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俺のモテ期がなんか思ってたのと違う  作者: 佐土原いづる
30/30

30話

文化祭2日目の夜、俺たちは生徒会主催の打ち上げに来ていた。

放送部やラグビー部の皆さん、文化祭にスタッフとして関わった人は大体いると思う。 更には昇も文化祭の進行に協力したということで招待された。まぁ、会長が来いって言えば誰でも来れるのだ。


「じゃあみんな、文化祭お疲れ様でした! かんぱーい!!」


「かんぱーい!!!」


会長の号令と共に、みんなそれぞれのジュースをぐびっと喉に流し込む。


「ぷはー! たまんねぇぜ!」


「おいしいね♪」


「これはキクなー!」

たまらずおやじ臭い言葉が出る。良いじゃないか、俺はがんばった!


そして、今回俺の隣には目新しい女の子が座っているのだが、個人的にはキツイ時間を乗り切った戦友でもある。そう、ステージの音響を担当してくれた放送部員1年の女の子である。あの時は必死で名前も聞いていなかった、この機会にちゃんと話がしたいと思っていたのだ。


「この2日間大変だったよね? ほんとありがとう!」


「いえ、その、恐縮っす!」


「名前は?」


「牧野 あかりっす!」


「そうなんだ、よく頑張ったね」


「こちらこそ、あんまりお役に立てなくて申し訳ないっす…。それに、生の雛菊 鞠も見られて、一生の思い出にするっす!」


「途中からはしっかりやってくれたじゃないか。雛菊さんは、たまたま、偶然うまくいっただけだから、あまり気にしないでよ」


「そっすか…」


こんな感じで2人で文化祭を振り返っていく、ショートヘアで健康的なライン、語尾に”っす”が付くこの少女は牧野 あかりちゃんというのか。文化祭後ということと、場の雰囲気もあっていつもの自分からは考えられないくらい舌が回る。それくらい、大変だったんだ。


「あの~、小山先輩もだいぶ有名人っすよ」


「え、そうなの?」


ユイ「そうだよ♪ 今一番生徒の関心があるんじゃないかな?」


「そんなに目立ちたくないんだが…」


「それは無理っすよ。あの雛菊 鞠を呼んじゃうなんて、生徒の間では芸能界のボスと知り合いなんじゃないかとか、親がやばい組織なんじゃないかとか言われてるっす」


「おいおい、なんだそりゃ」


俺の知らない所で噂が1人歩きしているらしい。しかし、壇上で雛菊 鞠直々に”感謝しなさいよ!”と言われてしまっては、俺が何か雛菊 鞠の秘密を握っていると思われても仕方がない気がしないでもない。彼女は良かれと思ってやってくれたんだろうけど、これはまた別の問題が生まれそうな気がするな~。


昇はジンジャーエールしか飲んでないはずなのにいつの間にか机に伏せて寝てしまっていた。俺も場の雰囲気にあてられて少し火照っている気がする。店を出て少し落ち着くことにした。


ガラガラガラ


ふぅ~


店から少し離れるとよい感じに公園があった。ベンチに座り、夜風を楽しむ。意外とあっという間だったな~


「あの、、小山…様…」


「う、うわ!」


いきなり声をかけられてビックリする。その相手はまさかの田中 里沙だった。前に見たふてぶてしさが一切なく、かなりキョドっている。


「ビックリした~。一体何の用だ? っていうか、どうしてここに?」


「ご、ごご、ごめんなさい!!」

いきなり俺の前で土下座した。


「いや、なんなんだよいきなり。」


「お願いだから、お願いだから退学だけは…。何でもしますから! 性奴隷にでも何でもなりますから!!」


「おいおい、落ち着いてくれ。」


顔を伏せているが、鼻をすする音が聞える。泣いているらしい。

田中 里沙がここに来た理由は察しているけど、たぶんさっき聞いた噂とかも関係しているんだろうな。


「もう、終わったことだろう。反省してるならそれでいい。」

っていうかもうお前とかかわりなくないのが本音。


「お願いだから、私をいじめないで…」


人の話を聞いてくれ…


「もう一回言うぞ、俺はお前に復習しようとか、学校から追い出そうとか、これっぽちも考えてない。安心しろって」


「あんな事したのに何もされないなんておかしいもん!」


「はぁ~…。わかった、こうしよう。学校の授業、行事以外で俺に関わるな。それで今回の件はちゃら。どうだ?」


「…………」


「じゃあ更に! 俺から何か頼み事したら絶対に引き受けること! これでどう…」


「わかりました! ありがとうございます!」


「(なんだこいつ…。)ほら、誰かに見られたら嫌だからさっさと帰ってくれ。俺のいうことには従ってくれるんだろ?」


「はい!」


タッタッタ


あの女は所謂Mってやつなのだろうか? 良いって言ってんのに自ら罰を望むなんて…。まぁ、これで悩みが1つ解決した、、と思う。


なんか複雑な気持ちで店に戻るのだった。

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