25話
「うん?」俺はスマホの時計を確認する。
8組目のバンドが終了時刻3分前になっているのにとんでもないことを言い出したのだ
「っしゃあ、次行くぞ!!」
そして何事もないように次の曲を演奏し始めたのだ。
「おかしい、絶対これ終わる気ないだろ」
「そうみたいだね、確かこの人たち3年でしょ?」ユイがパンフレットを見ながら応える。
「あー。もう!」俺は放送部の下へと向かう
「すいません、この曲で終わりにするようアナウンスお願いします」
「わ、わかりました」放送部員も予定がずれていることはもちろん知っている。
曲の途中で横槍を入れるのは空気的にも良くないと思い、この曲までやってもらうことにした。こうなることは前々から予想していたから終了時間に少し余白を残しておいたんだ。
ジャーン
Foooo!!
曲の終わりと共に歓声が上がる。
「持ち時間を過ぎています。速やかに終了し、片付けをお願いします」
タイミングを計って放送部が終了を促す、バッチリだ。
「こんな所で終わって良いのー!!??」
うおーー!!!
「は!?」思わず身を乗り出す
奴ら、こっちの説得を無視してまた演奏を始めやがった。
「くそ!!」
「どうする!?」ユイも真剣な顔をしている
「次で直接止めにいくしかない! 好き勝手やりやがって!」
楽しみたいのはよくわかる、だがこういう行為はかなり運営側をないがしろにしている。くー、俺も今後何かイベントを楽しむ機会があったらより一層ルールを守ることにしよう。俺はもう1度放送部の所へ行く。
「この曲が終わったらあっちのボリュームを落としてください」
「わかりました!」
俺とユイは舞台裏に待機する。
ジャーン!
センキュ…ブツン!
演奏終了と共に放送部員がマイクのボリュームを落としてくれたらしい
「持ち時間を過ぎています。速やかに片づけをお願いします」
「すいません、終了でお願いします!」アナウンスに続いて直接声をかける
「はぁ? まだやり足りないんだけど」
どうせ文句言ってくるとは思っていたけど、ほんとめんどくさい…先輩だし。
「後ろが控えているので、すいませんお願いします」
(なんで俺が謝ってんだ…)
「あと1曲だけ!ね!」
ギターの人がテンション高めにお願いしてくる
「すいません、もうボリュームも落としちゃったんで」
「そう言わずにさー、やらせろよ♪」
あー、こういう系か。めんどくさいことに変わりないけど。
「お願いします! 終了してください!」ユイも声をかけてくれる、ほんと申し訳ない。
「うっせーよ、お前らがこんなめちゃくちゃなスケジュール組んだんだろ。3年間で最悪だぞ!」ボーカルがまくしたてる
いやー、それ言われると正直痛いんだけどな、、。観客もこっちを睨んでいるし、3年なのが尚更やっかいだ。何で俺たちが悪者みたいになってんだ、ぶちまけたいのはこっちだよ…スケジュールはまぁ、こっちの責任だけどさ。
「なぁ、先輩方。大人げねぇこと言ってないで終われよ」
「あぁ?」
振り向くと昇が観客を押しのけてステージに飛び上がってきていた。
「2人は文化祭を成功させるためにずっと頑張ってんだ、スケジュールの文句は明日のビッグイベントを見てから言えばいいだろ。」
「…!?」
ボーカルが苦い顔をする。それほど昇の眼力は簡単にけんか腰になれるほど弱いものではなかった。観客の3年も静かになる。
「あれ~? あんた、あの時の先輩じゃないですかー? お世話になってまーす!」
昇が威嚇するような声でドラムの先輩に歩み寄る。あ! そういえばこの人この前の放課後脅迫してきた4人の先輩の内の1人だ! 静かにしてるから気が付かなかったけど、そういう事か。
「…ちっ。空気も悪くなっちまったし、いこうぜ…」
ドラム先輩の一言でメンバーがステージから降り始める。
「ちょっと~! これ!下ろしてくれないと次の出し物ができないでしょ! 俺何か変なこと言ってますかねぇ?」
昇が先輩たちを呼び止める。すんげぇばつの悪そうな顔で楽器やアンプを下ろしていく先輩たちは見てていたたまれなかった。
「さぁみなさん! 次は、え~、お!ライブペインティングですね! 楽しんでいってくださいね!」昇が笑顔でお客さんに言う
「さ、降りようぜ」
「お、おう」
俺たちも速やかにステージを降りる。
昇様様だ