第82話
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食事後、通常通り作業した。だが、気持ちは落ち着かない。瑞子が自宅マンションの水道管を通して、自身の赤黒い血を流し、取り付いていると思うと……。
何とか午後の時間を乗り越え、夕方食事を取って入浴する。温めのシャワーを浴びて、髪や体を洗い、寛ぐ。リラックスムードじゃないのだが、幾分無理やりに……。風呂上りに水分補給し、本を読み始める。夜風が涼しい。夏の終わりを感じる。
午後十一時には本を閉じてベッドに潜り込み、眠った。夜間夢を見る。瑞子が出てくる、恐ろしくて仰々しい夢を、だ。ハッと目が覚めると、まだ午前四時過ぎで、起きる時間じゃない。トイレに行き、用を足して寝床に戻る。
午前七時に起き出し、洗面所へと向かった。蛇口を捻ると、普通の水が出てくる。洗顔して、歯を磨き、髪を整えてキッチンへと行く。そしてコーヒーを一杯淹れ、ヨーグルトで朝食を済ませた。
頭の中が瑞子や血の水のことでいっぱいになる。だが、仕事はあり、パソコンを立ち上げてキーを叩き続けた。データを打ち込んでいく。疲れはあった。夜間、ろくに眠れてなくて……。
昼になり、キッチンで食事を作った。取りながら思う。何かしら不気味で恐ろしいことが待ち受けているんじゃないかと。別に考えても仕方ないことなのだが……。
午後も作業を続けた。外は晩夏特有の穏やかな陽が差している。盛夏はもう終わった。明日から九月なのだし……。(以下次号)