第66話
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午後の時間を読書で潰した後、キッチンで夕食を作って取り、バスルームで汗を流す。冷たいシャワーは心地よかった。入浴して、また本を読み始める。単調だが、ゆっくり過ごす。普段は計画的に時間を使っているので、休暇中はあまり考えずに好きなようにした。
午後十一時には休む。蒸し暑い。安定剤を飲み、ベッドに横になると、すぐに寝付いた。
明け方目が覚め、トイレに行った後、また眠る。多分、脳が疲れてるんだろう。そう言えば、夢も見た。とりとめのないもので、一際後味が悪い。
午前七時に起き出し、洗面所で洗顔と歯磨きをする。水は無色透明で普通の代物だ。いつしか、血の水への恐怖は薄らいでいた。それに最後に見た限りでは、幽霊として浮遊していた瑞子も来てない。思う。結局は何もないのだ。このマンションも別に曰くなどが付いているわけじゃなくて、ちゃんとした人間の住み家なのである。
コーヒーを一杯淹れて飲みながら、ヨーグルトで朝食を取った。気分は落ち着いている。いい感じだ。いつもは気が落ち着かないので、不幸に思っているのだが、考えてみれば、休日は時間を好きに使っていいのである。だいぶ気が静まった。
パソコンでネットし始めた。ニュースなどを読んでいく。普段やる時間がないので、尚更集中した。配信されてくるものを、順々に目で追っていく。
昼食を取り、昼からは読書する。ゆっくりし続けた。いつもはずっとキーを叩き、データを打ち込んでいる。頭脳が疲弊するのも、単調な作業ゆえだろう。自分を思いっきり解放していた。いつもは感情を心の檻に閉じ込めているので……。過度の抑制が気持ちを硬直させ、不安定にする。それを安定に切り替えるのはこんな時ぐらいしか出来ない。活字を追うことで紛れた。ゆっくりと。(以下次号)