27話
文化祭2日目、俺は早めに学校に行き最終確認をする。
このビッグイベントの開始時刻は14時、午前の部の間ここは封鎖される。窓という窓も完全に隠してあるし、誰も外から見ることはできないだろう。
「小山くんおはよう!」会長が入ってくる
「会長、おはようございます」
「そういえば小山くん、何で丁寧語なの? タメじゃん」
「いやー、生徒会長だし、この学校は転校してきたばっかで別に顔なじみっていうわけでもないし、自然とこうなっちゃいました」
「そういうことか♪ まぁ、そう言われたら無理ない気がするわね。 そして…」
「うーーーーーーす」
ぞろぞろ
屈強な男たちが入ってくる
「この人たちが南体育大のラグビー部のみなさんよ!」
「うわぁ…」
俺と同じ人種かよ、、やばー
「まだ時間があるので、ここでゆっくりしていてください」会長が声をかける
「うーーす」
ラグビー部の皆さんは荷物を置いてくつろぎ始める。並大抵の人間は片手で投げ飛ばされそう…。
俺と会長は途中で教室に戻り朝のホームルームを受け、午前10時、2日目の午前の部が始まった。
俺とユイと音響担当の放送部員、生徒会の面々は封鎖された体育館に集まる。なんかこう、関係者しか入れない所に入るのって良いよね
ピロリン♪ ラインが届く
『着いたよ!』
『迎えに行きます』
「会長、着いたようなので行ってきます」
「いよいよいらしたのね! いってらっしゃい!」会長もテンションが上がっている
俺が校門に行くと、マスクとサングラスをした逆に怪しい女性がこっちを見る。怪しいけど、オーラは全開だ。
「今日はよろしくね♪」
「今日はありがとうございます。ノーギャラでメディアも来ないのに…」
「いいのよ、今日は人助けに来たんだから♪」
「ありがとうございます。こちらです」
彼女を体育館の中に入れるとみんなが目をキラキラさせていた。
「ひなぎく…まりさんなんですよね?」会長が恐る恐る尋ねる
「そうよ♪」そう言いながらサングラスとマスクをずらして顔を見せる。
おぉ……
人とは本当にすごいものを見るとリアクションが取れなくなることがわかる、みんな目を丸くして黙り込んでしまった。
「あの、サインお願いします!」思い出したように会長が色紙とペンを渡す
「いいわよ~」雛菊 鞠は慣れた手つきでサラサラとサインを書いていく
「え! 会長!ずるいですよ! どうして教えてくれなかったんですか!?」生徒会の生徒が嚙みつく
「悔しかったら会長になることね!」ちゃんと説明すればいいじゃん…
「雛菊さんはどうしてこんな所に来てくれたんですか?」ユイが尋ねる
「昔小山くんにちょっと助けてもらったことがあってね、今回は小山くんがピンチだって言うから来たの、ねー♪」
雛菊 鞠が俺の腕を掴む
「え、え///」だから急にやめてくれ!
「いいから、控室行きますよ!」この場をなんとかするため強引に連れていく。みんなの視線が痛い…
「この後軽く音合わせした後はちょっと暇になります。開始は14時です」
「待つのには慣れてるから大丈夫よ」雛菊 鞠がキャリーケースから物を取り出し始める。
「そうなんですね」
「さ、ちゃちゃっと音合わせやっちゃいましょ!」
「は、はい!」
雛菊 鞠は上着を脱いでそのままステージの中央に向かう。俺は音響室の所に行き、放送部員に声をかける。
「じゃあ、音合わせを…」
「め、めめ、目の前にひ、雛菊 鞠が…。」
顔を見ると、昨日もよく仕事をしてくれた放送部員の子が震えていた。
「大丈夫だよ、いつも通りにすればいいんだ」
「は、はいぃ!」
これは相当緊張しちゃってるな…、できるだけこの子をサポートしよう。
「じゃあまずマイクのボリュームを…どこ?」
「こ、ここです!」
「こっちの声はどうやって?」
「これです!」
俺は説明を受けながらつまみを動かしていく。
「あ、あー。雛菊さんちょっとマイクに向かって声をお願いします」
「はーい、マイクテストマイクテスト~♪」
おぉ…かわいい…! ガラス越しに体育館のみんなも歓喜の表情をしているのが見える。
「じゃあ、少しだけ曲をかけます」
「はーい」
放送部員の指示を受けながら音源を流す、もちろん”君は私のスターライト”だ
♪何となく君の方を見ると、たまに目が合って照れちゃうんだ。その瞳は輝く星のようだね♪
「ありがとうございます」
曲が聞かれるとバレる可能性があるため、数10秒で音量を調節し曲を止める。それは放送部員の子がやってくれた、聞かれた所でそんなに心配してないけどね。
(続く)