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食後の運動には丁度良さそうだ

「ああ疲れた」


しかし、アカネがうつ伏せのスキンヘッドの背中に座ったため、

彼はまた地面に口付けをする羽目となった。


「ぐっ」


「度胸が有るのは良い事だけど、大人しく寝てた方が身の為よ。クソハゲ」


アカネは足を組み、クソチビと罵られた腹いせからか、

スキンヘッドをクソハゲを罵って言い返した。


細身なアカネの体重は軽く、

スキンヘッドがその気になれば彼女を押し退けて起き上がる事は可能だが、

一方的に転倒させられた上この様に脅しをかけられたのでは、無闇矢鱈に行動を起こせはしない。


アカネはスキンヘッドに座ったまま、タバコに火を点ける。


「ちょっと一服させて貰うわ」


「クソチビめ……」


再度罵言を漏らしたスキンヘッドに対し、アカネはタバコの灰をスキンヘッドの尻に落とす。

「あぢっ!」


「喋る灰皿なんて珍しいわね。ウチには要らないけど」


これ以上何かされてはたまらないと、スキンヘッドは口を閉ざした。


「アカネちゃん怖ーい」


「あんた達」


アカネは様子見を決め込んでいる男達に、タバコの先端を向けた。


「なんだよ」

「俺らにもそいつみたいに、灰皿になれって言うのか?」


「今すぐ降参してカフェの後始末をなさい。


そしたら見逃してあげる」


「何だと?」

「くそっ、女子供に指図されるとは……」

「でも、座られるのはちょっと羨ましいかも」


アカネはタバコの煙を吐いた後、先程の条件に漏れが有ったと気付く。


「ああそうそう、店員に土下座も追加」

「このぉ、馬鹿にしやがって!」


前列に居た、頭を縄で鉢巻風に縛っている男が駆け出す。!


「続けぇ!」

「同時攻撃だ!」


縄鉢巻の男をきっかけに、男達の集団が次々とアカネ達に向かって突進する。


ひとりやふたり転ばせる程度なら、数で圧倒すれば勝てると判断したのだろう。


「遊んであげて」


アカネの一言でローブが体を沈めたかと思うと、瞬時に姿を消す。


男達がそれに反応する暇も無く、

ローブは両手を猫の前足の様に扱って姿勢を限界まで低くし、

最早本人にしか認識出来ない速さで、男達の足の隙間をスルスルと駆け抜けた。


そしてすれ違いざまに全員の足をくじかせ、スキンヘッドにしたのと同じく転倒させてしまう。


「ぎゃあ!」

「ぐおおっ!」

風より速いローブの前では、集団戦法も何ら意味を成さなかった。


男達は互いに手や足を絡ませ、ジタバタともがいている。


「アカネちゃん、どお?」


集団から抜け出たローブは四つん這いのまま、褒め言葉を求めてアカネを見る。


しかし、アカネはまるで眠ってしまったかのごとく、スキンヘッドの上に崩れ落ちていた。


「アカネちゃん?」


ローブがもう1度呼んでも、アカネは目を開かない。


これにはスキンヘッドの男も困惑し、

うつ伏せはそのままに首を捻ってなんとかアカネの様子を伺っている。


「ねえアカネちゃん、アカネちゃんってばぁ」


ローブは相変わらず四つん這いの姿勢を変えず、

シャカシャカと歩いてアカネに近寄る。

「アカネの奴どうしたんだ?」


「食べたら眠くなるからねっ!」


「それはそうでしょうけど、アカネ様はコーヒー以外口にされておりませんが……」


遠巻きから見ていた3人の背後に、別の3人組が現れる。


「んん?」


人間の足音と気配にノゾミが振り向くと、3人の男達が並んで立っていた。


ノゾミ視点で見て右からそれぞれノッポ、デブ、チビと統一感に欠ける3人組だが、

全員がブルホーンのシンボルである雄牛のタトゥーで右肩を飾っていた。


ノゾミは知る由も無いが、

彼等はバニーに来る途中、アカネとすれ違った3人組である。


「よお。何の騒ぎだ?」

「人多っ!」

「ひぃふぅみぃ……指が足んねえな」


「そのタトゥー……お前らもブルホーンか」

「ああ、その通りだが」

「あれっ?」

「げげげ、ベンダさんが!」


3人組の内のチビが、男達の集団の更に向こう側に倒れている、リーダーのベンダに気が付いた。


「なに、ベンダさんがやられてるだと?」

「嘘ぉ!?」

「じゃじゃじゃ、俺達も助っ人しねえと……」


「待ちな!」


ベンダの元へ向かおうとする3人組の前にノゾミが立ち、両腕を広げて道を塞いだ。


「おい、邪魔をするなよ」

「女ぁ?」

「ヘッヘッヘ、痛い目見たくなきゃさっさとどきな」


ノゾミは3人組の脅しに屈するどころか、握り締めた右手を左手で更に握って指を鳴らし、

首を回して体の調子を整えている。


「お相手は3名。ノゾミさん、大丈夫ですの?」


「デブとチビは弱そうだけどねっ!」

ノゾミはマシャ達に勝気な笑顔を見せる。


「食後の運動には丁度良さそうだ。それにあっちはあっちで何かあったみてえだし、

少しは負担を軽くしてやらねえとな」


ノゾミは十分に体を整えると、左腕を3人組に向かって真っ直ぐ伸ばし、

上に向けた手をクイクイと曲げて挑発した。


「来いよ、遊んでやるぜ」


「ふん、調子に乗りやがって」

「どけよぉ!」

「ククク、後悔させてやるっ!」


3人組は一斉に、ノゾミへ襲いかかる。


チビの右拳による先制攻撃を、ノゾミは体をひねり踊るような動作で避けた。







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