ばれてるじゃん。


 いや、少し考えればわかるか。

 隠れて移動してんだから。



「い、いや、逃げるというか――

 ちょっと探し物がありましてね。

 あ、あれだ、俺の乗ってた船に、荷物があるんで、それを回収するつもりで……」


「嘘ばっか。

 荷物取りに行くのは本当かもしれないけど……

 その後、逃げるつもりでしょ」



 彼女はジト目でこちらを見ながら、胸の下で両腕を組み、体を反らせた。

 スレンダーなスタイルの割に大きな胸が、ゆっさと腕に乗っかる。存在感がパない。


 思わずガン見してしまう。

 フルフェイスヘルメットで目線は見えてないハズだ。

 マーチンのサングラスのように、俺の目線は悟られないハズ。


 さりげなく、チンチンをチョイチョイと軽く触っとく。

 もちろん、目の前のギャルに気がつかれないようにだ。



「……まっ、でも莉奈も付き合うよ。

 おじさんのこと、牢屋に閉じ込めたままで助けられてなかったしね」



 それはそれは。お優しいこって……。

 うん、でも迷惑。


 このラッキー視姦タイムが終わるのは残念だが、どうやってこのギャルを追っ払おうか思案する。


 いっそのことイノリさんを呼び出して、このギャルの用事とやらを終わらせた方が早いか。



 そう考えてた時だった。


『コウゾウ、衛兵が二人、コチラへ向けて近づいています。

 早く移動しましょう』


 イノリさんが画面に映り俺に言う。

 目の前のギャルには聞こえてない。それに見えても居ないハズだ。



「なんか言いなさいよ。

 いつまでもここに居たら――


 あっ、誰かこっちに来てるよ。

 まだちょっと離れてるみたいだけど……よし、移動しよっ」



 ギャルは、結構正確に周囲を把握しているようだ。


 今日日の女子高生は、こんなに感覚が敏感なのか。

 別に、いやらしい意味ではないが。



 ボサっとしてる訳にもいけないので、結論のでないままココから移動することにする。


 まあ、結論が出てないというか、なし崩し的にギャルが同行することになりそうなのだが……。


 そんな幸先の悪い展開。

 俺の敏感なところが、不吉な予感でビンビンと反応していた。





§





「――で、あのでっかい像に何か用なの?

 あの乗り物、もう片付けられてるみたいだし」


 物陰から像の周辺を観察していると、ギャルが話しかけてくる。



「うるさい。じゃますんなら帰ってください」

 俺は小声でつぶやく。


「――あぁ?」


「ご、ごめんなさい」


 こっわ、もんすごい怖い。



 聞こえないと思った小声なのに聞こえてた。

 なんてヤツだ、女子高生の癖に年上の俺を威圧してくる。

 マジでこわい。


 ヘルメット被っててよかったぜ。

 涙目なのを見られないですむ。




「あの周り、大丈夫そうだよ。

 周囲から監視されてる感じもしないし」


 コイツ、なにげにすごいな。


『リナの言う通り、大丈夫そうです。

 急ぎましょう』


 イノリさんのお墨付きも貰いました。




 ギャルの方を向き、手で「移動するぞ」的なオリジナル、適当俺ハンドサインをする。


 ギャルはそれを見て頷いた。

 コイツ本当にわかったのか? ま、いいか。



 姿勢を低くし、かがんだ状態で広場を走り抜ける。

 光学迷彩を使い、闇の中に溶け込んで進んだ。


 俺だけが使っても意味ないかもしれないが、俺が見つかるのは一番避けたいので、念のため使っておく。



 偉そうなこと言ってるのに見つかったら最高にかっこわるいじゃない。


 消えた俺をギャルは見失うが、またすぐに見つかる。

 その後、ギャルは危なげなく後をついてきた。


 しばらく進むと、俺とギャルは巨像の足元にたどり着く。

 大丈夫だ。だれにも見つかってないっぽい。


 素早く屈んで物陰に隠れた。



「もうちょい奥行ってよっ。せまいぃ~~」


 後から来たギャルが、ガンガン押してくる。

 くそっ、押すなって。


 巨像の土台にある、凹んでいる部分に俺たちは隠れた。

 スペースは一人分ぐらいしかないので狭い。


 二人で隠れようとすると、おのずと密着してくる。



 状況はおいしいのだが、こんなのを続けていると俺の愚息が大変なことになってしまい立てなくなってしまう。

 いや、そうなっても俺は立ってはいるんですけどねっ。(どやぁ)


 引きこもりおっさんに、女子との密着ハプニングは刺激が強すぎる。

 これも照れ隠しだと思って許して欲しい。




「文句言うなら帰ってください」

 密着からのおっき。

 それから気をそらすため、小声で文句をつぶやく。


「――あぁ?」


「ご、ごめんなさい」


 こっわ。近いぶん、さっきよりもんすごい怖い。


 再び女子高生は俺を威圧してくる。

 ヘルメットの中で、俺はもう泣いていた。



『コウゾウの足元に、隠し階段の入口を開閉するクランクがあります。

 ハンドルを引き出し、回転させてください』


 イノリさんは、泣いている俺なんかおかまいなしに指示をだしてくる。

 はいはい、わかりましたよ――。


 可愛く(おっさんだが)ふてくされながら、俺は指示通りハンドルを引っ張り出し、キコキコと金属の摩擦音をさせて回した。



 俺たちの隠れていない、凹んだ部分の地面がスライドして開いていく。


 開いた入口の向こうには階段が続いていた。


 そーいえば、この異世界にきたのも、こんな階段下りてだよな。

 ここに来ることになった、あの時のことを思い出す。



「おじさん、なんでこんなの知ってんの?

 フリーデリケさんが言ってたように、やっぱり敵国のスパイとか?」


 密着したギャルがジト目で俺を睨んできた。

 あらぬ疑いをかけられ動揺する俺。


 痴漢に間違われた満員電車のサラリーマンの気持ちがよくわかる。

 思わず「ち、違う、違う……俺じゃない」と、そう言っちゃいそうになってしまう。マーチン的には。



「あのー。

 俺は、俺の用事があるんで……帰ってくださいよ。マジで。

 しかも仮に、俺がその敵国のスパイだとしたら、君はどうするつもりですか?

 のこのこ付いてきてるほうが危ないでしょ」


 色々とめんどくさくなる。

 後先考えずにギャルを追っ払う言葉をはいた。



「ばっか――

 おじさんみたいな鈍臭そうな人がスパイって……マジうけるんですけど」


 ギャルは、ぶすっとした顔でそっぽ向く。



 スパイってアンタが言ったんですけど。

 もうわけわかんね。年頃の女の子って、おっさんわからんわー。



 そんなギャルはほっといて、俺は階段を下りた。

 ヤツはあわてて追ってくる。


 本当、わけわからんね。







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