リボーン
白骨化した肉体が、蛹の中で再構成され始めた。蛹の中で静香の骨格に新たな組織が付き始めたが、内臓が人間のそれとはちがうようであった。昆虫の筋肉組織と同じものに再構成され、骨格の一部も改変されて胴体がお尻に向けて伸びてしまった。
おそらく人間の時と同じなのは脳細胞と生殖器だけのようだったが、その顔はグロテスクなものになっていた。カマキリ女に生まれ変わったのだ。
カマキリ女に改造したアメーバのようなものは某国の工作員が亡命の際に持ち出した秘密兵器であった。それは人間を昆虫型の強化人間にするものであった。それを何故ここで使ったのか? それは高くこの国に買い取らせようという魂胆だったのかもしれない。彼女はその犠牲になったのだ!
カマキリ女に改造されたことで彼女の知能は下がり自我さえも喪失してしまったかのようであった。だから、その工作員の意のままに動くしかなかったのだ。あの殺戮行為も戦闘能力のデモンストレーションでしかなかった。彼女の強化された外骨格の鎌で柔らかい人間の身体を切り刻んでしまうことは簡単な事であった。
しかし、その行為の直後、工作員は切り刻まれてしまった。彼女に自我が蘇ったのだ! しかしそれは悲劇を招来しただけであった。醜い身体にされ人殺しをしてしまった彼女。もはや人外の姿で不可逆的な姿になった彼女、もう二度と戻れない人間の少女、そして人間の暮らしに!
そんな彼女に残された道は、自殺か逃亡かそれとも? そのいずれもが地獄へ続くものであった。でも、彼女が選んだのは・・・その後に彼女の運命は誰も知る者はいなかった。